原題 ; TOUT FEU, TOUT FLAMME(1982) |
監督 ; ジャン=ポール・ラプノー |
脚本 ; ジャン=ポール・ラプノー、ジョイス・ブニュエル、エリザベス・ラプノー |
音楽 ; ミシェル・ベルゲル |
出演 ; イヴ・モンタン、ローレン・ハットン、ジャン=リュック・ビドー |
ジャン=ポール・ラプノー監督作でイヴ・モンタン共演の佳作であるにも関わらず劇場未公開に終わった。 作品の出来不出来以前に、フランス映画自体が興業力を失っていた時期だったのだと思う。 原題は「すべて火、すべて炎」。よく分からないのだが、フランスの諺(ことわざ)か何かなのだろうか。 市場で買い物をするポーリーヌ・ヴァランス(イザベル・アジャーニ)。帰り道で妹のデルフィーヌがボーイフレンドのジャンとデートしているのを見つけ、小言を言う。 デルフィーヌはことあるごとに干渉する姉とケンカするが、すぐに仲直り。 ポーリーヌは祖母の家に、この妹と末妹ジュリエットの4人で暮らしている。 そこに父を訪ねてナッシュという男がやってきた。父親の所在はポーリーヌにも分からない。 ナッシュは数日パリに滞在すると言って帰って行く。 ポーリーヌは首相の補佐官をしている。国際会議でも首相をサポートして大活躍。 記者をしているボーイフレンドのアントワーヌとは、デートする暇もない。 ポーリーヌがアパートに帰ると大きな音で音楽が聞こえてきた。 行方不明だった父ヴィクトール(イヴ・モンタン)が帰宅したのだ。他の家族は大はしゃぎだが、ポーリーヌの態度はよそよそしい。 そこにナッシュから電話がかかってきた。何かの要求のようだった。ヴィクトールは断って電話を切る。 デルフィーヌは父にジャンの写真を見せる。二人をあおるようなことを言うヴィクトールに、妹の入試を心配するポーリーヌはカッときてしまう。 ヴィクトールは慌てて出て行ってしまう。また父が出て行って戻らないと泣き出す家族に、ポーリーヌはうんざり顔。 ポーリーヌが要人のパーティーに出席していると、ひょっこりヴィクトールが現れた。 動揺するポーリーヌ。彼女は仕方なく父を首相に紹介する。 そこに中国の代表団が契約内容にクレームをつけてきた。ヴィクトールは中国人通訳の誤訳を指摘、流暢な中国語で話をつけてしまう。 ポーリーヌは父の手腕に目を丸くする。 ヴィクトールの笑い話は中国の派遣団に大受け。首相は彼をプラザホテルに送って行く。 だが、ロビーに入ったヴィクトールは、すぐに引き返していく。本当は安宿に泊まっているのだ。 宿にはナッシュが待ち構えていて、ヴィクトールの計画に出資すると言う。ヴィクトールは彼の申し出を断る。 家族での食事会が開かれ、ヴィクトールは一軒家を買おうと提案。今の家は売ってしまうというのだ。 ポーリーヌは慎重に考えようとするが、他の者たちは大賛成。 ヴィクトールは、ポーリーヌの出張中に家族を連れて家の下見に行く。 ポーリーヌと同じ列車にアントワーヌが乗り込んでいた。キスを交わす二人。 一方、ヴィクトールに連れて行かれたデルフィーヌたちは郊外の邸宅に大喜び。 会議中のポーリーヌに祖母から家の買い手が見つかったと電話が入る。 寝耳に水のポーリーヌはびっくり。自分が帰るまで待たせようとするが、すでに委任状がヴィクトールの手に渡ったという。 思わず大声を出すポーリーヌ。その声が会議場に筒抜けになっていた。 祖母はポーリーヌの剣幕に泣き出してしまいラチがあかない。そのうえ電話机につまづいて転倒してしまう。 アントワーヌの運転で急いで戻るポーリーヌ。帰宅すると祖母は寝込んでいた。 デルフィーヌとジュリエットが泣きながら帰ってくる。プラザホテルに父は滞在しておらず、下見した家も売り家ではなく住人がいたのだ。 そこに事業が軌道に乗ったら、もっと良い家が買える、という父からの手紙が届く。 ヴィクトールは前にもカジノ建設を計画して失敗、叔母たち出資者を破産させて国外へと逃げた前歴があった。 ポーリーヌはアントワーヌの車で出発したが、カリカリする彼女に愛想を尽かしたアントワーヌは降りてしまう。 結果ポーリーヌ一人が車を走らせる。彼女の行き先は、以前父が失敗したカジノ跡の廃墟だった。そこには工事業者が入っていた。 スイスの共同出資者ラウルに案内されて別館に行くと、父は愛人のジェーン(ローレン・ハットン)と一緒だった。 ジェーンの姿を見てポーリーヌは飛び出していく。事務室から弁護士に電話しようとするポーリーヌをヴィクトールが電話線を引っこ抜いて止める。 カジノは湖をはさんでカジノのないスイスと面しており、絶好の立地条件だとヴィクトールは自慢する。 