原題 ; Mr.MURDER(1998)
 監督 ; ディック・ローリィ
 脚本 ; スティーヴン・トールキン
 音楽 ; マーク・スノウ(テーマ曲)、ルイス・フェブル 
 出演 ; スティーヴン・ボールドウィン、ジュリー・ワーナー、トーマス・ヘイデン・チャーチ
ディーン・クーンツ原作によるテレビ・ミニシリーズ。WOWOWの放送で前後編の完全版を観たこともあるのだが細部は忘れてしまったので、今回は編集版のビデオ・バージョンからストーリーを紹介する。
作家のマーティ・スティルウォーター(スティーヴン・ボールドウィン)は、娘が怪我をしたときに、病院で血液サンプルを感電事故死した水泳選手のものと間違えられてしまう。そのサンプルはドルー・オスレット・シニア(ジェームズ・コバーン)の手に渡った。
血液中のDNAからクローン人間の超戦士を作り出そうという極秘プロジェクトだった。
3年後、クローン人間アルフィーは成長し、ドルーの息子ドルー・オスレット・ジュニア(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は彼を冷酷な戦士に仕立てようとしていた。
危機感を覚えた将軍はプロジェクト中止を決定。ジュニアは将軍を殺してアルフィーを連れ去ってしまう。
ジュニアは、「心に平和を」という言葉をキーワードにして、アルフィーが命令に服従するよう条件付けをしていた。
アルフィーは成長が早く、怪我を瞬時に直してしまう超能力を持っている。
早くも成人したアルフィー(スティーヴン・ボールドウィン二役)は、ジュニアの命令で動く暗殺者として働いていた。
マーティとアルフィーは、ときおり互いの体験したことを見るようになる。
空港でアルフィーはサインを求められたことから、自分と同じ顔をした作家マーティの存在を知る。彼はマーティの元に向かう。
ジュニアは脱走したアルフィー追跡を開始する。
アルフィーはマーティの留守宅に忍び込む。彼は、マーティのように小説をタイプし始めるが、うまく書けずパソコンを破壊する。
そこに本人が帰宅。壊れたパソコンと血に驚いたところに銃を持ったアルフィーが現れた。
自分の記憶がないことに疑問を持っていたアルフィーは、マーティがロボットで自分の人生を奪うために仕掛けられた罠だという妄想に取りつかれていた。彼は子供たちを取り返す気でいる。
隙を突いてマーティはアルフィーを撃つ。重症を負いながらもアルフィーは逃げ出した。
揉みあいとなりアルフィーは吹き抜けから落下、それでも起き上がる彼にマーティはさらに銃弾を撃ち込む。
だが、それでもアルフィーは姿を消してしまう。ここまで不死身だとクローン人間がどうとかいうレベルを超えてしまっている。
マーティは、自分に双子の弟がいたのかと考えるが、自分が二重人格である可能性も捨てられない。
二人の娘エミリーとシャーロットは知人ヴィクターの家に避難するが、マーティに成りすましたアルフィーが迎えに来た。
マーティは、アルフィーと娘たちの乗った車を見かけ追いかける。偽者を見ていないペイジは、ますます彼の精神状態を疑い始める。
公園の迷路でエミリーとシャーロットは逃げ出す。アルフィーはペイジを騙して娘を呼ばそうとする。服が違うのだが、動転しているのかペイジは気づかない。
娘たちを見つけたペイジ。本物のマーティも現れるが、そこにアルフィーが銃を突きつける。マーティが飛び掛ってなんとか脱出。
娘たちのほうが冷静で偽者を見分けられたりする。
翌朝、新聞がマーティに殺人容疑がかけられていると報じた。アルフィーは指紋まで同じらしい。
アルフィーはマーティの思考を探り居場所を突き止めようとしていた。
そのころドルーもサンプルが間違っていたことに気づいていた
息子のふりをしてマーティの両親を訪ねるアルフィー。彼は自分が記憶を盗まれたという奇妙な話をして、マーティの両親を混乱させる。そこにマーティ本人から電話が入ってしまう。
ガソリンスタンドでジュニアに見つかったマーティはとっさにアルフィーのふりをした。
一方、アルフィーも入れ替わって家族の車に乗り込む。
ジュニアに銃を突きつけ真相を聞きだそうとするマーティ。ジュニアは彼がマーティだとなかなか気づかない。ジュニアは自分の狂った理想を押し付けようとする。マーティはジュニアのハンディ・コンピューターを奪ってペイジの元に向かう。
一方ペイジたちは、アルフィーを疑い始めていた。隙を見て家から逃げ出す。そこに駆けつけたマーティと共に廃工場に逃げ込んだ。
ドルーは息子の暴走を止めるため、真実を暴露する決心をした。だが、彼はジュニアの放った殺し屋に射殺されてしまう。
マーティがコンピューターのパスワードをとく、そこに両親殺害のニュースが送信されてきた。
アルフィーはペイジに撃たれるが、それでも死なない。
取っ組み合いになったマーティとアルフィーに娘が銃を向ける。
マーティーは、物陰に身を潜めて銃を構えるジュニアに気づいた。彼は、わざと偽者のふりをしてジュニアにアルフィーを撃たせる。
次にマーティはジュニアに掴みかかるが、あっさり張り倒されてしまう。
娘たちを救おうとアルフィーはジュニアに飛び掛る。二人は窓を突き破って落下。ついにアルフィーも完全に息絶えるのだった。
それから2年後、暗殺事件が解明され、関与した上院議員や実業家の名前も公表された。巻き込まれたスティルウォーター一家は消息不明だという。
洋上を行くヨットにマーティ一家の姿があった。彼らは名前を変え偽名で出版を続け世界を旅していた。
原作は読んでいないのだが、クローン人間が急成長する理由を、どう説明しているのか気になった。
記憶のないクローン人間が、アイデンティティーを確立するために、オリジナルの人間の生活を自分のものにしようとするアイデアは悪くない。この部分が、もっと丹念に描かれていればラストが効果的になったと思う。
スティーヴン・ボールドウィンは、どちらかというと緊張感に欠けた顔つきなので、この手のアクション・ホラーには不向きではないかという気がした。
ジェームズ・コバーンは、息子の暴走を止めようとする、意外と良心的な実業家を貫禄ある演技で見せるが、役柄自体中途半端な印象。せっかくなら真の黒幕、というくらいのインパクトあるキャラクターを演じてほしかった。
Mr.マーダー