原題 ; THE MAN FROM ELYSIAN FIELDS(2001) |
監督 ; ジョージ・ヒッケンルーバー |
脚本 ; ストリップ・ジェイソン・ラスカー |
音楽 ; アンソニー・マリネリ |
出演 ; アンディ・ガルシア、ミック・ジャガー、ジュリアナ・マルグリース |
才能はあるが売れない作家の浮き沈みを描いた、地味だが完成度の高いドラマ。 「エゴイスト」のタイトルは内容にそぐわないし、面白みもない。もう少し気の利いたタイトルは思い浮かばなかったのだろうか。 パサデナで暮らす売れない作家バイロン・ティラー(アンディ・ガルシア)。7年がかりのスリラー「ヒトラーの息子」も全く売れず投げ売りコーナーに積まれたまま。妻ディナ((ジュリアナ・マルグリース)と幼い子供をかかえて苦しい生活だった。B級映画の脚本で食いつないでいる状態。 新作は編集者につき返されてしまった。 そんな時バーでルーサー・フォックス(ミック・ジャガー)という男と知り合い。彼の経営する会社エリジャン・フィールズに誘われる。 金に困ったバイロンは以前勤めていた広告代理店に復職を願い出るが、辞めるとき喧嘩していたため拒否される。 ディナの勧めで義父に金を無心するがクズ扱いされてしまう。 バイロンはルーサーのが経営する会社エリジャン・フィールズの話を聞く。仕事はエスコート・サービス、平たく言えば出張ホストだった。 バイロンはは悩み続けるのだが、相手がピューリッツア賞3回受賞の作家トバイアス・オルコット(ジェームズ・コバーン)の妻アンドレア(オリヴィア・ウィリアムズ)と聞いて心を動かされる。 結局、ディナには嘘をついて出かけていく。服や装飾品は会社が高級品を用意してある。 初回はアンドレアとチャリティーのオペラを鑑賞するだけだった。 次は前衛舞踏。今度は自宅に招待された。トバイアスは病気が悪化して弱っているのだという。 結局、バイロンはアンドレアと寝てしまう。最中にガウンを来たトバイアスが入ってくるが、動じるふうもなかった。 バイロンは妻への罪悪感で一睡も出来なかった。 翌日、彼はトバイアスに招かれる。アンドレアに男を作れと勧めたのはトバイアス本人だった。 トバイアスは完成間近の作品をバイロンに渡す。12年をかけて書いたという作品は失敗作だった。 アンドレアは、夫に名声を傷つけられることなく死んでいかせたいのだという。 トバイアスは、バイロンに酷評されて激怒する。バイロンは、ローマ帝国を舞台にした作品を、同じテーマで現代の季節労働者を主人公に書き直すよう勧める。 ルーサーはジェニファー(アンジェリカ・ヒューストン)という女性と付き合っていた。じつは本気で、夫と別れてくれと求婚するが相手にされない。 バイロンは、トバイアスから共著での書き直し協力を依頼される。生活は楽になったが、家にいる時間が減り、ディナは孤独をつのらせる。 バイロンは精力的に作品を書き続けるが、トバイアスの病状は悪化していく。出来上がった作品は傑作だった。 その夜、バイロンがアンドレアと寝ようとしているとトバイアスが現れた。今日だけは一人でいたくないと言ってアンドレアと寝る。 嫉妬心を感じながらバイロンが自宅に戻ると、ディナはエリジャン・フィールズの名刺で夫が何をしていたか気づいていた。彼女は怒鳴って出て行ってしまう。 一方、失意のルーサーは引退を決めていた。 トバイアスは、作品を死後に発表すると決めた。 やがてトバイアスが死ぬと、アンドレアは作品からバイロンの名をはずすと言い出す。 口約束だけのバイロンには打つ手がなかった。トバイアスの遺作が出版される中、ホスト稼業を続けていたバイロンだが、先輩ホストを同伴するアンドレアと出会ったことをきっかけに廃業した。 行きつけのバーで店員として再起を図っているところにディナがやってくる。だが、ヨリを戻すことはなかった。今は子供と実家の近くで暮らしているという。 一年後、バイロンは妻との別れを描いた作品「転落」でベストセラー作家の仲間入りをした。 深い後悔の刻まれた著作の朗読会にはルーサーの姿もあった。やがてサイン会が始まると客に混じってディナが現れる。彼女は本の内容を直接聞きたかったと涙する。 二人が歩いていく後姿を見送ったルーサーは一人闇の中に去っていった。 充実したキャスティングが魅力で、内容的にもしっかりしている。劇場未公開に終わったのが残念な作品。 ジェームズ・コバーンは、深みのある演技で死期を悟り才能の枯渇を感じながらも執筆活動を続ける文豪を演じ切っている。 文豪との共著というチャンスに我を失ってしまうアンディ・ガルシアの主人公ぶりも良い。 天使のような女性と言われながらも主人公を使い捨てにするヒロイン(強いていえば、このキャラクターがエゴイストか)を演じる「シックス・センス」のオリヴィア・ウィリアムズも魅力的。 エスコート・サービスの元締めをミック・ジャガーが演じているのも面白いが、先輩ホストを演じているのは元シルバーヘッドのヴォーカル、マイケル・デ・バレス。ロザンナ・アークエット、ナスターシャ・キンスキー共演(エロチック映画だが2人のヌード・シーンはない)の「セックス・ダイアリー」では色情狂の男を熱演していた。 |