それでもポーリーヌは納得せず、警察に行くと車で飛び出していく。停車していたトラックを避けようと道を外れた彼女の車は水たまりに落下。 水道管を壊したらしく、あっという間に水かさが増していく。周囲にいた工夫と駆けつけたヴィクトールたちが水没する車中からポーリーヌを救出。 気丈なポーリーヌもついに気絶してしまう。 意識を取り戻したポーリーヌは混乱しきっていた。 不審に感じたジェーンとラウルに事情を問いつめられてもヴィクトールはとぼけるばかり。 ポーリーヌは下着にシャツ一枚で部屋から逃走。やってきたスイス銀行の代表者たちに事実を訴えるが、神経症患者と思われただけだった。 今回こそはカジノを成功させると意気込む父親を、ポーリーヌは全く信用しない。あまりに冷たい態度にあきれるヴィクトール。 ジェーンは父親らしからぬヴィクトールの行いにも問題があると指摘する。 スイスの銀行家たちには裏があり、黒幕としてナッシュが存在していた。そうとは知らずヴィクトールは契約を結ぶ。 そこにナッシュが乗り込んでくる。銀行はナッシュのもので、ヴィクトールの事業を奪おうとしていた。ラウルも買収されていたのだ。 さすがのヴィクトールも途方に暮れる。彼は甘い物が好きなポーリーヌのために焼きリンゴを作った。 ポーリーヌは自分の冷たい性格は、子供のころ父親がいなかったせいだと泣き出す。 ラウルは破産して大金が必要だった。彼はナッシュと組んでも儲かると言うが、ヴィクトールはナッシュがカジノを密輸の隠ミノにする魂胆だと見抜いている。 ヴィクトールはラウルを追い払う。 ここを去ろうと荷造りしていたジェーンは、ヴィクトールが倒れてしまったので大慌て。 だが、ヴィクトールの仮病だった。彼は医者に絶対安静だと言うように頼みこむ。 ナッシュの企みを知ったポーリーヌは、アントワーヌに謝って来てもらうことにした。電話を受けたアントワーヌは浮気相手に車を借りる。 ポーリーヌはナッシュに電話で土地売買の決定権は祖母にあり、その代理人である自分が絶対に賛成しないと宣言する。 夜明けになってナッシュがクルーザーで手下を連れて襲撃してきた。ポーリーヌとヴィクトールを連れ去ろうというのだ。 ジェーンは銃を持ち出し止めようとするが、背後から襲われて取っ組み合いになる。 そこにやってきたアントワーヌは銃声を聞きつけ、ジェーンを見つける。 結局、ポーリーヌとヴィクトールはクルーザーで連れ去られていた。 アントワーヌによると、ポーリーヌの実家も無人だったという。 ポーリーヌは車酔いで吐くふりをして車を止めさせ、木材でナッシュの手下を殴ってヴィクトールとともに逃げ出す。 手下どもはあわてて追うが、茂みが深くて見つからない。 二人は2台の自転車を見つけた。ところがポーリーヌは自転車に全く乗れない。無理やり乗せると道をそれて茂みに突っ込んでしまう有様。 仕方なくヴィクトールは二人乗りで自転車を走らせる。張り込んでいた手下どもに見つかってしまい、自転車を捨てて山越えを決行。 雨が降ってきたので見つけた納屋に避難する。そこで親子は仲直りした。 翌日、天気は回復して二人は元気に山を越えた。ところが運悪く行き着いた先はナッシュのアジト。 二人を見つけたナッシュは隠れて誘いこもうと企むが、先に連れ込まれていた祖母と妹たちがこれに気づき飛び出して叫んだため失敗。 結局、手下が銃を突きつける。その時、警官隊が突入してきた。 誘拐を知ったラウルとアントワーヌが通報したのだ。抱き合う家族。 やがてカジノは完成。セレモニーには首相も私人として顔を出す。破産したラウルはカジノの使用人として働いていた。 そこに警察がやってくる。 ヴィクトールはナッシュの件で取り調べを受けるためバハマに連行されることになった。彼はポーリーヌにカジノを託して去っていく。 ポーリーヌは仕事を辞めてカジノを引き継ぐ決意をするのだった。 終盤の展開はやや大味でラプノー監督の代表作とまではいかないが、父娘の確執と和解をコミカルに描いたテンポの良い佳作に仕上がっている。 今回イザベル・アジャーニが演じる役柄はひとひねりしてあり、実はそうでもない父親をダメ男と思い込んでカリカリしている才女をユーモラスに演じている。 恋人から首相の座を狙っているとからかわれるほどキレ者のヒロインが、どこまで本気なのか分からない父親に翻弄(ほんろう)される姿が楽しい。 洒落てトボけた味わいのイヴ・モンタンと、カリカリしたハイテンション演技のイザベル・アジャーニとのコントラストが作品の面白さを増している。 |
炎のごとく