原題 ; BITE THE BULLET(1974)
 監督 ; リチャード・ブルックス
 脚本 ; リチャード・ブルックス
 音楽 ; アレックス・ノース
 出演 ; ジーン・ハックマン、キャンディス・バーゲン、ベン・ジョンソン、イアン・バネン
すでに西部開拓時代も終焉を告げた1908年を舞台に、700マイル踏破レース参加者たちの冒険を描いた異色の西部劇。
タイトルは、麻酔もない西部開拓時代、手術をするときに弾丸を噛ませ、歯を食いしばらせて痛みに耐えさせたことに由来している。
1908年の西部、ある新聞社が開拓時代を回顧した700マイル踏破レースを主催する。賞金は2千ドル。
参加者の賞金稼ぎルーク・マシューズ(ジェームズ・コバーン)、年配のカウボーイ、ミスター(ベン・ジョンソン)、若いカーボ(ジャン・マイケル・ヴィンセント)、英国紳士ノーフォーク卿(イアン・バネン)、紅一点のミス・ジョーンズ(キャンディス・バーゲン)らは新聞社が仕立てた特別列車でレース開始地点に向かう。
虫歯に悩むメキシコ人も参加する。
一方、元騎兵隊のカウボーイ・サム・クレイトン(ジーン・ハックマン)は、開始地点まで新聞社が招いたレースの本命パーカーの馬を陸送していた。
チェックポイントさえ通過すれば細かいコースは自由というルール。
開始前夜、血気盛んなカーボは、ルークを挑発したりラバを殴ったりとやりたい放題。動物を大切にするサムがカーボに殴りかかり、昔馴染みのルークも加勢して乱闘になる。
最後になってサムがパーカーへの反感からレース参加を決め、8名の争いとなる。
いよいよレースが始まった。新聞関係者やギャラリーは列車で次のチェックポイントを目指す。記者はサイドカー付きのバイクで一行を追う。
ノーフォーク卿は近道しようとして失敗、馬の無事を喜びバカな真似は二度としないと誓う。
第一関門の町でサムとミス・ジョーンズは、悪化したメキシコ人の虫歯を治療する。歯茎を切って膿を出し、薬莢を金冠替わりにした。
ミスターも腰痛に苦しめられる。
翌日、ミス・ジョーンズが二人の暴漢に襲われる。駆けつけたサムが一人をライフルで射殺。すかさずミス・ジョーンズが残りを片付けた。
近道をしようとしたルークは、断崖で熊に出くわしてしまう。驚いた馬が河に落下、ルークも後を追って飛び込む。
馬で河を渡ろうとしたミスターは深みにはまって流されてしまう。
皆がキャンプしているところにミスターの馬だけがやってくる。サムが探しに行くと、ミスターはどうにか岸に上がっていた。しかし持病の心臓が悪化していた。彼はキャンプでサムに人生を語りながら死んでいく。サムは、ミスターの本名すら知らないと慟哭する。
レースは砂漠地帯に入った。サムはミス・ジョーンズに、ルークとともに義勇軍としてキューバでスペイン軍と戦い、ゲリラだった妻を亡くした話をする。
トップに立とうと無理に飛ばしたカーボの馬が力尽きて倒れ死んでしまう。サムは、馬を捨てていくカーボを追いかけ、埋葬するように命じた。
このことで反省したカーボは、いきなり真面目な好青年に変身する。
砂漠地帯を抜けたが、ノーフォーク卿が落馬。馬が足を骨折したため殺さねばならなかった。泣きながら引き金を引くノーフォーク卿。
レースが囚人の作業地域に近付いてきた。チェックポイントでサムが倒れた。酒場の女が強壮剤を酒に混ぜて飲ませたためだった。サムはふらつきながらもレースを続ける。
ミス・ジョーンズは、囚人たちの鉄道工事現場を襲撃する。服役している恋人のスティーヴを脱獄させることがレース参加の真の目的だった。
スティーヴは、メキシコ人の馬を奪い、逃げようとした彼を撃つ。
ルークとサムも馬を取られてしまう。二人は新聞記者のサイドカー付きバイクで追いかける。この場面が最大の見せ場なのだが、音楽がコミカルなため、ちょっと迫力がない。
カーボの協力もあって二人は脱獄囚を一人ずつ倒していく。スティーヴのやり方に見切りをつけたミス・ジョーンズは、彼の元を離れ居場所を教える。逃げるスティーヴをサムとルークが狙い撃ち。馬を取り戻した。
中断していたレースが再開。サム、ルーク、パーカーの3人だけになっていた。
サムがトップでゴール地点に来るが、目前で力尽き馬から落ちてしまう。彼は馬を曳いて歩き出す。そこにやってきたルークもサムの姿を見て馬を降りた。二人は同時のゴールしたのだった。
西部の男と馬の関係がテーマの一つになっており、その部分は成功していると思う。
なかなか良いエピソードもあるのだが、肝心のレース自体の描写に緊迫感が欠けるのが難点。中間では誰が何位なのか、ほとんど分からない。
主人公二人が馬を取り戻そうとしている間、わざわざ待っているほどの余裕を見せた大本命のパーカーが、いつの間にか歩いてゴールする二人に追い付けないほど遅れてしまうのも、よく分からない。
無骨なカウボーイに扮したジーン・ハックマンや、クールな賞金稼ぎ役のジェームズ・コバーンを始め、配役は絶妙と言える。
対照的な二人の友情を、もっと丁寧に描いてあれば佳作になったかもしれないと思うのだが。
ベン・ジョンソンも時代と共に死んでいくオールド・カウボーイを好演。晩年のベン・ジョンソンて、こんな役ばっかりだった気もするが。
リチャード・ブルックスは「暴力教室」「熱いトタン屋根の猫」など社会派の問題作を撮った監督。後期は、わりと一般的な娯楽作を撮っていた。後期の代表作はアクション・ウェスタン「プロフェッショナル」とサスペンス映画「冷血」。
弾丸を噛め
ストーリーは基本的にラストまで
紹介してあります。
この作品はDVDが発売されているので
鑑賞が可能です。御注意ください。