原題 ; NOAH'S ARK(1999) |
監督 ; ジョン・アーヴィン |
脚本 ; ピーター・バーンズ |
音楽 ; ポール・グラボウスキー |
出演 ; ジョン・ボイト、メアリー・スティーンバーゲン、F.マーリー・エイブラハム |
ノアの箱舟のノアは滅亡したソドム市の生き残りでもあったという、テレビ・ミニシリーズ。冒頭に聖書の物語を大幅に脚色したというテロップが出るが、かなりの珍作と化している。 ソドムとゴモラ2つの都市間で戦いが続いていた。荒地での合戦シーンから始まるが、なぜか野次馬のほうが人数が多い。 戦はソドムの勝利に終わり、盛大な祝宴が開かれる。信心深いノア(ジョン・ボイト)は騒ぎに興味がなく戦場を去っていく。 妻ナーマ(メアリー・スティーンバーゲン)と3人の息子シェム、ヤペテ、ハムは父の帰還を喜ぶ。その夜、ノアは神のお告げを聞き、トポク山頂へと向かう。 山頂で神は堕落したソドムとゴモラを火と硫黄で滅ぼすと告げる。家族を連れてソドムを去れと言われても半信半疑なノアに、神は火山を爆発させて力を示す。 神は、ノアがソドムで正しい者を十人見つけられたら滅ぼすのをやめると約束した。 ノアは親戚だからという理由でロト(F.マーリー・エイブラハム)を、その妻だからという理由でサラ(キャロル・ケイン)を無理矢理選ぶが、他には心当たりがない。 知り合いの中にいないから、市中に正しい者がいないという理屈はおかしいと思うが、とにかくソドムの滅亡は決まった。 ノアはロトにもソドムを去るよう勧める。 リアカーに家財を積みソドムを出るノア一家。決して振り向いてはいけないと神に言われていたノアは子供たちに目隠しをした。 ソドムでは戦勝を祝って乱痴気騒ぎが始まっていた。そこに次々と火の玉が墜落してくる。火に焼かれ逃げまどう市民たち。 金持ちどもの焼かれる姿を見たいとサラは、ロトの制止を聞かず振り返って塩の柱となった。 ノア一行は途中で旅の商人(ジェームズ・コバーン)に出会う。ソドムの滅亡を知った商人は、宗教に手を出すもんじゃない。世の不幸の原因は神が金を十分に作らなかったからだと言う。 ゲラルに着いたノアは農民となる。 十年が経ち、3人の子供たちは立派な青年になった。 町ではハムの恋人ルツが雨乞いの生贄にされようとしていた。3兄弟は神殿に殴り込む。3人は捕まるが、ノア夫婦が現れると神の怒りが炸裂、神殿の屋根が飛び、神官たちは目がつぶれた.。 気に強いルツを演じるシドニー・(タミーア)・ポワチエは名優シドニー・ポワチエの娘。 神はノアに箱舟の建造という新しい使命を与える。 船は次第に出来ていくが、山間の農地で船を作るノアを町民たちは笑い者にする。 ノアが神に人手不足を嘆くと、翌朝には全ての木材が用意されていた。 そんなある日、ロトが現れる。彼は盗賊団の首領となっていた。 箱舟が完成に近づいたとき、神は40日間にわたる洪水で全てを押し流すと宣言する。地上の全てを作り変えるというのだ。 やがて箱舟の元に世界中の動物がひとつがいずつ集まってくる。動物たちの餌も神が用意してくれた。 町民たちは雨が降らないのはノアのせいだと騒ぎ彼に詰め寄る。そこに豪雨が降り出した。 船出の準備を始めるノア一家。彼ら以外に神が乗船を認めた人間は、息子たちの恋人3人だけだった。 全能なる神の力を見よ!神は高らかに宣言し全世界が水没した。 ある日、一家は足漕ぎボートに商品を積んだ旅の商人と再会する。今や金に価値なんてない。物々交換して生きてる、という商人は食料を手に入れにこやかに去っていく。 動物のフン始末の日々に3兄弟の不平はつのる。しかも船上ではエッチ禁止だった。人も動物も、大地に着くまで増えてはならないと神が決めていた。 箱舟を海賊の船団が襲う。首領はロトだった。仕方なく戦いを始めたノアだが、多勢に無勢で不利になる。 しかし動物たちに驚いたロトたちは船に逃げ戻った。ロトは火球を放って再攻撃。その時、巨大な竜巻が発生して海賊たちを飲み込んでいった。箱舟以外の全ての生物が滅びた瞬間だった。 神は箱舟も滅ぼそうかと考えてると言い出す。狼狽するノア。 船は彷徨(さまよ)い続け、試しに投げ捨てたビンが戻ってきたことから、一家は船が同じ場所を旋回していることを知る。 息子たちが進路を神まかせにするノアにさからい、舵を作ろうとしてもめる。 家族が皆奇矯な行動をとり始めた。ノアは発作を起こして倒れ、ハムは船長となって支配する妄想を抱く。ナーマまでもが全能の神を名乗り始める。白塗りでサル芝居するスティーンバーゲンが情けない。 ノアは大地を探そうとカラスを放つが、すぐの戻ってきてしまう。 神は箱舟も滅ぼすことにしたとノアに宣告。動転したノアは突然踊りだす。「赤い激突」の宇津井健かと突っ込みたくなる迷場面だが、神は大喜びで「お前はまたしても私の心を打った」と言って滅ぼすのをやめ、鳩を放つように啓示を与える。カラスは不吉な鳥だから放っても良い結果が出ないのだとか。 飛び立った鳩が枝を咥えて戻ってきたことから、一家は陸地が近いことを知った。 ついに箱舟は陸地に到達。断崖絶壁の間を流されていく。 舟は崖に引っかかるようにして停止した。動物たちは、それぞれの生きる場所を目指して去っていく。息子たち3組も結婚して独立、旅立っていく。 祈りを捧げるノアに、神はもう直接人間に手を下すのはやめにして見守ると約束するのだった。 もともと「ソドムの市」と「ノアの箱舟」の物語は、神の御技とは思えない残虐なエピソード。映像で見せられても、やっぱり納得いかない。ノアの息子に娘を託す母親の姿が描かれたりするので、ますますやりきれなくなる。 声だけで登場する神様も言っていることが妙に人間ぽいというか、あまり賢そうに聞こえず、全知全能には程遠いイメージになっている。 ジェームズ・コバーンは、前後編のそれぞれ序盤に登場。2シーンのみのカメオ出演だが、持ち前の軽妙な演技を生かして飄々としながらも、たくましく生きる自由な老人を演じ、この作品では一番魅力あるキャラクターになっている。 |