原題 ; CHARADE(1963)
 監督 ; スタンリー・ドーネン
 脚本 ; ピーター・ストーン
 音楽 ; ヘンリー・マンシーニ
 出演 ; オードリー・ヘップバーン、ケーリー・グラント、ウォルター・マッソー
ロマンティック・サスペンスの傑作。
列車から投げ出される死体の描写に続き、カラフルな映像とヘンリー・マンシーニの華麗なメロディによるオープニング・クレジットが流れる。
夫チャールズが何か大きな秘密を持っていると感じていたレジーナ・ランパート(オードリー・ヘップバーン)は離婚を決意していた。スキー旅行の最終日、彼女は魅力的なピーター・ジョシュア(ケーリー・グラント)と出会う。
旅行から帰るとアパートは荒されていた。クローゼットもすべて空っぽ。
さらにグランピエール刑事からチャールスが殺され、家財一式を売り払って得た25万ドルが行方不明になったことを知らされる。
残されたメモにはシャンゼリゼ公園木曜午後5時とあり、切手を張ったレジーナ宛ての手紙もあった。
チャールズはフランスを離れようとして列車で殺されたのである。彼は4通ものパスポートを持っていた。
レジーナをチャールズの友人だったと言ってピーターが訪ねてくる。
チャールスの葬儀には怪しげな三人の男テックス(ジェームズコバーン)、ハーマン(ジョージ・ケネディ)、ギデオン(ネッド・グラス)が現れた。
アメリカ大使館に呼び出されたレジーナは、CIA長官バーソロミュー(ウォルター・マッソー)からチャールスはCIAに指名手配されていたことを知らされる。
三人の男とチャールズは、かっての軍隊仲間だった。彼らはアメリカ政府の金25万ドルを横領、それをチャールズが独り占めしようとして殺されたのだ。
ピーターはレジーナを励ましてディナーショーに連れ出す。二人はゲームに参加して良い雰囲気になる。だが、そこにギデオン、テックスが次々と現れ、金を渡せと脅しをかける。
ピーターはレジーナが何を悩んでいるのか聞き出そうとするが、彼女はバーソロミューに口止めされているので話さない。
ピーターと別れてホテルの部屋に戻るとハーマンが入り込んでいた。彼の片手は鉤爪になっている。
襲われて逃げ出したレジーナはピーターを呼び戻す。
ピーターはベランダをつたって姿を消したハーマンを捜す。すると三人が集まっていた。ピーターは乗り込んでレジーナに信用されている自分に任せろという。
テックスとギデオンはピーターを仲間に入れるが、分け前が減るのを嫌ったハーマンは去っていく。
レジーナはピーターに真相を話す。
そこにハーマンから電話がかかって来た。ハーマンはピーターのことをダイルと呼び、彼を信用するなという。
驚いたレジーナはバーソロミューに正体不明な4人目の男が現れた事を知らせる。
バーソロミューはピーターこそ真犯人ではないかとほのめかす。
本物のダイルは死んだという。1944年、5人の特殊部隊員がフランスの地下組織に25万ドルの金塊を渡すためドイツ軍の背後に潜入した。それがチャールズたち4人とダイルである。
彼らは金塊がドイツ軍に奪われたことにして盗んだ。その時にドイツ軍の攻撃でダイルは死に、ハーマンは片手を失ったのだ。そしてチャールズが裏切って金塊を独り占めしたのである。
バーソロミューはレジーナにダイルと呼ばれた男の正体を探るよう依頼した。
レジーナは女スパイ気取りで、おっかなびっくりピーターを尾行する。バレバレであっさりまかれた。
ホテルのロビーでピーターがダイルと名のっているのを見かけたレジーナは、電話で彼を問いつめる。
ダイルは弟で、兄が金海強奪に反対して4人に殺されたのだという。
ハーマンがダリルに銃を突きつけ、ホテルの屋上に連れ出す。ダイルが金のありかを知っていると思っているのだ。
ダイルは隙をついて反撃、格闘の末、ハーマンは屋根を滑り落ちたが、鉤爪でどうにか落下をさけられた。
レジーナはダイルの怪我を手当てする。良いムードになってレジーナが彼にキスしているとテックスから電話が入った。
三人がレジーナの親友シドニーの息子ジャン・ルイを人質にしたのだ。
ダイルは三人のうち誰かが、チャールズを殺してすでに金を奪ったのではないかと言い出す。
それぞれが荷物を調べているうちに、ハーマンが浴槽に沈められて殺された。
バーソロミューからレジーナに死んだダイルに兄弟はいなかったという情報が入る。
