原題 ; 20TH CENTURY FOX:THE BLOCKBUSTER YEARS(2000)
 監督 ; ケヴィン・バーンズ、シェリー・ライオンズ
 脚本 ; ケヴィン・バーンズ、ジェリー・デッカー、エド・シンガー
 音楽 ; トム・ジェンキンス
 出演 ; ロバート・アルトマン、トム・ハンクス、ジョージ・ルーカス
20世紀フォックスの歴史を、1960年代後半以降のブロックバスター方式と呼ばれる方式で公開された作品を中心に描いたドュメンタリー。
フォックスの「電撃フリント」でスターダムにのし上がったジェームズ・コバーンがホストを務めた。
娯楽の中心がテレビに移行し、スター制度も崩壊した映画各社は経営危機に陥っていた。
新たなニーズに応えるため20世紀フォックスもブロックバスター方式を取り入れていった。
1935年代に倒産寸前だった20世紀フォックスを立て直したのは名プロデューサー、ダリル・F・ザナックだった。数々の名作を送り出し1950年には絶頂期を迎える。
1956年、ザナックが独立するとフォックスは低迷。会社はザナックを会長として呼び戻す。
そして「サウンド・オブ・ミュージック」で再建を果たした。
その後も「電撃フリント」や「ミクロの決死圏」などをヒットさせる。中でも成功したのが「猿の惑星」だった。
だが、赤字を完全に解消するにはいたらず、第2の「サウンド・オブ・ミュージック」を狙って超大作ミュージカル「ハロー・ドーリー」が制作された。
豪華な配役に、かってのニューヨークを再現したセット。評価は高かったが、興行的には失敗だった。
ヴェトナム戦争が始まり、フラワームーヴメントの時代に入り、良くも悪くもオールド・ハリウッド映画は時代遅れとなっていた。
そこで戦争映画の問題作「パットン大戦車軍団」やニューシネマ「明日に向かって撃て!」が作られ大ヒットした。
1970年にはロバート・アルトマンが低予算の戦争ブラック・コメディ「MASH」を成功させる。
続いて1971年、ウィリアム・フリードキンの「フレンチ・コネクション」がヒット。
それでもフォックスの赤字は消えず、ダリル・F・ザナックは解雇された。
経理出身のデニス・スタンフィルが社長に就任、全作品の制作費が300万ドル以下に落とされる。その中での成功作は「ペーパー・チェイス」だった。
4年間、低予算で映画を作り業績を回復したフォックス。例外は大作「ポセイドン・アドベンチャー」だった。
この作品の大成功はディザスター映画ブームを呼び、さらなる大作「タワーリング・インフェルノ」をワーナーと共同制作する。
一方では低予算の「ロッキー・ホラー・ショー」もあったが、当時のフォックスは異色の作品に扱い方が分からず困ったという。ロードショー時は成功しなかったこの作品は、カルト映画として深夜興行で絶大な支持を受けるようになる。
1976年にはアラン・ラッド・ジュニアが社長に就任して、メル・ブルックスのホラー・コメディ「ヤング・フランケンシュタイン」を成功させた。
次なるヒットは「オーメン」だった。
1970年代半ばから、ジョージ・ルーカス、スピルバーグといった新しい才能がハリウッドを席巻する。
ユナイテッド・アーチスツ、ユニバーサルが手を引いたジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」にフォックスはGOを出し、新しい伝説を作り上げた。
続くSF大作として「エイリアン」が制作される。ギーガーの名デザインも効果をあげ成功したこの作品は、強いヒロイン映画のはしりでもあった。
フォックスは「結婚しない女」「ノーマ・レイ」「9時から5時まで」など多様なタイプの女性映画も送り出す。
次には若者たちの自立を描いた「ヤング・ゼネレーション」が成功。
フォックスは石油王マーヴィン・デーヴィスに買収される。大手では初の女性製作部長など優秀なスタッフに恵まれ、ティーン向けの青春映画やコメディで成功。
