原題 ; LOOKER(1981)
 監督 ; マイケル・クライトン
 脚本 ; マイケル・クライトン
 音楽 ; バリー・デヴォーゾン
 出演 ; アルバート・フィニー、スーザン・デイ、リー・テイラー・ヤング
「アンドロメダ」「未来警察」「ジュラッシック・パーク」など作家にして監督のマイケル・クライトンが脚本・監督を担当。
初めてCGを導入した映画と言われているが、映像的に斬新という印象はなかった。
有能な整形外科医にしてプレイボーイの主人公を性格俳優のアルバート・フィニーが演じている。上手い役者ではあるのだが、軽いアクション・スリラーには不向きな印象があり、ジェームズ・コバーンと配役が逆だったほうが娯楽作品としては面白くなった気がする。
ジェームズ・コバーンは抑制の利いた演技をしているが、悪役として強く印象を残す場面が設けられていないため不発に終ってしまった。
魅力的なヒーロー、魅力的な悪役の必要性を強く感じた作品。最終的には劇場未公開に終ってしまった作品だが、仕方ないかなとも思える。
整形外科医ラリー・ロバーツ(アルバート・フィニー)は、美人モデルの依頼でコンマ1ミリ単位の整形手術を施すこともあった。
ある日、クライアントの美人モデルが自室から墜落死する。部屋に隠れていたサングラスの男は、ラリーのペンとボタンを残して去っていった。
ラリーの元に刑事がやってきた。ラリーの患者で、微細な整形を行ったモデル二人が連続して死んだのだ。
調べると二人の物を含めた4つのカルテが紛失していた。
そこに4人のうちの一人ティナが、「完璧な女性は殺されてしまう」と言って現れた。彼女は身を隠して元の顔に再手術すると去っていく。
不審に思ったラリーがティナのマンションに駆けつけると、ベランダから彼女が落下してきた。
ラリーはティナの残したメモからデジタル・マトリックスという会社の存在を知る。
ラリーは、同様な手術を施したモデルのシンディ(スーザン・デイ)を伴ってCM界の大物ジョン・レストン(ジェームズ・コバーン)のパーティーに出席。出資の約束を取り付ける。
デジタル・マトリックスは、レストンのパートナー、ジェニファー・ロング(リー・テイラー・ヤング)が経営する会社だった。
シンディの撮影を見学するラリー。そこにはモデルの動きをコンピューターでチェックする新技術が導入されていた。
スタッフに勧められデジタル・マトリックスのテストを受けに行くシンディ。同行したラリーはジェニファーに施設を案内される。
デジタル・マトリックス社ではCM効果を最も上げる100パーセントのモデルを追及していた。整形手術によって完璧にしてもモデルの動きが加わってしまうとスコアが落ちるというのだ。
シンディは全身をコンピューターでスキャンされる。モデルのデータから数値を修正して完璧な立体画像を作り出そうとしていた。
夜になりラリーとシンディは盗み出したカードでデジタル・マトリックスに侵入する。そのカードでは、秘密がありそうなルッカー室に入ることは出来なかった。
二人は、夜間に無人で作業するメンテナンス用ロボットに乗ってルッカー室に入る。「ルッカー」とはCMにコンピューターのパルス信号を混ぜて視聴者に催眠効果を与える新技術。この技術を選挙運動に使えば、どのような人物でも当選させることが出来る。
敵の使う銃は、この催眠光線を発光して相手の視覚を狂わせてしまうものだった。そこに殺し屋が襲ってくる。ラリーは銃で視覚を惑わされてしまい相手の姿を見ることが出来ない。
殴られ続けるラリー。だが、ミラーのサングラスで光線を反射させて反撃。殺し屋を動けなくしてルッカー室を脱出した。
自宅に戻ったラリーが警察に連絡しようとすると、電話線が切られていた。今度は実弾で攻撃を受け、シンディが連れ去られてしまう。
警備員の制服を奪って「ルッカー」発表会場に乗り込むラリー。一旦は殺し屋に捕まるが逃亡、無人の撮影スタジオに忍び込む。
ここにはセットのみが置かれており、人物は全てコンピューター・グラフィックを合成するのだ。
観客席に映し出された映像にラリーが紛れ込んでいた。銃を手に殺しに向かうジェニファーを撃つラリー。さらに光線銃で動けなくなった殺し屋から拳銃を奪う。
殺し屋はレストンの撃った流れ弾で死亡。死体に載ったテーブルに平和な家族のCGが映し出され、観客が大爆笑するという、ブラック・ユーモアの画面が展開。
レストンはラリーに銃口を向けるが刑事に射殺された。
刑事も犯人一味と示す描写が途中にあるので、レストンは口封じに殺されたということなのだろうが、それだったらラリーを殺させてから撃ったほうがいいように思える。
どちらにしても真相が明らかになったわけでもないのに、ラリーとシンディが肩を抱き合って現場から立ち去ってしまうラストはヘン。
アイデアとしては面白い部分があるのだが、それに頼りすぎ、キャラクターを生かす工夫が足りなかったのではないだろうか。そのため凡庸なサスペンス映画に留まってしまった。
催眠光線によって現実が見えなくなった状態での戦い、という設定もアイデア倒れで、されほど面白い効果を上げていない。さらによく考えると、100%のCM効果をもたらすCGのモデルと、催眠光線のルッカー技術は全然別物。前半と後半の展開に整合性が欠ける気がする。
ルッカー