原題 ; MIDWAY(1976) |
監督 ; ジャック・スマイト |
脚本 ; ドナルド・S・サンフォード |
音楽 ; ジョン・ウィリアムス |
出演 ; チャールトン・ヘストン、ヘンリー・フォンダ、三船敏郎、ロバート・ミッチャム |
アメリカ建国200年記念大作というふれ込みの作品。第二次大戦の明暗を分けたともいえるミッドウェイ海戦を舞台にアメリカと日本の攻防を描いた部分は悪くないのだが、見せ場となる空襲や空中戦の場面を、実写だけならともかく「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦・太平洋の嵐」「東京上空三十秒」「トラ・トラ・トラ」から無断使用した場面のつぎはぎで作り上げたため、戦争映画史上のワースト作品となってしまった。 1942年4月、東京が米軍の空襲を受け、海軍の山本五十六元帥(三船敏郎)はMI作戦を開始した。 当初、海国日本はアメリカの4倍の戦艦を有していた。巨大な工業力を誇るアメリカが軍艦を増強していない初期段階でミッドウェイを攻撃し、壊滅的な打撃を与えようというのだ。 一方、米太平洋艦隊真珠湾基地のマット・ガース大佐(チャールトン・ヘストン)も対抗すべく作戦を練っていた。 マット大佐の息子トム(エドワード・アルバート)は日系人の佐倉春子と結婚したがっていた。 米軍は日本の暗号AFがミッドウェイを意味すると見当をつけ、ニセ情報を流してこれを確認する。 米軍内には日本の流したニセ情報ではないか疑うマドックス大佐(ジェームズ・コバーン)もいたが、司令官ニミッツ大将(ヘンリー・フォンダ)はこれを退ける。 マット大佐は、スパイ容疑で拘束されている佐倉家の元を訪れる。しっかりした信念を持っている春子に、マットはトムと直接話すよう勧めるのだった。 ニミッツ大将は、皮膚病で入院したハルゼイ中将(ロバート・ミッチャム)の進言でスプルーアンズ少将(グレン・フォード)を艦隊司令官に任命する。 作戦に徴収されたトムは、父が春子と引き離そうとしているのではないかと疑う。 そこでマットはキャリアに傷がつくのを覚悟で春子の保証人になる。 真珠湾の空母は出動したが、日本海軍はこの動きを掴んでいなかった。 山本は米艦隊の所在情報が全く入らないことに苛立つ。 ニミッツ将軍は、日本海軍の動きを予測して艦隊の配置を進めていた。 6月4日、山本元帥の指令により戦闘機が空母から飛び立っていった。 空中戦が展開され、米戦闘機隊は大きな被害を受ける。トムは機内の火災で大火傷を負う。 だが、滑走路の破壊には失敗してしまう。このため戦闘機に装填した魚雷を外し陸用爆弾を装備することになった。 燃料切れの戦隊が帰投するため、第2波は発進できない。敵艦が発見され、魚雷に装備しなおすことになる。 米軍の攻撃が開始されるが、第1波は全機撃墜される。 日本の偵察機は空母2隻を発見するが無線が壊れていて連絡できない。 米軍による空母攻撃が再開され、あっという間に3隻の空母が炎上する。 米戦闘機が次々帰投するが、負傷していたトムは着艦に失敗、重傷を負う。 米空母ヨークタウンも炎上。 米軍は最後の日本空母飛竜を索敵していた。マットも息子の代わりに戦闘機に乗り込み、出撃していく。 飛竜への攻撃が開始され、これも炎上。旗艦大和では作戦の失敗を認めた山本元帥が撤退を決めていた。 凱旋する米戦闘機隊。だがマットの機は被弾していた。着艦に失敗したマットは、あえなく死んでいく。 真珠湾では、担架で運ばれるトムを見守る春子の姿があった。 戦力に勝りながらも情報の収集・分析に失敗し、運の悪さも手伝って敗北する日本軍。だが、米軍も完璧にことを運んだわけではなかった。というあたりが面白いのだが、親子の葛藤を描いたドラマは中途半端で不発。日系女性との恋というのは日本向けのサーヴィスか。 戦闘シーンが流用なため、チャールトン・ヘストンも空の勇者ぶりを見せるシーンがない。活躍しないので何だか犬死に見えてしまう。 ジェームズ・コバーンもワン・シーンのみの出演で全く見せ場がない。アカデミー助演男優賞受賞のスピーチで「金のために出る映画もある、愛のために出る映画もある」と語ったコバーンだが、本作なんか前者の典型では、と思えてしまう。ただしこのマドックス大佐、パンフレットによれば「ガラガラ蛇」の異名を取る軍人で、力説する助言は理にかなったものであったらしい。ニミッツ大将がミッドウェイに賭けたのは、マドックスに対する反感があったからではないかと書いてある。とすればマドックスもミッドウェイの逆説的な功労者といえるかもしれない。 余談その一=この作品は日本公開に当たって、日本の場面は日本語のセリフにしたい、という三船敏郎と配給会社の意向により特別吹き替え版が作成された。東宝映像と日本MCAの協力により三船敏郎本人と声優でダビングされ、そのプリントにアメリカで字幕をつけるという作業が行われたとある。そこまでしたのにソフト化されるのはアメリカ公開版ばかり。何とかしてほしい。日本のテレビ公開版は3時間の特別ヴァージョンだったという話もある。そういえば確かに前後編で放送されてた。 余談その二=この作品は大型ウーハーを仕掛けたセンサラウンド方式で劇場公開された。ズシンズシンと響くのはいいが、せっかくのジョン・ウィリアムズの音楽が聞こえないじゃないか、と一部からは不評だった。 余談その三=オールスター大作というふれ込みのこの作品。無名時代の俳優も何人か出ていて、参謀長官にパット・モリタ、ヒゲの隊長にトム・セレック、パイロットの一人に「白バイ野郎ジョン&パンチ」のエリック・エストラーダが顔を出していたりする。 |