原題 ; BARROCO(1976) |
監督 ; アンドレ・テシネ |
脚本 ; アンドレ・テシネ、マリリン・ゴールディン |
音楽 ; フィリップ・サルド |
共演 ; ジェラール・ドパルデュー、マリ=フランス・ピジェ、ジャン=クロード・ブリアリ |
「ブロンテ姉妹」でもイザベル・アジャーニとコンビを組むことになるアンドレ・テシネ監督のサスペンス・メロドラマ。 選挙戦にわくアムステルダムで殺人事件が発生した。 新人ボクサー、サムソン(ジェラール・ドパルデュー)の取材が行われている。そこに姿を現した婚約者のロール・ディアーヌ(イザベル・アジャーニ)。 記者のアントワネットはインタビューに大金が動いたことを知り不審に思う。 サムソンは選挙候補者との同性愛関係を告白する約束で大金を得たのだ。相手の候補者は同額の小切手でサムソンを買収。取材を受けずに海外に姿をくらますよう依頼する。 ルームメイトで子持ちの娼婦ネリー(マリー=フランス・ピジェ)がとめるのも聞かず、ロールはサムソンの待つ駅に向かう。 駅に電話が入り、サムソンは追われているいう。電話の直後、彼は一人の男に襲われる。 ロールは金の入ったバッグをコインロッカーに隠す。 銃を突きつけられて人ごみを歩くサムソン。 ロールは駅構内の食堂で寝込んでしまう。そこにサムソンそっくりな男がやってきた。 男は、ボクサーに会いたければ金を渡せとつぶやく。食堂の前にサムソンが現われると、男は顔面に銃弾を撃ち込んで射殺した。 ロールは警察で取調べを受け、犯人の人相書きの協力を依頼される。 警察署を出たロールは尾行され、住所を知られてしまう。 町を歩いていたロールは、男に襲われる。男は金を山分けにしようと提案するが、ロールは拒絶して去っていく。 サウナを隠れ家にする黒幕と協力者で新聞社のヴァルド(ジャン=クロード・ブリアリ)が密会する。ヴァルドは黒幕が自分に罪をなすりつけることを恐れていた。 男は客を装ってネリーの元を訪れる。テレビのニュースでモンタージュを見た彼女は男が犯人と知った。だが、さほど動ぜず料金の心配をする。 一方、ロールは警察の取調べで知り合ったヴァルド、その助手のアントワネットに誘われて食事していた。 ロールは、サムソン殺害犯だが瓜二つな男に惹かれていく。 男は、金もロールも手にしたサムソンがうらやましかった。だから撃った、と言う。 ロールは男の髪を染め、サムソンの服を着せてサムソンそっくりに変装させる。彼女はコインロッカーからバッグを出して船の切符を2枚買う。 その情報は黒幕に筒抜けだった。 ロールと男は港に向かおうとするが、各所に警察が張り込んでいる。男は別れて船に乗ることにした。 港でロールは、毎年恒例の避暑に行こうとしていたヴァルドと出会う。船を目前にしてヴァルドは狙撃されてしまう。 一足先に船に乗り込んでいた男とともにローラは旅立っていく。 ネリーは出所してきた愛人のジュールに、ロールはサムソンと旅立ったと言うのだった。 マリー・フランス・ピジェが助演女優賞、フィリップ・サルドが音楽賞、ブルーノ・ニュイッテンが撮影賞とセザール賞を3部門受賞している。特にミステリアスな雰囲気を盛り上げる映像は素晴らしい。 ただ、ストーリー的には少々弱い。「暗くなるまでこの恋を」などと同様、特異な状況の中で愛し合うようになっていく心理描写に主眼が置かれ、サスペンス映画としての構成は弱い。 全体的に説明不足だったり、説得力がなかったりする部分が少なくない。 序盤の一度は捕らえられたサムソンが、なぜか解放され食堂に現れる展開からしてよく分からない。事件のメインとなる選挙工作についても説明不足。冒頭の殺人事件も本筋に絡んでこない。 瓜二つの相手を、死んだ自分の恋人の身代わりに仕立て上げようとする、という設定は「めまい」を彷彿(ほうふつ)とさせるが、ヒッチコックのトリッキーな描写力には遠く及ばない。 クライマックスも、ひねりがなく盛り上がらずに終わってしまう。 前述にように優れた部分もあるし、若きイザベル・アジャーニと、今とは全く違ったイメージのジェラール・ドパルデューが楽しめるという点では悪くないと思う。 |
バロッコ