原題 ; POSSESSION(1980)
 監督 ; アンジェイ・ズラウスキー
 脚本 ; マリー=ロール・レール
 音楽 ; アンジェイ・コジンスキー
 共演 ; サム・ニール、ハインツ・ベネント、マルギット・カルステンセン
アンジェイ・ズラウスキー監督によるホラー映画。クリーチャーの特殊効果は「エイリアン」、「E.T.」でアカデミー賞を受賞したカルロ・ランバルディが担当。
イザベル・アジャーニが出演した中でも異色作だと思う。日本では数年間おクラ入りしていたが1988年になって公開された。
マルク(サム・ニール)とアンナ(イザベル・アジャーニ)の夫婦仲は冷め切っていた。
ある日、マルクが帰宅するとアンナの姿はなく、彼女から「考えたいので、まだ帰れない」という電話が入った。
マルクはハインリッヒ(ハインツ・ベネント)という男の葉書を見つけ、アンナの友人マージ(マルギット・カルステンセン)から妻に男がいることを聞き出す。
マルクには離婚する気がないのだが、アンナからは別れの電話が入ってくる。
マルクは話し合いをしようとレストランでアンナと会う。最期には興奮して暴れだしてしまう。
気がつくとマルクは病院にいた。家に戻るとアンナは外出したままで、幼い息子のボブが取り残されていた。
一旦帰宅したアンナはマージと相談すると置手紙をして出て行く。
ハインリッヒからはアンナを渡さないという電話が入る。
マルクはマージからハインリッヒの電話番号を聞きだす。彼が電話すると女が出てハインリッヒは旅行中だという。
マルクがボブを学校に送っていくと教師のヘラン(イザベル・アジャーニ二役)はアンナに瓜二つだった。
電話番号から住所を割り出したマルクはハインリッヒを訪ねる。そこにアンナはいなかった。
ハインリッヒは旅行から戻ったばかりで電話もしていないという。
興奮したマルクはハインリッヒに殴りかかる。ハインリッヒには武術の心得があり、逆にのされてしまう。
家ではアンナとボブが仲良く食事していた。たまに来て甘やかすだけのアンナをマルクがなじる。
怒鳴りあう二人。ついには取っ組み合いになって殴りあう。アンナは顔を血だらけにして出て行く。
突然現われたマージが、洗濯とボブの世話は任せて、とマルクに言い寄る。
マルクは探偵を雇ってアンナの素行調査をさせる。
アンナは思い出したように帰ってくるが、二人の間にまともな会話はない。
何かに取り付かれたようなアンナは、電動包丁で自分の首筋を傷つけてしまう。
アンナの手当てをしたマルクも、発作的に電動包丁で自分の腕を傷つける。
出て行くアンナを探偵が尾行して彼女の住むアパートを突き止めた。マルクに連絡した探偵は、アンナを訪問する。
管理人と称して部屋を調べてまわる。
探偵は一つのドアにネバネバしたものがこびりつき蠢(うごめ)いているのを見つける。
アンナが割れたワイン瓶を持って探偵の背後から襲いかかり殺す。
マルクの家をヘレンが訪問してくる。そこにハインリッヒもやって来た。
ハインリッヒはアメリカに妻子がいた。神なんか疫病さ、というマルクに疫病があるから神を信じるのだと言い残してハインリッヒは去っていく。
マルクとヘレンはベッドを共にするが、ボブがうなされたことをきっかけにヘレンは帰って行く。
探偵社の所長が探偵が行方不明になったとやって来る。マルクは探偵から聞いた住所を教える。所長と探偵は同性愛の仲だという。
アパートを訪れた所長は、アンナにベッドに横たわる不気味な生物を見せられる。部屋の隅には探偵の死体も転がっていた。
驚いた所長は銃を抜き発砲するが、アンナに銃を奪われ逆に撃ち殺されてしまう。
マルクがアンナの写った8ミリフィルムを見ると、そこには善と悪の自分がいてどちらが本当の自分か分からないと悩む彼女の姿があった。
戻ってきたアンナの行動はますます異常になり、洗濯物を冷蔵庫に詰めたりする。
マルクは5分だけでも平和に話し合おうという。
アンナは誰にも何も感じなくなっているともがき苦しむ。善と悪の姉妹が戦い疲れて首を絞め合っているのだと言う。
狂気に憑かれて地下道で笑い叫ぶアンナ。のたうちまわって大騒ぎ。死んだのは善の方で残ったのは悪の自分だという。
マルクはハインリッヒにアンナの住所を伝える。
早速アパートに駆けつけたハインリッヒは、アンナに薬物を飲ませて抱こうとする。
ハインリッヒは人間の体型に近くなった怪物を見て驚愕。冷蔵庫には死体の首が残っていた。
アンナはハインリッヒを包丁で刺す。彼は血まみれで逃げていく。
ハインリッヒの連絡を受けたマルクはアパートに入って死体を見つける。
マルクはハインリッヒと会う。アンナは人殺しだと騒ぐハインリッヒに対してマルクは落ちついたもの。
マルクはトイレで吐くフリをしてハインリッヒをおびき寄せる。タンクのフタで殴って気絶させたうえ便器の水に顔を突っ込んで殺してしまう。
次にマルクはガスを出してアパートを爆破。アンナの犯行の証拠を消して自宅に戻ると、エレベーターで血まみれのマージが死んでいた。
部屋ではアンナが待っていた。彼女は神が自分の中にいると言う。
マージの死体を車のトランクに詰めて運ぶマルク。ボブをヘレンに預けてアンナと待ち合わせたマージの家に行く。
そこには怪物と交わって悶えるアンナの姿があった。
マージの家に警察の捜査が入ろうとしていた。マルクはタクシー運転手を脅し駐車しているパトカーに突っ込ませる。
飛び出てきた刑事と撃ちあいになり、マルクは刑事を射殺するが自分も深手を負う。
マルクはオートバイで逃げる。らせん階段を登っていくマルク。そこにアンナもやって来た。その後ろにはもう一人のマルク。この姿が最終形態らしい。
マルクはアンナを撃つ。マルクとアンナは血まみれで倒れる。重なったアンナは銃で自分もろともマルクを撃ちぬく。
まだ息の残っていたマルクは階段を飛び降り、警官たちの前に墜落した。
ボブはヘレンとともに暮らしている。ヘレンのアパートのベルがなる。開けないで、と叫ぶボブ。
ボブは浴槽に身を沈める。突如爆撃の音。ドアの向うには新しいマルクの姿が蠢いている。
モンスター・ホラーというより、ドッペルゲンガー物のヴァリエーションという印象を受けた。
作家性は十分感じさせる作品ながら、エキセントリックなヒロインの描写がシュールでホラー映画としてはイマイチ。
前半は少々間延びした感じだし、後半も意表をつく展開ではあるが、さほど盛り上がらない。
イザベル・アジャーニは、地下道でのたうちまわったり、不気味なクリーチャーとセックスしたりと汚れ役に徹したが、女優としてのキャリア・アップにつながったとも思えず残念。

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