原題 ; SKY RIDERS(1976)
 監督 ; ダグラス・ヒコックス
 脚本 ; ジャック・デューイット、スタンリー・マン、ゲイリー・ミシェル・ホワイト
 音楽 ; ラロ・シフリン
 出演 ; スザンナ・ヨーク、ロバート・カルプ、シャルル・アズナブール、ジョン・ベック
ダグラス・ヒコックス監督は、「シェークスピア連続殺人」なんてドクターファイブス並の最低スプラッターを撮ったかと思うと、次にはジョン・ウェインのポリス・アクション「ブラニガン」を監督したりする、よく分からない人物。
本作は例外的にスピーディーでしまりのある演出がなされ、小品ながら小気味良い快作に仕上がっている。
アメリカ人の富豪ジョナス・ブラッケン(ロバート・カルプ)の邸宅をテロリストが襲撃。使用人は射殺され、妻エレン(スザンナ・ヨーク)と二人の子供が誘拐されてしまう。
捜査にはニコリディス署長(シャルル・アズナブール)が当たる。
一方、セスナ機を操って密輸をしていたジム・マッケーブ(ジェームズ・コバーン)は新聞で事件を知った。エレンは先妻で長男ジミーはマッケーブの子供だった。
マッケーブがブラッケン邸に到着すると、世界革命軍行動派と名乗る一味から500万ドルを要求する脅迫テープが届いたところだった。
全財産を整理して金を揃えようとするジョナス。
一味はジョナスに武器供与を要求してきた。犯人の通信を逆探知する警察。
だが、それは罠。メッセージは録音で、爆弾が仕掛けられていた。
警察からは死傷者多数.。署長が息子のように可愛がっていた甥っ子も爆死した。
犯人から人質三人が写った写真が届く。背後には壁画のようなものが写りこんでいた。
調査を始めるマッケーブ。なじみの鑑定家にロッサノ僧院の壁画であることを割り出させた。
ロッサノ僧院は岩山の頂上に建てられ、登り道は一本のみ。そこを見張られたら攻略不能。
だが、マッケーブには策があった。ハング・グライダーを利用するのだ。
ベン(ジョン・ベック)をリーダーとするハング・グライダーの曲芸一座を雇い入れるマッケーブ。
早速特訓が開始された。
一方、警察は武器供与をとめるためジョナスの身柄を拘束した。
訓練を終了したマッケーブは、十万ドルで曲芸一座を救出作戦に参加させる。
警察も、ようやくロッサノ僧院を突き止めていた。
夜になり、マッケーブたちは月明かりを頼りに向かいの山に登る。
そして空中の移動が開始された。
先陣を切って岩山に到着したマッケーブの合図で次々と団員が飛び立つ。
夜明けとともに行動を開始するマッケーブ。
エレンたちの居場所を突き止めたマッケーブは見張りを倒し、救出に成功。
だが、ハング・グライダーに辿り着く前に見つかってしまい、銃撃戦となる。
警官隊も地上から攻撃を開始した。
ようやくハング・グライダーに辿り着き、次々と飛び立っていく。
時間稼ぎのためマッケーブだけが残った。
風が変わり、敵前に出てしまい銃撃されてしまう者も出る。
テロリストのリーダーはヘリコプターに乗り込みマッケーブに体当たりする。
マッケーブはヘリの脚部にしがみついた。
グライダーを追撃するヘリにマッケーブは弾丸を撃ち込む。ヘリは故障して不時着を余儀なくされる。
マッケーブは不時着直前に飛び降り負傷。ヘリを降りたテロリストのリーダーはマッケーブに銃を向けるが、警察のヘリが到着したのを知ると観念して自殺した。
家族との再会を喜ぶジョナスたちを、寂しげに見つめるマッケーブ。
ジミーに事情を説明しようとするエレンをマッケーブはとめるのだった。
ラスト、担架で運ばれるマッケーブがワインを飲みながら署長に、「この銘柄のワインだったら数がまとまれば卸値で売ってやるぜ」とかうそぶくのがいかにもコバーンらしいキャラクターになっている。
この作品、もともとハング・グライダーを生かすための企画で、大スターを使うとハング・グライダーが目立たなくなるという理由からジェームズ・コバーンが起用されたらしい。
結果的にコバーンの存在感が作品を深みのあるものにしている。
このマッケーブ役は、コバーンのキャリアの中でも一つの節目となるものと思う。
コバーンは、例え家族のある役でも、家庭臭を感じさせない役を演じ続けてきた。(それゆえシリアス・ドラマでは、家庭をかえりみなかったり、現実を受け入れられられなかったりする役が多く、悲劇的な最期を迎える)
この作品でも妻子と別れ、一人気ままに自らセスナを駆って密輸をしてたりする。
そんな男が、元の妻子のため命がけの闘いを繰り広げるのだが、息子にとっては助けに来たどこかのおじさんにすぎない。
「現金作戦」や「太陽を盗め」で調子よく生きてきた犯罪者が、中年にさしかかり感じる寂寥感。そんなイメージが、この作品のマッケーブ役にはある。
余談その一=この作品は東京では全くヒットしなかったのだが、地方では大ヒット作「オーメン」と2本立てで公開されたため、意外な高配収となった。強運な映画といえるかもしれない。
余談そのニ=ダグラス・ヒコックス監督のデビュー作は「原子怪獣現わる」のユージン・ルーリーと共同監督した「巨獣ビヒモス」(「映画秘宝・怪獣マル秘大百科」参照)。1980年代からテレビ界に活動を移したが、1988年59歳で亡くなった。
スカイ・ライダーズ