原題 ; THE LAST HARD MEN(1976) |
監督 ; アンドリュー・V・マクラグレン |
脚本 ; ガードン・トゥルーブラッド |
音楽 ; ジェリー・ゴールドスミス |
出演 ; チャールトン・ヘストン、バーバラ・ハーシー、クリス・ミッチャム |
暴力的なシーンが多いこともあり正統派西部劇ファンからは敬遠されがちな作品だが、追う者追われる者の駆け引きが綿密に描かれ、緊張感あふれる娯楽作品に仕上がっている。 原題が示すとおり、ともすれば時代遅れとみなされる開拓時代を生き延びた荒くれ者二人が主人公。 いかにも初老の元保安官という渋い印象のチャールトン・ヘストンに比べ、ジェームズ・コバーンは紺のジャケット、赤いシャツに黄色系のネッカチーフといういでたちで洒落者ぶりを発揮している。 舞台となるのは西部開拓期が終わり、これからは鉄道よりも飛行機の時代になる、なんて会話も登場する。 鉄道工事作業をする囚人たち。 その中には無法者ザック・プロヴォ(ジェームズ・コバーン)の姿もあった。 ザックは隙をついて看守を倒し、6人のならず者を連れて脱走する。 ザックの目的地はトゥーソン、そこに仇敵である保安官サム・バーケード(チャールトン・ヘストン)がいるのだ。 サムもザック脱獄の報に引退を返上して動き出していた。ザックは早撃ちの名手、名保安官として名高いサムも策略を弄してようやく逮捕できたほどの強敵だった。 馬を盗み逃走を続けるザックたち。 ザックが逮捕されたとき、妻が流れ弾に当たって死んだ。それ以来、彼はサムを仇として憎んでいるのだ。 ザックたちは、雑貨店を襲い服と武器を入手した。インディアンの血をくむザックは、ここで人種差別主義者のリーロイを殺害する。 サムが護衛して金貨が輸送されるというニュースが流されていた。ザックは自分への挑戦と受け取る。 標的となることを覚悟してトラックに乗り込むサム。 だが、ザックは裏をかいてサムの娘スーザン(バーバラ・ハーシー)を誘拐する。 輸送中何事も起こらなかったことから、サムもザックの作戦に気づくが遅かった。 追跡隊を組もうとするサムだが、電報を打って手配すればいいとか陸軍に頼めばいいとか現役保安官たちは気乗り薄。それでもザックが電話線を切っていることを知り追跡に参加する。 さらにスーザンの婚約者ハル(クリス・ミッチャム)も加わって追跡は開始された。 脱獄者の中にはザックの私怨に付き合う気はないと言い出すものも出るが、ザックは逮捕前インディアン居留地に隠した金の分け前をやると説得する。 女に目がないギャントに対し、ザックは若いシェルビーにスーザンを見張るよう命じて牽制するが、これも作戦であったことが後で分かる。 インディアン居留地に入ったザック。管理官たちは同じ血の流れるザックをかばってサムへの協力を拒む。 居留地内では権限のない保安官たちも引き返し、残ったのはサムとハルの二人だけ。 サムは銃の勝負でザックにかなわないことを知っていた。しかし、ザックは自分を一発では殺さず、なぶり殺しにしたがると考えていた。そこに出来る隙だけがサムの勝機なのだ。 サムが身近に迫ったと感じたザックは、サムが見ていることを確認し、スーザンをギャントたちに犯させる。 冷静さを失い飛び出そうとするサム。ハルはサムを殴り倒して押しとどめた。ハルはスーザンの命さえ助かれば何とかなるとサムを説得する。奸智にたけたザックの作戦が、現代的な割り切り方をする青年のために敗れるという、印象的な場面になっている。 サムは夜半に襲撃をかける決意をした。草原に火をつけザックたちを、あぶり出そうという作戦だ。 燃え上がる火の手に、逃げまどうならず者たち。サムは一人また一人と倒していく。 夜が明け三人になったザックは、サムを挟み撃ちにしようとする。 サムは弾を撃ちつくしたと油断させ、隠し持った銃でザックの腹心メネンデスを倒す。 シェルビーもハルが射殺した。 スーザンを見つけ出したサム。その首筋に岩陰から現れたザックが銃を突き当てた。 近距離での撃ちあいとなりザックはサムの手足を次々と撃ち抜く。だが、簡単に撃ち殺すのでは満足できない。サムの予想が当たったのだ。 「心臓をくり抜いてやる」ナイフを手に飛び掛るザック。サムはザックの胸を、隠し持った銃で撃ち抜いた。 叫び声とともにザックは崖下へと転落していくのだった。 邦題は決闘だが、実際は知恵比べの戦いが繰り広げられ、ちょっとマカロニ・ウェスタンを思わせるタッチも織り交ぜて楽しませてくれる。 犯罪者役は多いが、悪役として演じることの少なかった当時のコバーン。今回は見事な悪役ぶりを披露している。 余談その一=サム・ペキンパー監督、ジェームズ・コバーン主演によるスーツのコマーシャルが日本で放送されたとき、プールサイドで襲われたコバーンが悪党どもをプールに叩き落して去っていくというバージョンに対し、「西部劇の悪役俳優が演じた暴力的CM」と批判した自称映画評論家がいた。それだけ本作のコバーンが強烈な印象を与えたということもあるのだろうが、映画評論家とは肩書きだけでコバーンの出演作なんて他に見てないんだろうなあと、あきれた記憶がある。 余談その二=ジェリー・ゴールドスミスのスコアが、これまた良いのだが、サントラ盤は発売されず残念に思っていた。最近になってインターネットで本作の音楽が「駅馬車(1965年版)」「100挺のライフル」からの流用だったことを知った。見直しても場面と見事にマッチしており、感心することしきりだったりする。 余談その三=アンドリュー・マクラグレン監督は、ジョン・フォードの流れを汲む監督らしいのだが、大味な作品が多い。個人的には本作が最高作ではないかと思っている。 余談その四=原作者ブライアン・ガーフィールドの代表作は、チャールズ・ブロンソンの代表シリーズと化した「狼よさらば」の原作「DEATH WISH」。ちなみに本作の原作はフランク・ウィンという名義で刊行され、当初は「GUNDOWN」というタイトルだった。 |