原題 ; THE AVENGING ANGEL(1995)
 監督 ; クレイグ・バクスレー
 脚本 ; デニス・ネメック
 音楽 ; ゲイリー・チャン
 出演 ; トム・ベレンジャー、チャールトン・ヘストン、ジェフリー・ジョーンズ
モルモン教徒の内部抗争をテーマにしたテレフューチャーのアクション西部劇。というだけでも異色作なのだが、しかもハードボイルド・タッチで描かれている。
西部へと移住してきたモルモン教徒たち。
その指導者はブリガム・ヤング(チャールトン・ヘストン)。
彼らは迫害する政府軍に対し、通称・報復の天使と呼ばれる民兵団を結成、勇者ポーター・ロックウェル(ジェームズ・コバーン)とともに戦いを繰り広げた。
マイルズ・アトレー(トム・ベレンジャー)は少年時代から、この組織に仕える兵士だった。
そして1872年、マイルズは裏切り者パーカーを暗殺した。
教徒の集会に暗殺者が紛れ込みブリガムを狙うが、気づいたマイルズが射殺した。だが、彼は暗殺者の正体を見極める前に何者かに殴られ気絶してしまう。
気づいたマイルズは、暗殺者の銃が見つからなかったことから糾弾される。ユタが州として認可されるかどうかの微妙な時期だった。
襲われ負傷したマイルズは、有力者リグビーの妻エライザ(レスリー・ホープ)に助けられる。そこで彼はリグビーとブリガムの息子アルフィスが密談していることを知る。
その夜、マイルズは、アルフィスとその部下が暗殺者の死体を掘り起こしているところを見つける。暗殺者は女だった。
そこに現れたポーターは、始末を上の者に任せて逃げていろと言い去っていく。
マイルズは事件の真相を調べようとするが逮捕されてしまう。
ブリガムの娘ミランダとエライザが面会に来て銃を渡す。次に現れた警備隊長ロング(ジェフリー・ジョーンズ)も銃を渡し、彼を脱獄させ東部から来た二人組の暗殺者を調べるよう指示する。
ロングの指示通り酒場にいくと、それは罠でアルフィスたちが襲ってきた。マイルズはランプを撃ち火を放って窮地を脱する。
彼は一旦実家に身を潜めるが、アルフィスが単身襲ってきた。マイルズはやむを得ず、このブリガムの息子を射殺する。
マイルズはポーターを探すことにする。信用できるのは、もはやポーターだけだった。もし彼が裏切り者ならばブリガムはすでに命を落としているはずだ。
男装したミランダが現れアルフィス殺しのため追っ手を放たれたことを告げる。二人は追撃を受け、マイルズは追撃隊を撃退するが、ミランダは負傷してしまう。
マイルズは山奥に隠れていたポーターに会う。兵士である彼はマイルズ暗殺命令を受けることを恐れ身を隠していた。
集会場の暗殺者はアルフィスの母サラだった。権力志向の強い彼女は、夫であるブリガムにないがしろにされたため、陰謀に加担したのだ。
渡された銃に細工がしてあったことからロングも一味と気づいた二人は、警戒厳重なロング邸に乗り込んでいく。
囮となったポーターは銃弾を浴びて落馬するが、着込んだ鎧で無事だった。
ロングはリグビーと手を組み教団を乗っ取る計画だった。パーカーは誘いを断ったので、マイルズに命じて裏切り者として殺させたのだ。
逆に銃を突きつけたロングはマイルズを連行したと見せかけてブリガムと面会し二人を殺そうとする。
だが、すでにブリガムは真相に気づいていた。彼は自分がベルトに銃を挟んでいることをマイルズに知らせる。
マイルズは、その銃を抜いてロングを倒した。
マイルズはリグビー逮捕に向かう。すでに正気を失っているリグビーが発砲する。弾はそれ、エライザの肩に当たった。
もう流血による解決はしないと誓ったマイルズだったが、激昂してリグビーに銃を突きつける。だが、エライザの静止を受け思いとどまるのだった。
入り組んだ人間関係を主人公が解き明かしていくあたりが、ハードボイルド調。一夫多妻のモルモン教をテーマとしているので、なかなかややこしい。
ハードボイルド探偵物によくある主人公が殴られて気絶する場面が2ヶ所あるのもご愛嬌。
テレビ用の作品ということで時間の制約もあると思われ、展開が駆け足になって未消化な印象を与える部分もあるが、なかなか見ごたえのある娯楽作になっている。
ジェームズ・コバーンは、サムソンの髪のように、髭を剃ったら神通力を失うというジンクスを持った伝説的老雄を快演している。出番は少なめだが儲け役。撃たれて落馬しながらムックリ起き上がって鎧を脱いでみせる人を食ったキャラが、いかにもコバーンらしい。
沈黙の大地