原題 ; A HIGH WIND IN JAMAICA(1965)
 監督 ; アレクサンダー・マッケンドリック
 脚本 ; デニス・キャノン、ロナルド・ハーウッド、スタンリー・マン
 音楽 ; ラリー・アドリー
 出演 ; アンソニー・クイン、リラ・ケドロヴァ、ゲルト・フレーベ、ベニト・カザラス
リチャード・リューズ原作による海賊映画の異色作。
どこが異色かというと、よくある海賊映画は悪の領主と対決したり、失われた財宝を探し出したりというのが定番なのだが、本作は子供を助けたために破滅する海賊たちを描いている。
ジャマイカ在住の英国人夫妻が、五人の子供たちに英国の教育を受けさせようとロンドン行きの船舶に乗せる。
ところがその船は、海賊シャベツ(アンソニー・クイン)一党の襲撃を受けてしまう。
子供たちを置き去りにして脱出した船長は保身のため、子供たちが海賊に惨殺されたと説明する。
実際には見かねたシャベツが子供たちを救助していたのだが、この噂のためシャベツ一党は孤立してしまい、隠れ家にしていた港にもいられなくなってしまう。
子供たちの長女エミリーは足の怪我がもとで高熱を出してしまい、部下たちの間には「子供は縁起が悪い」との迷信が広まって反乱の動きも出てくる。
反乱は副官のザック(ジェームズ・コバーン)の力で抑えることができた。
シャベツはオランダ船を襲撃して船長(ゲルト・フレーベ)を人質にする。
熱の下がったエミリーの部屋で椅子に縛り上げられた船長は、エミリーにナイフでロープを切るよう命令した。
だが、緊張のあまり手元が狂ってエミリーは船長を刺し殺してしまう。
やがてシャベツたちは逮捕、子供たちは開放される。
シャベツたちの裁判が開かれるが、尋問におびえたエミリーはシャベツたちが船長を殺したと証言してしまう。
この証言がもとでシャベツたちは死刑となってしまうのだった。
ジェームズ・コバーンは、皮肉な口をきいても、いざというときには頼りになる海賊の副官をさっそうと演じているが、特に印象的な見せ場はない。
子供を助けたために破滅するアウトローたちというテーマは、描き方が新しければニュー・シネマの先駆けとなったかもしれない。
残念ながら本作は中途半端な出来で、ヘンな海賊映画という印象にとどまってしまった。
アンソニー・クインは適役ともいえるのだが、いかんせん古いタイプの演技者だ。
ジェームズ・コバーンが主演していれば印象の違う作品になっていたかもしれない。
余談=アレクサンダー・マッケンドリック監督の代表作は1955年のコメディ「マダムと泥棒」。残念ながら見逃している作品だが、傑作との呼び声が高い。
海賊大将