原題 ; FIREPOWER(1979)
 監督 ; マイケル・ウィナー
 脚本 ; ジェラルド・ウィルソン
 音楽 ; ガトー・バルビエリ
 出演 ; ソフィア・ローレン、アンソニー・フランシオサ、O.J.シンプソン
正体不明の黒幕を追うバウンティ・ハンターと謎の女を、それなりに豪華なキャスティングで描いたアクションだが、監督はチャールズ・ブロンソンとコンビを組み始めてタガが緩んできたマイケル・ウィナー。
切れ味にかける演出と、それにも増して出来の悪い脚本により、なんとも盛り上がらない作品になってしまった。
音楽は「ラスト・タンゴ・イン・パリ」やサンタナとの共演で知られるサックスの名手ガトー・バルビエリが担当した。テーマ曲は良いのだが、劇中の音楽は平凡だった。
ステグナー製薬の鎮痛剤にガンの後遺症があると証言していた医学者タスカ博士が手紙爆弾で爆死。
ステグナーは国外のアンティグア島に居を移し、当局の追及を逃れていた。
未亡人となった妻アデル(ソフィア・ロ−レン)は、復讐を決意。当局に引退した賞金稼ぎのジェリー・ファノン(ジェームズ・コバーン)を推薦した。
当局はファノンの恩人であるハイマン(イーライ・ウォーラック)と司法取引をして、ファノンを動かす。
ファノンには瓜二つの影武者エディー(ジェームズ・コバーン二役)がいた。
アデルはステグナーに保護を求めるふりをしてアンティグア島に潜入。
ファノンは金庫破りのキャトレット(O.J.シンプソン)を仲間に引き入れた。
アンティグア島に乗り込んで行動を開始するファノン。
ファノンとアデルは昔の恋人同士だったが、安定した生活を求めてアデルはタスカと結婚したのだった。
ごみ収集車で入り込み、ステグナー邸を撮影するキャトレット。
ファノンとキャトレットは屋敷に侵入して火を放ち、消防隊員に変装して邸内を探すがステグナーの姿はなかった。
ファノンは、敵を油断させるため自分に扮したエディをマイアミに発たせる。って、せっかくの二役がこれだけで終わり。どう考えても腰砕けの展開。しかもこの行動が何かの役に立ったとは思えない。
ファノンはステグナーの手下をサメに食わせると脅して、ステグナーと部下の集合場所を吐かせた。
ステグナーは、主治医で腹心のフェリックス医師(アンソニー・フランシオサ)たちとファノンへの対策を練っていた。
フェリックスが鶏闘に行くという情報を得たファノンは、会場からフェリックスをおびき出して捕らえた。
フェリックスを人質にホテルに押し入ったファノンとキャトレットは、ついにステグナーを捕まえた。
ステグナーの警備主任ゲルホーンはヘリで一行を襲撃。ファノンはステグナーを連れて水上飛行機で脱出したものの、クルーザーに残ったキャトレットは死にアデルは捕まってしまう。
ステグナーは政府に引き渡されるが、護送車が襲撃されステグナーは暗殺されてしまう。
だが、ファノンは服用していた薬品から殺されたステグナーが替え玉であったことを見破る。
キャトレットの死とアデルの誘拐を知ったファノンは、単身フェリックスの屋敷へと乗り込む。
フェリックスこそ本物のステグナーだった。アデルは、ずっと以前からフェリックスに正体を打ち明けられていた。
フェリックスの部下たちのジープとヘリに爆弾を仕掛けたファノンは、なぜか置いてあったブルドーザーで屋敷へと突っ込む。
フェリックスに銃を突きつけ、ジープを奪ってアデルと三人で屋敷を出るファノン。手下たちはヘリ、ジープ、馬で後を追う。先回りした手下が道をふさがずに、わざわざ後ろについてやられる場面があったりして、せっかくの見せ場が盛り上がらない。
さらに追ってきたジープは爆発。ヘリも吹き飛び、馬で追っていた連中も破片を食らってアウト。
水上飛行機に辿り着いたファノンに銃を向けるアデル。彼女から銃を受け取ったフェリックスはファノンを撃とうとするが、最後の瞬間アデルが寝返って妨害、すかさずマシンガンを拾ったファノンはフェリックスを撃った。
負傷したフェリックスを連れてファノンとアデルは水上飛行機で離陸、最後に残ったゲルホーンたちは桟橋に撒いたガソリンに信号弾で点火して退治した。
社交パーティで大富豪に近づくアデルの描写で映画は終る。
平板なストーリーなので、アデルを謎の女にして興味をつなごうとしたのかもしれないが、ヒロインの性格がはっきりしないのは大失敗。途中で敵に情報を漏らす場面があったりして、何が目的なのか分からなくなっている。復讐者という邦題が浮いてしまった。
余談その一=ラストに登場する大富豪役には往年の大スター、ヴィクターマチュアがカメオ出演。といっても活躍したのが1940〜50年代でなじみが薄いし、代表作『荒野の決闘」のドク・ホリデイは個人的には、らしくないキャラクターになってしまったと思っているので、あまりありがたみはない。
余談その二=撮影終了後、ジェームズ・コバーンはスタント・マン無しでの撮影がきつかったと発言して、それほどたいしたアクションしてないじゃないかと突っ込まれてしまった。もしかしたら持病のヘルニアが悪化していたのかもしれない。ジェームズ・コバーンのアクション映画での主演作は本作が最後となった。出来が悪いだけに、ものすごく残念。
余談その三=ソフィア・ローレンは本作のプロモーションのために来日、精力的にキャンペーン活動を行った。牛丼屋を舞台にした森光子主演のテレビ・ドラマ(確か「熱愛家族LOVE」だったと思う)にまで出演した。さすがに牛丼は食べず、道を聞くかなんかするだけだったように思うが、店の奥にはしっかりポスターが貼ってあった。ちなみに、この店の牛丼はつゆだくを先取りしていた。努力の甲斐あって、この作品は(出来栄えから考えれば)まずまずの成績を挙げた。
リベンジャー
ストーリーは基本的にラストまで
紹介してあります。
この作品はDVDが発売されているので
鑑賞が可能です。御注意ください。