原題 ; THE SECOND CIVIL WAR(1997)
 監督 ; ジョー・ダンテ
 脚本 ; マーティン・バーク
 音楽 ; ヒューミー・マン
 出演 ; ボー・ブリッジス、ジェームズ・アール・ジョーンズ、ダン・ヘダヤ
「200X年、アメリカ合衆国壊滅!」「近未来震撼サスペンス・アクション!」をキャッチコピーに売り出されたが、アメリカが無責任な政治家たちによって内戦を引き起こしてしまう姿を描いたテレフューチャーのブラック・コメディ。
コピーやジャケットのイメージ(破壊された自由の女神の場面は確かにあるのだが)で緊迫したポリティカル・フィクションを期待すると、はぐらかされた気分になる。
パキスタンがインドの核攻撃を受け大量の難民が発生。アメリカ大統領はパキスタン難民受け入れを表明したが、アイダホ州知事ジム・ファーリー(ボー・ブリッジス)は雇用問題の悪化などを理由にこれを拒否、州境を武装閉鎖した。
大統領のロビイストとしてジャック・バキャン(ジェームズ・コバーン)が招集され対策が検討される。バキャンは行動しているフリだけして何もしないのが最善の策と吹き込む。
ファーリーは、革新派から多数を占める保守派に寝返って成功した人物。しかし、今は惚れ込んだ美人レポーター、クリスティーナ(エリザベス・ペーニャ)のことで頭が一杯。政治どころではない。
一方、テレビ局でも熾烈な報道合戦が展開、ニュース・ネット局ではヴェテランのジム・カーラ(ジェームズ・アール・ジョーンズ)が動き出していた。
ファーリーは戦災孤児受け入れ拒否の演説をぶつが、メキシコ生まれのクリスティーナの反感を買いメロメロになってしまう。
事態はさらに悪化、サウスカロライナは難民船入港を拒否。各地で人種問題が発生していた。
沈黙を守る大統領にニュース・ネットのメル・バージェス(ダン・ヘダヤ)は陰謀を感じる。実は大統領には確固たる信念がなく、バキャンの提示したルーズベルト模倣作戦で動いているだけだった。
ニュース・ネットではペンタゴンの赤外線写真を解析、軍事作戦部門の活動が活発化していることを突き止める。
大統領は72時間の期限を切ってアイダホに事態収拾を迫る。バキャンの見解によると72時間後は人気不倫ドラマ「愛欲の涯てに」が放送中。放送中止になれば大量の女性票を失うと進言。大統領は期限を67時間半に変更した。
大統領がアイダホの宣戦布告に対する表明を行っているとき、ファーリーはクリスティーナに駆け落ちを切り出していた。
アイダホ州境では州兵が戦車まで持ち出す。バージェスは事件を第2次南北戦争としてアピールすることにした。
州境には連邦軍、州軍、市民兵が集結、その頃ファーリーはクリスティーナの尻を追いかけていた。
ロス市長の会見が行われる。メキシコ出身の知事による表明は気高いものだったが、人種差別主義者のテロ攻撃を受け会場は混乱に陥る。
一方、ニュース・ネットは視聴率稼ぎに孤児たちを使おうと、子供たちを州境に送り込む。
州境では連邦軍と州軍の司令官が対面していた。音声が伝わらないので大統領と側近たちは名場面と感動するが、実は湾岸戦争の功績をめぐってののしり合っているだけだった。
テキサスではアラモ砦の遺跡がメキシコ移民の焼き討ちにあい、緊張が高まる。
スー族もアイダホ州境近くの居留地閉鎖を表明、大統領は懐柔策としてインディアン向けカジノの建設を決定する。
国会は民族間の駆け引きの場と化していた(アラバマ州知事がターバンを巻いたインド人だったりする)。
その頃ファーリーはクリスティーナの妊娠を知り感動していた。
バキャンは大統領を「国民は負け犬を嫌う」とあおる。事態は切迫していた。このまま長引けば「愛欲の涯てに」の放送時間に重なってしまうのだ。
州境にいるレポーター、ヴィニーはモンタナ、ノースダコタなどの他州が州兵を派遣していることをスクープ。内戦の様相はさらに高まる。
ついには中国出身のロードアイランド知事まで中国人難民受けれ拒否を表明、ファーリー支持に回った。
さらに「ファーリー愛国同盟」を名乗るテロ組織により自由の女神が爆破された。
一方、連邦軍では内戦を恐れる兵士たちの反乱が勃発、上官が射殺される事態となる。
反乱兵は即座に銃殺刑となり、ショックを受けたアナウンサーが騒ぎ出してテレビ局も大混乱。
バキャンは、ファーリーがアイダホ州のアメリカ離脱を決意したという情報を入手。怒った大統領は攻撃を開始する。
実はファーリーは政治も妻も捨ててクリスティーナとの愛に生きることを決意していた。バキャンは、ファーリーが退陣するという情報をアメリカ離脱と勘違いしたのだ。その事実を知ってもバキャンは「ここほひとつなかったことに」と涼しい顔。
テレビの画面には米国民同士の殺し合いが映し出されていた。
その後事態は沈静化へと向かい、時刻を遅らせて放送された「愛欲の涯てに」は最高視聴率をマークしたのだった。
製作には「レインマン」のバリー・レヴィンソンも名を連ねているが、政治の裏側を描いたブラック・コメディーとしては彼が監督した「ワグ・ザ・ドッグ」よりも好きな作品。
ジョー・ダンテの方が毒のある演出に長けているということかもしれない。
政府に対立して立ち上がるが、実際には愛人問題で頭が一杯の州知事。勢いだけで、まともな政策を打ち出すことの出来ない無能な大統領。一見貫禄ある大物だが、実はC調でいい加減、アメリカを内戦へと引き込むロビイスト。アクが強くて困った登場人物の描写が面白い。
ジェームズ・コバーンも得意な役柄を余裕で演じている。
ジェームズ・アール・ジョーンズは、モノローグも担当、事件を客観的に見つめる冷静なジャーナリストの役だが、マトモすぎて他のキャラクターに比べると印象が薄い。
セカンド・インパクト