原題 ; AMERICAN GUN(2002) |
監督 ; アラン・ジェイコブス |
脚本 ; アラン・ジェイコブス |
音楽 ; アンソニー・マリネリ |
出演 ; ヴァージニア・マドセン、バーバラ・ベイン、アレクサンドラ・ホールデン |
ジェームズ・コバーンの遺作となった作品。娘の生命を奪った一丁の銃をめぐる、父親の苦悩を描いた秀作。 マーティン・ティルマン(ジェームズ・コバーン)は子供の頃祖父の軍用拳銃に触れ、16歳のとき兵役で初めて銃を撃った。 今は妻アン(バーバラ・ベイン)との田舎暮らし。彼は、いまだに戦場の悪夢にうなされていた。 クリスマスも近い頃、娘のペニー(ヴァージニア・マドセン)が帰郷してきた。孫のミア(アレクサンドラ・ホールデン)は家出して行方が分からなくなっていた。ペニーの離婚が原因だった。 マーティンはペニーを、ミアがじきに見つかると励ます。 翌日、仕事中のマーティンをミアが訪ねてきた。金を渡した彼は、母子で話し合うように勧めるがミアは聞き入れない。 その夜、買い物帰りのペニーは駐車場で二人組みの強盗に襲われ銃を突きつけられた。 娘の死に悲しむ老夫婦。葬儀が終わっても、ペニーの残したクリスマス・プレゼントで悲しみが甦る。 マーティンは事件の新聞記事を切り抜き、天国のペニーに手紙を書く。彼は長期休暇を取って事件について調べ始める。 警察の捜査は終了した。マーティンは証拠品の銃を引き取り、製造元の工場を見学する。 工員の中にも娘を銃犯罪で失った者がいた。 マーティンはシリアルナンバーから、銃の最初の持ち主を辿っていく。出荷先の銃砲店では娘が死んだと聞いて内密に販売先を教えてくれた。 銃の最初の持ち主はジャスミンという女性だった。彼女は異常な殺人者に捕まり車のトランクに押し込められたが、その銃で犯人を射殺して助かっていた。銃は警察に渡したままになったという。 マーティンの脳裏に、ペニーの妊娠、出産や自分の兵隊時代の思い出が去来する。 銃は警官から業者に横流しされ、展示即売会で医学生の手の渡っっていた。 その銃は盗難にあい、どれだけの人間の間を行き来したか分からない。 マーティンはジュエルという女性に辿り着く。彼女の恋人カイルが友人のヴァレリーと浮気。怒ったヴァレリーの恋人JBは、銃を買って白昼のバスケットコートでカイルを射殺して自殺したのだ。 マーティンは、アンとの馴れ初めも回想する。 レイの銃は、その後父親が誤って子供を撃ってしまうという事故を起こしていた。 アンはマーティンがペニー宛に書いた手紙を見つけ、牧師に相談する。牧師はマーティンと話し合いたいと望むが、マーティンは聞き入れない。 マーティンはまたも戦争の夢を見る。彼は戦場で、仲間を撃った少年を射殺したことがあった。 牧師と面談したマーティンは、銃は簡単すぎると言う。瞬く間に、たいていは相手の顔も見ずに終わると。 さらに銃の痕跡を追ってヴェガスにきたマーティン。銃は最後にヴェガスの質屋で売られていた。 マーティンははヴェガスでダンサーをしているミアを見つける。彼女が銃の最後の購入者だった。 ミアの住む家に乗り込むマーティン。ミアは母親の死を知らなかった。マーティンはペニーは元気だと嘘をついてしまう。ミアは母宛に書いた手紙をマーティンに託す。 マーティンはミアに事件の顛末を話し始めた。駐車場で犯人はペニーのバッグを奪い去っていった。マーティンは事件を警察に通報するよう勧めたが、ペニーは顔を見てしまったし住所を知られたのでバッグだけで済むならと言って通報しなかった。 夜中に目覚めたペニーは、駐車場に置き去りになったクリスマス・プレゼントの紙袋を取りに行く。帰ってきた物音に起きたマーティンは、顔を知られた強盗が忍び込んできたと勘違いしてペニーを撃ってしまったのだ。 ミアと三人で暮らすようになったマーティンはペニーに最後の手紙を書く。銃は一生引き出しにしまっておくことにした。彼は書いた。侵入者や強盗よりも自分の中の悪魔が怖い、事件の日に飛び出した、あの悪魔が、と。 一丁の銃が、時には人を助けるが、多くの悲劇も生んでいく。銃社会に問題提起するエピソードを積み重ねて描く重厚な作品。 共演のバーバラ・ベイン、ヴァージニア・マドセンも好演。 バーバラ・ベインは、公開作が少なく、「スパイ代作戦」「スペース1999」のテレビ・ドラマが印象強い。最新作は元ダンナのマーティン・ランドーと共演したSFコメディのショート・フィルム「スペース1899」だとか。 前作「スノー・ドッグ」で得意としてきたキャラクターの決算をつけたジェームズ・コバーンが次に選んだ役は、初めてともいえる家族のために苦悩する父親だったということが印象深い。 これまでのシリアス・ドラマでは、家庭や現実と対峙することが出来ずに破滅していく役柄が多かったので、今回の役柄は新境地といえるのではないだろうか。見事な演技を見せているだけに遺作となってしまったことが残念でならない。 アカデミー賞受賞によってようやく演技が認められたのか(遅きに失した感は強いが)、「エゴイスト」以降出演した最後の4作は、それぞれ全く違うタイプの作品だが、どれも完成度が高くコバーンの演技も冴え渡っている。 銃の最初の持ち主ジャスミンを演じたポーラ・オハラはジェームズ・コバーン夫人。「ヒット・リスト」にもポーラ・コバーン名義で出演していた。コバーンの死から2年足らずの2004年、ガンのため48歳の若さで亡くなっている。 |