1Q84
著/村上 春樹

発売2週間で100万部を突破した2009年の最注目ベストセラー。 多くのファンをもつ村上春樹ならではの、内容を伏せた事前広告も話題となった。
スポーツインストラクターの青豆(女性)と、予備校教師の天吾(男性)の視点からの
短いエピソードが交互に展開される。 現実の事件をモデルにしているような印象もうかがえるダークなシーンもあるが 比較的読みやすい文体。
「上・下巻」ではなく「1・2巻」として同時発売され、2010年には「3巻」を刊行。


  告白
著/湊 かなえ

小学校の構内で起きた悲惨な幼児殺害事件。当初は事故と思われていたが母親である教師は 犯人を特定。終業式のホームルームで生徒たちを前に事件の真相を語り始める…。 その後、共通の事件をベースに語り部を変えて短編がつなげられている。
全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ「本屋大賞(2009年)」で大賞に選ばれた本作だが 書店員がこんな暗い話を一番オススメするというのはいいことなのか?


  夜は短し歩けよ乙女
著/森見 登美彦

大学サークルの後輩である「黒髪の乙女」にひと目惚れし、京都の町の様々な場所で彼女を追う 「先輩」の行動がファンタジックに展開する。ひと癖もふた癖もある周囲の登場人物と 歴史ある京都の町が絡み合い独特の雰囲気を醸し出している。
文体の好きずきで評価が分かれるだろうが、京都の思い入れのある人は好意的に読めるだろう。


  悪意
著/東野圭吾

人気作家が仕事現場で死体となって発見される。
犯人は早々と見つかるがその動機を巡って物語は展開される。
前半で犯人がわかるミステリーなんてありえるのか?とも思えるが 読んでみれば新しい展開であることがわかる。ドキドキ感は低めではある。


  ジョーカー・ゲーム
著/柳 広司

戦時中の日本を舞台にした帝国主義の軍隊に存在する影の存在・スパイの物語。1編がどれも約50ページというコンパクトなエピソードを5作収録。
スパイといっても007のような派手なものではなく、存在を消した誰にも知られないものとして書かれている点が興味をそそられる。中でも結城中佐のキャラは秀逸であり、今後もこのシリーズを読みたくなる。


  ゴールデン・スランバー
著/伊坂 幸太郎

首相暗殺の濡れ衣の着せられた男の逃亡劇を描いたミステリー。 主に主人公と元恋人の目線で語られる500ページの長編小説。
多くの伏線を張って最後に繋ごうとしているが、明らかにならない点が多すぎるように感じた。主人公に手を貸す三浦、保土ヶ谷は特殊なキャラなわりにその背景がまったく不明。そもそも、真犯人と事件の動機が不明。ミステリーとしてはいささか無責任な筋書きに思える。 ビートルズの「ゴールデン・スランバー」を重ね合わせているが、大きな意味ももっていない。
注目度の高い伊坂幸太郎 作品としては残念な内容。


  葉桜の季節に君を想うということ
著/歌野 晶午

「このミステリーがすごい2004年度版」で第1位となった注目作。
様々な仕事に就いてきた成瀬将虎が、妹、後輩、自殺しようとした女らと共に周辺で起こる謎の殺人事件を解明していくが…。
初めて読む人は9割以上騙されること確実な結末だが、すっきりするかどうかは読者次第。時間軸が前後し、主人公の過去のエピソードから急に現在に飛ぶので、一気に読まなければついていけなくなる。
400ページ強の長編だが、読みやすい文章なので疲れは感じない。
話題作だが、小説ならではの意外性を活かした作品なので映像化は望ましくない。


  ダイイング・アイ
著/東野 圭吾 

ひとつの交通事故をきっかけに幸せな人生が狂ってしまった。被害者家族。そして加害者にとってもまだ終わってはいなかった。
人気ミステリー作家得意の巧妙なトリックを期待するが、「SFテイストか?」と疑う意外な展開。著者の他の作品とは一線を画す世界観に戸惑うかもしれないが、こういうストーリーも悪くないと思う。

 


  食堂かたつむり
著/小川 糸 

突然、恋人が姿を消しお金も家具も全てを失った倫子は祖母が使っていたぬか床と僅かなお金を持って地元の田舎へと向かう深夜バスに乗る。疎遠になっている母親と顔を合わさずへそくりだけを失敬して立ち去るはずが、食堂を開くことに…。
映画『かもめ食堂』を思わせる世界観ではじまり、食材の色や形を比喩に用いた表現で静かに物語は進む。美味しい食べ物と人の感情をうまく絡めた、微笑ましい展開と予想外の結末に、思わずジーンとしてしまう。


  夜明けの街で
著/東野 圭吾 

不倫をする奴なんて馬鹿だと僕は思っていた・・・。そんな主人公、渡部の前に派遣社員として現れた女性、仲西秋葉。偶然社外で会った二人は不倫の関係へとなっていく。積極的な浮気心もなく、妻や家庭に大きな不満もない中年サラリーマンが頭で理解している理性とは別の行動を起こす描写はなかなかシニカル。ミステリーが主流の東野圭吾作品の中ではドラマ性が強い作品。物語の中で主人公がカラオケでサザンの「LOVE AFFAIR〜秘密のデート」を歌い、「自分たちに似ている」というシーンがあるが、実際は逆で、歌を聴いた作者がそこから話を膨らませ横浜を舞台にした不倫ストーリーにしたのではなかろうか?


  リアル鬼ごっこ
著/山田 悠介 

未来の日本、そこは現代と変わりないようで、大きく変わってしまった王国になっていた。横暴な国王の思いつきで、国中に500万人以上存在する「佐藤さん」は多すぎるとして鬼ごっこによって減らされることに。荒唐無稽で細部が詰めきれてない曖昧な設定だが、新鮮さはあり読みやすい。自分がもし佐藤姓であればもっと入り込めただろうが…。デビュー作としては上々の仕上がり。


  重力ピエロ
著/伊坂 幸太郎 

遺伝子検査会社に勤める泉水と弟の春はとても仲の良い兄弟だが父親が違っていた。仙台で起きた落書き事件と放火事件を追う中でさまざまな事実が明らかになっていく。
暗号としてなじみのない遺伝子記号が登場するが専門家でなくとも読み進められる文体なのでストーリーに集中できる。タイプの違う知的なキャラを使い、物語に深みを出す手法も心地よい。主題は重いテーマだがそれを過剰に感じることなく小説として楽しめる。 



 
 
2003 Ally's Garden / West Valley