原題 ; TRAIN TO HEAVEN(1990)
 監督 ; トニー・アンデルバーグ
 脚本 ; トニー・アンデルバーグ
 音楽 ; ガンナー・エダンダー
 出演 ; カルロス・ロペス、ヒューゴ・アルヴェレス、テオドール・デ・ラ・トーレ
南米エクアドルで撮影されたスウェーデン映画という、ちょっと毛色の変わった作品。
監督・脚本のトニーのスペルはTORGNY。資料によってはトグニーになっている。
銀座のミニ・シアター(館名忘れた)で観た作品なのだが、その後ソフト化された形跡がない幻の映画。
両親を亡くしたニーニョ(カルロス・ロペス)は孤児院暮らし。
可愛がっていた犬のペリーを、頭の堅い神父に捨てられてしまう。
犬を捜そうと孤児院を飛び出したニーニョは、廃船(といっても大型船舶)に潜り込んで暮らしている異邦人グレゴリオ(ジェームズ・コバーン)を知り合う。
反骨精神の持ち主ながら、どこかC調なグレゴリオは、「君たち孤児には生きるために物を盗む権利がある」とニーニョに泥棒を教える。
さっそく盗みにいくニーニョだが、いざとなるとなかなか盗めない。まごまごしているうちに他の泥棒少年のあおりをくらって警察に捕まってしまう。
隙をみて警察署を飛び出したニーニョは、グレゴリオを頼る。
グレゴリオは、自分も不法滞在で警察からは隠れる立場と気弱な言葉。それでも、なけなしの金をはたいて脱出用にフェリーのチケットを買ってくれた。
海を渡ったニーニョは、アンデスの麓にたどり着く。山岳鉄道のポスターには、「天国への鉄道」のコピーが印刷されていた。
ニーニョは、そこに行けば死んだ両親に会えるに違いないと考え、列車に忍び込む。
列車は高地へと登り夜を迎え、凍てつく寒さとなる。
凍えたニーニョは、意識を失い動かなくなった。
だが、ニーニョは車両点検に来た車掌に発見され、一命を取り止めた。
子供のいない車掌は、ニーニョを引き取る決意をする。
こうしてニーニョは、家族を得ることができたのだった。
基本的には「汚れなき悪戯」などに通じる、純粋な少年を描いた物語だが、キネマ旬報の記事によると、既成の権威や宗教概念への批判を込めた作品となっている。
確かに少年に救いの手を差しのべるのは、世の中の決して上の方にはいない人達で、神父や警察は追い詰める側として描かれている。
とすれば、力は持たないながら、権力へのささやかな抵抗を試みて生きるグレゴリオは、監督自信を投影したキャラクターなのかもしれない。
ジェームズ・コバーンは、C調で頼りないけど憎めないという得意のキャラクターに渋みを加えて好演している。
演出自体は良く言えば朴訥だが、洗練されたものではなく、全体的に野暮ったい印象が残る。
とはいえ、いたいけな少年の姿が胸を打つのも事実で、もう一度見直してみたい作品。
夢見るように微笑んで