原題 ; IN LIKE FLINT(1967) |
監督 ; ゴードン・ダグラス |
脚本 ; ハル・フィムバーグ |
音楽 ; ジェリー・ゴールドスミス |
出演 ; リー・J・コッブ、ジーン・ヘイル、アンドリュー・ダッガン、アンナ・リー |
フリント・シリーズ第二弾。 一作目に比べ緊張感に欠け散漫な印象だったが、今見ると徹底してオバカな内容でけっこう笑える。さすがはオースティン・パワーズの手本になったといわれるシリーズだ。 世界が有人宇宙ステーションの打ち上げ成功にわいていた。 その頃、ヴァージン諸島に本拠地を持つエステ・サロンを偽った秘密結社「美顔クラブ」は替え玉作戦を実行に移そうとしていた。 ゴルフ中のトレント大統領(アンドリュー・ダッガン)に接近、人間の動きを止める装置を使って、周囲の者も気づかないうちに偽者とすり替えてしまったのだ。 その場にいた諜報機関ZOWIEのクラムデン長官(リー・J・コッブ)は、たまたまストップ・ウォッチを使っていたことから空白の時間に気づき、デレク・フリント(ジェームズ・コバーン)に調査を依頼する。 フリントはイルカの音声辞典を編さん中で、音波装置による物質破壊のデモンストレーションを見せたりする。 緊急事態とは知らないフリントは、次に予定していたデス・バレーでのサバイバル・テストが終了次第調査にかかると約束する。 「美顔クラブ」は、フリントと暮す三人の美女にも魔の手を伸ばしていた。 罠とも知らず勧誘を受け、ヴァージン諸島へと飛び立つ三人。 罠はクラムデンにも迫っていた。 レストランでクラムデンと同席した自称教師の正体は「美顔クラブ」のリサ(ジーン・ヘイル)だった。 酒に麻薬を入れられてクラムデンは意識を失い、リサとベッドに寝ているところをMPに踏み込まれてしまう。 スキャンダルで失脚寸前のクラムデンはフリントに助けを求める。 クラムデンの部下はデス・バレーにパラシュートで降下中のフリントに空中でクラムデンの記事が載った新聞を渡し急を告げる。 さっそく引き返したフリントは内部の犯行とにらみZOWIE基地に侵入、ソ連の女性宇宙飛行士の心拍がモニターされていることを知るが、警備兵に見つかり大型シュレッダーに落とされてしまう。 だが、フリントは無事モスクワに潜入していた。 「美顔クラブ」が秘密結社であることを突き止めたフリントは、KGBの銃撃をかいくぐり脱出、キューバに向かう旅客機をハイジャックしてヴァージン諸島へと向かう。 なんか無茶苦茶な展開。 裏切り者はカーター准将(スティーヴ・イーナット)でクラムデンのペンに仕込んだ盗聴器で情報は筒抜けだった。 そのクラムデンもミサイル基地の近くに本拠地を置く「美顔クラブ」が怪しいとにらむ。 なんとクラムデンは女装して「美顔クラブ」に潜入を図る。 情報が漏れてなくてもバレバレって感じ、即捕まって大統領と再会する。 一方、フリントの影響が強すぎて洗脳が効かない三人のV美女は、人体冷凍保存機にかけられてしまう。 旅客機を飛び降りたフリントは、イルカに掴まって海底から敵地に侵入、リサと出会い冷凍プログラムのレクチャーを受ける。 フリントにとって不死とは程遠いイメージの冷凍保存は、人生を先送りするだけの無用の長物だった。 リサはフリントを、そのまま送り返そうとするが、フリントはすでに陰謀の存在に気づいていた。仕方なくリサはフリントを「美顔クラブ」の首謀者エリザベス(アンナ・リー)、シモーヌ、ヘレーナのもとに連行する。 「美顔クラブ」は宇宙から核弾頭で世界を脅迫し、女が支配する世界を築こうとしていた。 賛同しない女性はヘアドライヤー型洗脳機にかけてしまおうという無軌道ぶり。 ところが協力者であったはずのカーター准将が本性を現して反乱を起こす。 一旦は逃げ出したフリントだが多勢に無勢、結局は捕まって「美顔クラブ」の幹部たちと冷凍保存機に入れられてしまう。 フリントは音波装置でガラスを破壊して脱出、他の者たちも解凍して救出,、フリントたちと「美顔クラブ」は手を組んでミサイル基地奪還に向かう。 ブラジャーを振って油断した見張りの兵士を倒して基地内に侵入、いきなり抱きついてキスをする戦法で管制室も占拠、というバカ大爆発ぶり。 だが、カーター准将は核弾頭を搭載したロケットに乗り込んでしまう。 発射の直前にフリントも乗り込み、格闘の末カーター准将を宇宙空間に放り出すが、米軍の追撃ミサイルはすでに発射されていた。 爆発するロケット。 肩を落とすクラムデンに、大統領は今日この日を世界の休日とする決意を伝える。 そこにフリントの声が響く。 フリントは脱出に成功、宇宙プラットフォームに到着してソ連の女性宇宙飛行士といちゃついていた。 改心して男に政治を任せるという「美顔クラブ」の首謀者たちは、こっそりとしたたかな笑みを浮かべていた。 結局、男を後ろからしたたかに操っているのは女、というテーマは虫プロのアニメ「クレオパトラ」に共通している気がする。 コバーンの空手アクションも奇声を発し大げさな動きでユーモラスなものになっている。個人的理由でしか行動を起こさないというフリントらしさが弱まったのは少し残念だった。 余談その一=何かしらのトラブルからゴードン・ダグラス監督が現場に来なくなってしまい、ジェームズ・コバーンが中心となって残ったスタッフと日毎にシナリオを検討して撮影し、何とか完成させたという記事を読んだことがある。少々散漫な印象なのは、そのためかもしれない。監督業に興味を持ち「コンボイ」では助監督として参加したコバーンだが、生涯に監督作はテレビ・シリーズ「ロックフォード氏の事件メモ」の一エピソードのみ。向いてなかったのかもしれない。 余談その二=フリント・シリーズは二作で打ち切りとなった。コバーン自身が二作目のトラブルで嫌気がさしたこともあったらしいが、最大の理由は予算が掛かりすぎることだったようだ。ニュー・シネマが台頭し、高予算の娯楽作品は本数を減らしていく時期に入っていったのだと思う。その後、電撃フリントのテレビ版リメイクという企画もあったらしいが、コバーンは「映画のキャラクターをテレビでもう一度演じる気はない」と断ったとか。正解と思う。さらにその後、コバーンが、テレビ・シリーズ「刑事スタスキー&ハッチ」で人気のあったデヴィッド・ソールと共同で電撃フリントの新作シナリオを執筆しているというニュースが流れたこともあったが、映画化実現には至らなかった。 |