原題 ; QUARTET(1981)
 監督 ; ジェームズ・アイヴォリー
 脚本 ; ジェームズ・アイヴォリー、ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
 音楽 ; リチャード・ロビンズ
 出演 ; アラン・ベイツ、マギー・スミス、アンソニー・ヒギンズ、シュザンヌ・フロン
ジーン・リースという作家の小説を原作に、1920年代のパリ社交界を舞台として描くドラマ。
1927年のパリ。美術商のステファン・ゼリ(アンソニー・ヒギンズ)とマリア(イザベル・アジャーニ)の夫婦はホテル暮らしをしている。
英国人のH.J.ハイドラー(アラン・ベイツ)は愛人が自殺してノイローゼになったことがあった、ルイス夫人(マギー・スミス)は絵が趣味。
ある日ステファンが待ち合わせに現われず、マリアが戻ると彼は逮捕されていた。
ステファンは有罪となり、懲役一年のあと国外追放と決まった。罪状は美術品の窃盗と密売だった。
ハイドラーは夫人の反対を押し切ってマリアを引き取って援助しようとする。
ステファンと面会するマリア。彼女はハイドラー夫妻の元に身を寄せ、ステファンが釈放されたら一緒に国外に出るつもりだった。
マリアは身の回り品を売り払い、ハイドラーのアパートに行く。
ここでイギリスでコーラス・ガールをていたマリアが、オーディションの帰りにいかがわしい美術品を売りに来たステファンと会う、という過去の出会いが唐突に挿入され見ていて混乱させられた。
アメリカ人のケインは、ハイドラーの元で自堕落な生活をするマリアを心配する。
ハイドラーは本性を現してマリアに言い寄る。ルイスは夫の性向を見て見ぬふり。
ケインは今のうちに目を覚ませとマリアに忠告する。
ある夜、ハイドラーがマリアの寝室に忍んで来る。結局彼女は身を任せてしまった。
マリアは友人からモデルの仕事を紹介される。だが、それはポルノ写真の撮影だった。驚いたマリアはあわてて逃げ帰る。
週末、ハイドラー夫妻はマリアを田舎の別荘へと連れ出す。
一方、ステファンはマリアが面会に来ないのでイライラしていた。
ルイスの心配は3人の関係が他人にばれないかどうかだけだった。
ステファンと面会したマリアは、自分がハイドラーの家を出てホテル住まいしようと考えていることを話す。
ステファンは出所しても無一文ではどうしようもないと反対する。
マリアがハイドラーの家を出ても二人の肉体関係は続いていた。
マリアは精神的に追いつめられていると手紙を書く。
ハイドラーはルイスに、神経衰弱の奴らとは関わりたくないが、向うから寄ってくるのだと偽善的に話したりする。
ルイスまで自分の書いた手紙を読んだことを知ったマリアはますます追いつめられていく。
ステファンが出所してくる。彼はベルナデという刑務所仲間から金を借りる算段をしていた。
ステファンはシュラモヴィッツという刑務所仲間の世話になる。シュラモヴィッツはシャルダンという女を連れてくる。
ステファンには自分の旅費しかなかった。
ハイドラーはマリアにステファンと別れるように言い。ルイスはステファンにマリアを連れて行くように言う。
ステファンはマリアとハイドラーの関係に気づいた。彼はハイドラーに復讐すると言い出すが、マリアは本当に愛しているのはハイドラーのほうだと嘘をつきステファンを止める。
結局ステファンはシャルダンとともに出て行ってしまう。
失意のマリアにケインが言い寄ってくるのだったい。
キャスティングは良いし、ジェームズ・アイヴォリー監督作品とあって期待したのだが、なんともメリハリに欠ける出来ばえ
ストーリー自体に面白みがないし、時代背景も生かされていない。
せめてパリ社交界の退廃した雰囲気とかが出ていれば良かったのだが。
ヒロインのマリアも魅力的には描かれていない。なんだかイザベル・アジャーニの演じる役って男運が悪すぎる女性がやけに多い気がする。
この作品が日本で公開されたのは1988年。あらためてフィルモグラフィーを作っていくと、イザベル・アジャーニの主演作は製作から数年たって、どうにか日本公開にこぎつけたものが多い。
当時のイザベル・アジャーニは「アデルの恋の物語」が評価され、日本でも多くのファンを獲得していた。
それでもなかなか公開できなかったのは。今ほどミニ・シアターが充実していなかったこともあるが、やはり作品自体に商業性が欠けていたということなのだろう。
大劇場でロードショーされていたアラン・ドロンやカトリーヌ・ドヌーヴの主演作が次第に公開されなくなってきたのも、この時期。ハリウッドに押されてヨーロッパの娯楽映画が衰退していたということなのかもしれない。

カルテット