原題 ; GOLDENGIRL(1979) |
監督 ; ジョセフ・サージェント |
脚本 ; ジョン・コーン |
音楽 ; ビル・コンティ |
出演 ; スーザン・アントン、レスリー・キャロン、クルト・ユルゲンス、ロバート・カルプ |
金と名誉のために選手を商品化するスポーツ界の裏側を描いたドラマ。 主演のスーザン・アントンは映画初出演だが、すでに日本では宝石のコマーシャルでブレイク、レコードも発売されていた。アメリカ本国より日本での人気が高かったと思われるのだが、それでも幻に終ったモスクワ・オリンピックが舞台とあって劇場公開はされなかった。 特訓を受ける長身のスプリンター、ゴールディーン(スーザン・アントン)。 彼女の父親セラフィン教授(クルト・ユルゲンス)を中心とするスタッフはスプリント3種目を制覇させ、1000万ドル稼ぐスター選手にしようと企んでいた。 そこで呼び出されたのが一流スポーツ・エージェント、ドライデン(ジェームズ・コバーン)。 ゴールディーンは心理学者サミー(レスリー・キャロン)のもと、優勝インタビューのシミュレーションまで特訓していた。 管理されすぎた状態に疑問を抱くドライデン。 なんとゴールディーンはオリンピック選考大会100メートルで予選落ちしてしまう。 彼女はショックを受けるが、突然アマチュア体育連盟の方針が変わり、次点の二人も入選となってゴールディーンは救われる。 理事にコネのあるドライデンが寄付と交換に交渉したのだ。 100メートル決勝ではフライングしてプレッシャーを受けるが見事優勝、オリンピック一次予選を通過する。 ゴールディーンは200メートル、400メートルでも決定戦進出を決めた。 ドライデンはプロのエージェントだが、理解できない相手とは組まない主義だった。 ゴールディーンは幼い頃から特訓を受け、反射的に対応する能力を身に付けていた。ドライデンには彼女がパブロフの犬のように思えた。 さすがのゴールディーンも、厳しい訓練の連続に嫌気がさすこともあったが、父セラフィンはまず勝利して多くの人々に愛されるようになれと説得する。 ドライデンは成長を促すためのホルモンの存在を知る。それは正常な人間に使用すると危険が伴うものだった。彼はセラフィンの目的が金ではないと見当をつけた。 セラフィンは、自分の娘を人間の強化に関する研究の材料にしていた。 ドライデンは論文の発表を2年間待つようにセラフィンに申し入れる。 ある日、ゴールディーンは身体の不調を訴えて寝込んでしまう。 400メートル決勝の直前、彼女の疲労は極限に達していた。それでもなんとか3位に食い込みオリンピック出場を決めた。 ゴールデンガールとして人気を上げ新聞・雑誌の表紙を飾るゴールディーン。 ドライデンは人間の成長を促進するセラフィンの研究について問いただす。 セラフィンは、ゴールディーンにホルモンを投与し続け、彼女はその副作用で膵臓を悪化させ糖尿病にかかっていた。 ゴールディーンは、あくまで研究の成果を第一とするセラフィンと決別する。 ゴールディーンを愛し始めていたドライデンは病気の治療を勧めるが、彼女はオリンピックを捨てない。 そしてついにモスクワ・オリンピック開催。 そこにTVスポーツのレポーター、スティーヴ(ロバート・カルプ)が現れた。彼はセラフィンを協力者にしてゴールディーンの秘密に迫ろうとしていた。 東ドイツのアーシュラも3種目制覇を狙っていた。彼女はゴールディーンのベスト・タイムを上回るタイムで予選を通過する。 だが、ゴールディーンはオリンピック記録を出して100メートル走を征する。 治療を受けながらレースを続けるゴールディーン。インシュリンの錠剤を飲まなければ命にかかわるほどの状態だった。 ゴールディーンは精神的に不安定になっていた。これも血糖値の乱れによるものだった。医師団もメダルに目がくらみ見て見ぬふりをしているのだ。 言動もおかしくなり、看護婦がメダルに触って自分のパワーを奪おうとしている、などど言い出す。 ドライデンとサミーは危惧して担当医に掛け合うが無視されてしまう。 スティーヴはセラフィンにインタビューして、ゴールディーン育成の裏にある金脈について聞き出そうとするが、科学の話ばかりするので噛み合わない。 200メートル走を世界記録で優勝するゴールディーン。 観客席にはセラフィンの姿があったが、すでに精神のバランスを崩しており警察官に拘束されてしまう。 400メートル決勝の直前、ゴールディーンはドーピングを疑うようなアーシュラの目つきを気にしてインシュリンを飲むのをやめてしまう。 意識朦朧となりながらも走るゴールディーン。ゴールと同時に気を失ってしまうが、それでも三冠を果たした。 優勝インタビューで訓練どおりの受け答えをするゴールディーン。 ドライデンは、結局セラフィンの敷いたレールを降りないゴールディーンに見切りをつけ、会場から姿を消すのだった。 ジェームズ・コバーンは、狂気に取りつかれた主要登場人物の中で冷静さを保ち続け、それ故に失望して去っていく男を好演している。 監督のジョセフ・サージェントは「サブウェイ・パニック」やテレフューチャー「アメリカを震撼させた夜」などで最も期待される監督の一人だったが、1970年代後半から失速。ジョーズ87/復讐篇」で底辺に達するが、その後はテレビ界で復調しているようだ。あまり観る機会がないのだが、「さらば愛しのキューバ」なんか悪くない作品だった。本作は多少下降線を辿り始めた時期で、ソツなくまとめてあるものの、もう一つ物足りない印象になっている。 昔読んだ原作(ノベライズだったかも)では、セラフィンがナチスの科学者で、人間改造計画に加担していたことが、より明確に描かれていたように思うの。遺伝子操作までいかない時代の作品で、ホルモン投与程度に終っているが、当時としては凝った設定だったのかもしれない。 |