原題 ; LAST OF THE MOBILE HOT-SHOTS(1969)
 監督 ; シドニー・ルメット
 脚本 ; ゴア・ヴィダル
 音楽 ; クインシー・ジョーンズ
 出演 ; リン・レッドグレーヴ、ロバート・フックス、ペリー・ペイズ、レギー・キング
テネシー・ウィリアムズの戯曲を映画化したブラックな感覚のドラマ。
優れたスタッフによる見応えのある作品と思うのだが、軽アクション作品の多いジェームズ・コバーンとしては毛色が違いすぎたためか、ドラマの大半が一軒の屋敷の中で進行し主な登場人物も三人という地味さのためか、日本では劇場未公開に終わった。
ジェブ(ジェームズ・コバーン)はゲーム大会で偶然コンビを組んで優勝したミレット(リン・レッドグレーヴにいきなりプロポーズする。
ジェブがミレットを連れて行った実家は南部の邸宅。
かっては栄華を誇った南部の旧家も今は没落しており、使用人は黒人青年くらいしかいない。
ジェブは一族の血を継ぐ最期の一人なのだが不治の病に侵されていた。
急なプロポーズにも何とかして跡継ぎを作りたいという願いがあったのだ。
だが、ミレットは次第に生命力あふれる黒人青年に惹かれていく。
焦燥感を募らせるジェブに青年は、自分が前領主と女使用人の間に生まれた子供であるという秘密を明かす。
一族最期の一人が黒人だったという皮肉な事実を知ったジェブは絶望の中で死んでいくのだった。
ラストは洪水が来るとかで屋根に上ったミレットと青年の場面だったように思うが記憶違いかもしれない。
深夜のテレビ放送で一度見ただけだし相当カットされていたと思うので断言できないのだが、なかなか印象的な作品だった。
娯楽作品ではスマートな自信家という役柄を得意としたコバーン、本数はそれほど多くないし劇場未公開作品が多いのだがシリアス・ドラマでは現実と折り合いがつけられず破滅していく男の役を得意としていた。
この作品は後者キャラクターの原点といえるのではないだろうか。
アカデミー助演男優賞をとった「白い刻印」の父親役も、この延長線上と思う。
本作がきちんと評価されていればアカデミー・ノミネートの際、評論家に「これほど演技がうまいとは誰も知らなかった。本人以外は」などと書かれることもなかったと思うのだが。
はるかなる南部