原題 ; PAT GARRETT AND BILLY THE KID(1973) |
監督 ; サム・ペキンパー |
脚本 ; ルドルフ・ウァーリツァー |
音楽 ; ボブ・ディラン |
出演 ; クリス・クリストファーソン、ボブ・ディラン、ジェーソン・ロバーツ |
西部開拓時代のアウトロー、ビリー・ザ・キッドとパット・ギャレットの死を通して去り行く時代への鎮魂歌を描いた作品。 劇場公開当時はMGMが再編集を行い、ペキンパー監督の納得がいかないバージョンで上映された。 晩年、ペキンパー監督はメキシコに住み、本作を編集し直して特別篇を作り上げた。 今回は特別篇でストーリーを紹介。 オープニングとラストのパット・ギャレット暗殺シーンは、ペキンパーによる最初のバージョンにも入っていたが、より単純な西部のヒーロー対決物を望んだ映画会社に切られてしまったらしい。 特別篇は馬車に乗る年老いたパット・ギャレット(ジェームズ・コバーン)が暗殺されるシーンから始まる。パットが射殺されたのは1909年2月19日のニューメキシコ、58歳の時だったらしい。 そして舞台は1881年に移る。 フォート・サムナーに潜むビリー・ザ・キッド(クリス・クリストファーソン)の元に旧友パット・ギャレットがやってくる。 パットは保安官になり、有力者チザムからビリーを追い出すよう命令されたのだ。 5日の猶予が過ぎ、パットは一隊を引き連れて襲ってきた。 仲間たちは次々に倒れ、最後に残ったビリーは投降する。 ビリーは留置されるが、パットの不在中に仲間が銃を送り込む。 保安官助手を射殺してビリーは脱走、町民の見守る中悠々と馬で去っていく。 町に戻ったパットはウォーレス知事(ジェーソン・ロバーツ)らの命令で追跡を開始。 ビリーがフォート・サムナーに戻ると四人の新入りがいた。 その四人の中にはビリーに憧れるエーリアス(ボブ・ディラン)の姿もあった。 他の新入り三人はビリーを狙う殺し屋だったが、ビリーたちには敵わず命を落とす。 パットは老保安官ベイカー(サム・ピケンズ)夫婦とともにビリーの仲間を襲撃するが、ビリー本人はおらず、ベイカーは撃たれてしまう。 ベイカーが川のほとりで哀しげに死を迎える場面は、滅びを描くことが得意だったサム・ペキンパー演出の中でも哀感に満ちた名場面となっている。 パットはチザムがよこした保安官代理ポー(ジョン・ベック)と合流する。 ポーは西部開拓時代を知らない新しい世代の人間であり、パットとはソリが合わない。すぐに別行動を取ることになる。 仲間の元を去ったビリーはアラモサ・ビル(ジャック・イーラム)一家を訪れるが、アラモサはパットに任命され保安官になっていた。 二人は決闘することになる。背中合わせに十歩歩いて撃ち合うのだが、ビリーは一歩も動かず八歩で振り返ったアラモサを射殺する。 ビリーは、チザムの牧童たちが知り合いのメキシコ人パコ一家を襲っている現場に遭遇、牧童たちを倒すがパコも死んでしまう。 再びフォート・サムナーに戻ったビリー。その情報を得たポーはパットに報告する。 パットは貸しのある保安官マッキニー(リチャード・ジャッケル)とポーを連れてフォート・サムナーに向かう。 三人がフォート・サムナーに到着した頃、ビリーは恋人マリア(リタ・クーリッジ)とベッドの中だった。 ここでパットが会話する町の老人はサム・ペキンパー自身が演じている。 ポーは食べ物を取りに出たビリーを見つけるが銃を抜くことが出来ない。 屋内に戻ったビリーは待ちかまえていたパットに撃ち殺される。続いてパットが自分の姿が映っている鏡を撃つ場面が印象的。 証拠品にビリーの指を切り取ろうとするポーをビリーは殴りつけ蹴り上げる。 夜明けとともにパットは馬に乗り独りフォート・サムナーを去る。その後姿にメキシコ人の少年が石を投げるがパットは振り返らない。 そして再び1909年、撃たれて馬車から落下するパットの姿に、ビリーたち昔の仲間たちの姿がカットバックされる。 実を言うと最初の劇場公開バージョンは、もう殆んど覚えていないのだが、特別篇の方がよりパットの苦悩が感じられる気がする。 すでに時代は変わり西部に生きる場所を失ったアウトローたち。 パットは出来るならビリーにメキシコで生き延びてほしいと願い、それが叶わぬなら他人の手にはかけさせたくないと考えたのではないだろうか。 そしてビリーを殺し鏡を撃った時、パット自身も一つの人生を終えてしまったことを悟っていたのだろう。 激しい暴力描写とともに哀感に満ちた傑作と思う。 この作品以降、コバーンは「大いなる決闘」「ザ・グレート・ファイター」とタイプの違うウェスタン映画で時代に取り残されたアウトローを演じることになる。 コバーンとペキンパーは「ダンディー少佐」に続く顔合わせ。今回もトラブルに巻き込まれたが、最終的にはペキンパー本人の編集に戻せて本当に良かった。 公開当時はクリストファーソン、ボブ・ディラン、リタ・クーリッジの3大歌手共演にパブリシティーがいってしまい、コバーンの影が薄くなって残念に思った記憶がある。 余談=パンフレットによると、ジェーソン・ロバーツが演じたウォーレス判事は「ベン・ハー」の原作者とのこと。 |