原題 ; THE DAIN CURSE(1978)
 監督 ; E.W.スワックハマー
 脚本 ; ロバート・W・レンスキー
 音楽 ; チャールズ・グロス
 出演 ; ヘクター・エリゾンド、ジェイソン・ミラー、ジーン・シモンズ、ナンシー・アディソン
ダシェル・ハメットの原作を映像化したテレビ・ミニ・シリーズ。原作のコンチネンタル・オプをハミルトン・ナッシュと命名してジェームズ・コバーンが演じた。
360分あるらしい作品を1時間50分弱に再編集してソフト化されたのだが、3部からなる原作の第1部にあたる部分が完全にカットされている。そのため、「レゲット事件は終った。だが、俺の心には引っかかるものがあった」というモノローグからいきなり始まり、登場人物の関係も分からないままにストーリーが進んでいく。
一応ソフトのパッケージには、それまでのストーリーが書かれているが、テープだけレンタルした人はさぞかし戸惑ったことだろう。
事件が終わり旧友である作家オーエン(ジェーソン・ミラー)を訪れたナッシュ。だが、彼はレゲット事件の中心人物であるレゲット家の後継者ガブリエル(ナンシー・アディソン)をボディーガードするため呼び戻された。彼女は怪しげな宗教家アローニア(ジーン・シモンズ)の聖杯寺院にいた。
その夜、寺院に泊まったナッシュは何者かに一服盛られ意識が朦朧(もうろう)となるが何とか持ちこたえ、訪ねてきたガブリエルの婚約者エリックとともにガブリエルの元へ行く。
ガブリエルは血まみれで短刀を持ち、人を殺したという。
奥の祭壇にはリース医師の死体が横たわっていた。
ガブリエルは幼い頃母親を誤ってピストルで射殺したという過去があった。
ナッシュが侍女のミニーを呼びにいくとガスが充満していた。
エリックを殴って姿を消したガブリエルを探すナッシュ。
ガブリエルは発狂した教祖ジョゼフとともに祭壇にいた。ジョゼフは、妻であるアローニアを縛り生贄にしようとしていた。
短刀を手に迫るジョゼフをナッシュは射殺する。
リース医師殺人犯としてミニーが逮捕された。
教団の解体により事件は落着し、ガブリエルとエリックの結婚式が執り行われた。
だが、さらに事件は続いていた。エリックに呼び出されたナッシュがカサーダのホテルに到着すると、エリックはすでに出発していた。
翌朝、エリックを訪ねようとしたナッシュは途中の海岸でエリックの死体を発見する。
ガブリエルは姿を消していた。ナッシュはモルヒネの薬包を発見する。
友人の保安官ベン(ヘクター・エリゾンド)とともに捜査するナッシュ。彼は、エリックの父ヒューバートに改めてエリック殺人事件の捜査を依頼される。
そこにガブリエル誘拐一味の所在を知らせる密告があった。ナッシュを訪ねてきたオーエンも加わり、銃撃戦の末ガブリエルを救出した。
ガブリエルの生還は話題を呼び、ホテル周辺は記者であふれていた。そこに聖杯寺院に勤めていたフィンクが訪ねてきてナッシュは廊下で話をする。
そのとき爆発が起き室内にいたオーエンが重傷を負う。
ナッシュはホテルの一室でガブリエルに麻薬を絶たせる。
そこにアローニアがやって来た。ナッシュが真相を突き止めたと言うとアローニアは銃を抜くが、ナッシュが取り押さえた。
禁断症状に苦しむガブリエルを見かねたメイドが、こっそりモルヒネの薬包を渡す。だが、ガブリエルはこれを使わず、健康を取り戻す。
ガブリエルが自分の助力を必要としなくなったことが分かったときに見せる、嬉しさと寂しさの入り混じったナッシュの表情は味のある場面を作り出している。
オーエンが意識を取り戻し、ナッシュは病室に向かう。
オーエンが爆弾が投げかまれたときガラスの割れる音を聞いたと証言したことから、ナッシュは真相に気づいていた。
ホテルの窓には網戸が張られ、爆弾を投げ込むことは不可能だった。
爆弾はフィンクが持ち込んだのだ。事件の首謀者はオーエン。手下だったフィンクは、エリックの死で怖気づき、オーエン殺害を謀ったのだ。
聖杯寺院の黒幕もオーエンで、ジョゼフとアローニアを雇い信者から金を巻き上げていた。
連続殺人は、ガブリエルを独り占めしようとしての犯行だった。
5ヵ月後、オーエンが回復し裁判が開始された。裁判の中でオーエンもデイン家の血を継ぐ者だったことが明かされる。
参考人として呼ばれたナッシュは、オーエンが精神異常者だと証言する。
オーエンは精神病院へと送り込まれ、レゲット事件はついに終りを告げた。
ストーリーは荒っぽく分かりづらいが、どのように編集されているか分からないのでオリジナル版を見ないと評価できない。
DVDの時代も来たことだし、ぜひ完全版を発売して欲しい。
時代色を出すためかラグタイム風(正確な表現かどうか自信なし)の、のんびりして陽気な曲が使われ、ハードボイルド・ミステリーとしては緊張感を殺いでいるように感じた。
余談=ダシェル・ハメットの未亡人は本作のコバーンを観て亡夫に雰囲気が似ていると喜んだらしい。そういえば「ジュリア」でダシェル・ハメットを演じたジェーソン・ロバーズの輪郭も、コバーンに通じるものがある気がする。ダシェル・ハメットの容貌がなんとなく掴めたような。
デイン家の呪い