レジーナに問いつめられたダイルは、自分は裏稼業に手を染めた金目当て男で本名はアダム・キャンフィールドだと言い出す。あきれ果てるレジーナ。
アダムはレジーナに心を奪われたと告白。彼女もその気になる。
深夜、何者かに呼び出されたギデオンはエレベーターの中で喉を裂かれて殺された。
テックスも金を手に入れていない。
アダムはチャールズの遺品をもう一度調べるが、手がかりは見つからなかった。
だが、アダムはテックスの部屋の残されたチャールズの遺品リストからメモ帳が紛失していることに気づく。
レジーナはそのメモにシャンゼリゼ公園木曜5時と書かれていたことを思い出す。
二人は公園に急ぐ。そこにも手がかりはなかったが、テックスの姿があった。
テックスを尾行するアダム。公園では切手の市が開かれ、屋台が並んでいる。
突然ひらめいて走り去るテックス。アダムも同じことに気づいて後を追う。
ホテルに着いた二人が遺品を調べると、手紙に貼られた切手が切り取られていた。
公園に残されたレジーナは、シドニーに出会う。
レジーナに貰った切手が珍しかったのでジャン・ルイが切手市に来たがったのだという。
真相に気づいたレジーナはジャン・ルイを捜す。
ジャン・ルイは切手3枚を包み一杯の切手と交換していた。その業者を訪ねるレジーナたち。
3枚の切手はどれも類いまれな貴重品で、合計25万ドルになるという。業者は切手を返却してくれた。
レジーナがホテルに戻るとテックスが縛られ、頭にビニール袋をかぶせられて窒息死していた。彼は絨毯にダイルと書き残していた。
アダムが犯人と思い込んだレジーナは、バーソロミューに連絡を取りすべてを伝える。コロネード広場で落ち合うことにした。
アダムに追われながら広場に向かうレジーナ。地下鉄の駅から電話して秘書にバーソロミューへの言付けを頼む。
だが、秘書が連絡したバーソロミューは別人。レジーナのことを知らないと答える。
アダムに追われて走るレジーナは、ようやくバーソロミューの待つコロネード広場にたどり着く。
「その男がカーソン・ダイルだ銃を抜いたアダムが叫ぶ。
どちらを信じていいか分からないレジーナ。彼女はアダムを選ぼうとする。
ついにダイルの正体を現すバーソロミュー。彼は生き延びてドイツ軍収容所から帰還し、復讐のため4人を殺したのだ。
撃ち合いになり、レジーナは無人の劇場に逃げ込む。舞台の下に隠れたレジーナは、ダイルに見つかってしまう。
一歩一歩迫るダイル。その時、アダムが操作してダイルの足元を開く。ダイルは地下に落下して死んだ。
レジーナはアダムを連れて大使館に25万ドルを返還しに行く。担当者は財務省のクルックシャンク。
レジーナがクルックシャンクの部屋に入ると、アダムが先回りして座っていた。彼こそ本物の大使館員ブライアン・クルックシャンクで、ダイルは昼休みを狙ってオフィスに入り込みバーソロミューを装っていたのである。
証明を迫るレジーナだが、ブライアンのプロポーズですっかり有頂天になるのだった。
まあ、ケイリー・グラントが犯人役というのはあり得ないのだが、子供のころテレビで見た時は、そんなこと分からないので本当にハラハラした。
おしゃれなタッチも生きており、結末が分かっていても見飽きない。シリアスに徹したサスペンス「暗くなるまで待って」と甲乙つけがたい名品と思う。
個性的な悪役の揃った中でもコバーン演ずるテックスは剃刀のような鋭いイメージで作品全体の緊張感を高めていた。断末魔の表情もインパクトが強い。
ジョージ・ケネディ扮する鈍くて獰猛(どうもう)そうなハーマンと好対照をなしている。
もう一人のギデオンは会計士みたいな雰囲気の小男で、テックスが俺より残忍だとか言ったりするのだが、見せ場もなく印象の弱いキャラクターなのが少々残念。
余談=製作もかねたスタンリー・ドーネンは本作のヒットに続いてヘンリー・マンシーニ音楽、ソフィア・ローレン、グレゴリー・ペック主演で「アラベスク」を作った。ダメとは言わないが本作に比べると数段見劣りのする出来ばえだった。原因は主演二人にヘップバーン、グラントほどの軽妙さがなかったこともあるが、個性的な脇役がいなかったことも大きな要因と思う。
シャレード
ストーリーは基本的にラストまで
紹介してあります。
この作品はDVDが発売されているので
鑑賞が可能です。御注意ください。