原題 ; MARTIN'S DAY(1984) |
監督 ; アラン・ギブソン |
脚本 ; アラン・スコット、クリス・ブライアント |
音楽 ; ウィルフレッド・ジョセフス |
出演 ; リチャード・ハリス、リンゼイ・ワグナー、ジャスティン・ヘンリー、カレン・ブラック |
「ハリー・ポッター」シリーズの校長役でも知られる故リチャード・ハリスが主演したカナダ映画。
地味な作品だが、きっちりした演出と充実したキャスティングで見応えのある佳作となった。 刑務所暮らしをする初老の男マーティン(リチャード・ハリス)は、懐かしい少年時代を過ごしたオンタリオ湖を訪れるのが夢だった。しかし釈放申請は却下されてしまう。 彼はアルコールを使ってわざと火傷を負い、自殺未遂で病院に収容される。 退院したマーティンは、隠し持ったガラス片を使い搬送中の護送車から脱走。さらにパトカーを奪う。 警官に見つかったマーティンは、たまたま近くにいた少年マーティン(ジャスティン・ヘンリー)を人質にしてしまう。 捜査を担当するのはラードナー警部(ジェームズ・コバーン)。 マーティン少年は隙を見て逃げ出し、民家に助けを求める。マーティンは、その家の子供を人質にして少年を奪い返す。 その頃、ラードナーは刑務所の担当医メニン博士(リンゼイ・ワグナー)と面会していた。ラードナーは、普段は知的だが衝動的な行動に出ることのあるマーティンを最悪の場合は殺す決意だった。 追い詰めては危険と判断したラードナーは、じかに追跡はさせず、警察無線を通じて交渉しようとするがマーティンは応じない。 ガソリン・スタンドで店主から金を奪い、その金でガソリン代を払って釣りを貰うエキセントリックなマーティン。普段は人のいい彼は、少年と交流を深めていく。 武装した警官隊が待ち伏せして、マーティンのパトカーを停めようとするが失敗。 マーティンはおもちゃの輸送トラックを襲って少年にプレゼントしたりする。 ラードナーは、マーティンに同情的なメニン博士の反対を押し切って狙撃手を手配。だが、確実な位置が確保できず実行できなかった。 途中で拾ったバックパッカーにパトカーを渡し、マーティンは元妻のカレン(カレン・ブラック)を訪れる。彼はオンタリオ湖行きにカレンを誘うが、カレンの反応は冷たい。彼女はマーティンの破滅を予感していた。 マーティンは、友達だから信用すると少年に一人でコーラを買いにいかせる。そのドラッグ・ストアに警官が入っていくのを見たマーティンは思わず逃げ出す。だが、少年はコーラを買って戻ってきた。 少年の、今度は電車が運転したいという言葉に、電車を乗っ取り少年に運転させるマーティン。 次に彼はカヌーを盗んで移動する。さすがのラードナーも、マーティンの意表をついた行動に困惑気味。 ついに思い出の湖畔に辿り着いたマーティン。だが、そこは開発され工場が操業し、かっての面影はない。それでも懐かしい小屋は残っていた。 そこには湖での再会を約束した、かっての刑務所仲間ブリューワーがいた。 そこにメニン博士が現れ自首をすすめる。そこにヘリでラードナーが到着した。ブリューワーが通報したのだ。 少年と小屋に立てこもるマーティン。ラードナーは投降を呼びかけると同時に狙撃手を配置する。 あえて人質として残ろうとする少年に、マーティンは自分が少年を撃てないことを警察は知っているから無駄だと言う。 少年は自分が面会に行くから自首してほしいと言い、死ぬ気なら自分で撃つと銃を向ける。そのとき警官の撃った発炎筒が小屋に飛び込み、少年の持った銃が暴発してしまう。 銃声に警官隊が踏み込むが、少年は腕に怪我したマーティンを乗せてカヌーを漕ぎ出していた。 これ以上の逃亡は無駄と知ったマーティンはカヌーを転覆させる。 ひっくり返ったカヌーの中に首を出した二人。必ず面会に行くと男の約束を交わすのだった。 脱獄囚と子供の交流を、男の友情というレベルに高めて描いたエンディングは味わい深い。 容貌魁偉(ようぼうかいい)ともいえる性格俳優リチャード・ハリスは、娯楽作品のヒーローを演じると違和感を感じることもあるが、今回の作品では的確な演技を見せている。 ジェームズ・コバーン演ずるラードナー警部は、主人公と交流を深める少年、同情的な女医のアンチテーゼとして描かれる。常に冷徹な判断を下し、射殺も辞さないという損な役回りともいえるが、軽妙さも併せ持ったコバーンの演技により厚みのあるキャラクターになっている。 とはいえ、やっぱり画面をさらうのは子役。「クレイマー・クレイマー」でアカデミー賞候補にもなったジャスティン・ヘンリーの達者な演技に目がいってしまう。 余談=アラン・ギブソンは、ハマー・フィルムでクリストファー・リーのドラキュラ映画を撮ったり、テレビ版「検察側の証人」を撮ったりした監督なのだが、残念なことに1987年に亡くなったらしい。ちなみにアラン監督の「新ドラキュラ/悪魔の儀式」は、私が映画館で観た唯一のクリストファー・リー=ドラキュラ物だったりする。 |