ザナック親子も復帰してポール・ニューマン主演の社会派ドラマ「評決」やSF「コクーン」を作り上げた。
そしてアクション大作路線が復活。フォックスも「ロマンソング・ストーン/秘宝の谷」を製作した。
1985年、メディア王ルパート・マードックがオーナーになる。メディア戦略に出たフォックスはテレビ局を新設。
映画ではジョン・キャメロンと組んで「エイリアン2」を生み出す。リプリー対エイリアン・クィーンの名勝負も話題を呼んだ。
その後もフォックスはSF、アクション映画の大作を量産。「プレデター」をヒットさせる。
更なる大成功作は「ダイ・ハード」だった。高予算で主演がテレビ出身のブルース・ウィルスとあって不安視されたが、空前のヒット。ブルース・ウィルスは一躍トップスターになった。
一方では新タイプのエンターテインメント作「ウォール街」や業界物「ブロードキャスト・ニュース」なども成功した。
1990年代に入りジュリア・ロバーツ、トム・ハンクスといったビッグ・スターが誕生する。
低予算コメディ「ホーム・アローン」の予想外なヒットで、マコーレー・カルキンは子役のトップスターになった。
その他にも「シザーハンズ」「いとこのビニー」「ラスト・オブ・モヒカン」などジャンルを問わずヒット作が続出。フォックスは、かってない業績を上げていく。
1994年以降、フォックスは経営の多角化をはかり、映画ではオープニング・ロゴをリニューアルしてジョン・キャメロンの大作「トゥルー・ライズ」が公開された。
さらにヤン・デヴォンの「スピード」、バズ・ラーマンの「ロミオとジュリエット」がヒット。サンドラ・ブロック、レオナルド・デュカプリオがトップ・スターに仲間入り。
得意のSF大作では「インデペンデンス・デイ」が空前のヒット。ウィル・スミスも大人気になる。
その翌年にはアニメ・スタジオを新設して「アナスタシア」を生み出した。
1997年には莫大な製作費の「タイタニック」を作る。あまりにも高予算のため、パラマウントと提携した。この作品は成功も空前だった。
ビル・メカニック社長の下、フォックスは比較的低予算の作品製作や新人育成も続けて行き、「フルモンティ」「メリーに首ったけ」なども生み出す。
CGを映画を作るのも観るのも人間であり、映画は社会を移す鏡。過去の記録、未来への指針、その魂は永遠に続くと締めくくられる。
次々と名作が紹介されるので見飽きないのだが、良くも悪くも20世紀フォックス作品の紹介ドキュメンタリー、というかカタログ的なおもむきが強い。
原題となっているブロックバスターが、どういうものかも説明されず、食い足りない印象を残す。
ちなみに「映画秘宝/映画懐かし地獄’70」掲載の対談によると、ブロックバスターとは軍隊用語で1区画を1発で木っ端微塵にする大型爆弾のことだとか。
競争力の強い大作で映画館を押さえてしまい、短期間で興収を稼いでしまう。この影響で小劇場がつぶれたり、大作に予算を取られ他の企画が見送られるとか、弊害も多かったらしい。
大作自体、予算がかさみすぎて興収1億ドル突破でもコケたといわれる作品が出てしまうなど、近年では在り方が見直されている。
比較的低予算で製作できるアジア映画やヨーロッパ映画のリメイクにハリウッドが血まなこになっているのも、ブロックバスターの反動ではないかと思われる。
同誌によるとブロックバスターのはしりは「ゴッドファーザー」「ジョーズ」「スターウォーズ」。
これまでB級作品として作られることの多かったギャング物、動物パニック、冒険SF、そして「エクソシスト」によるホラーのジャンルを大手映画社がこぞって製作を始める。そのため弱小映画製作会社は苦境に立たされることとなった。英国ホラー映画の名門ハマー・フィルムが撤退したのも、この時期(最後の作品は1979年だとか)だったと思う。
ザッツ・ハリウッド/時を駆け抜けた名作たち