原題 ; BRASS TARGET(1978)
 監督 ; ジョン・ハフ
 脚本 ; アルヴィン・ボレッツ
 音楽 ; ローレンス・ローゼンタール
 出演 ; ジョン・カサベテス、マックス・フォン・シドー、ジョージ・ケネディ、ソフィア・ローレン
「ヘルハウス」のジョン・ハフ監督による、パットン将軍の死は暗殺だったという戦後秘話を描く軍事サスペンス。
第二次大戦終戦直後、米軍はナチスの隠した2億5千万ドルの金塊を発見。パットン将軍(ジョージ・ケネディ)はそれをフランクフルトに移送した。
何者かが輸送列車にトロッコを正面衝突させて止め、毒ガスで米兵を殺して金塊を奪う。
軍人気質のパットン将軍は政治の仕事が苦手。コサックなんかに誰が会うかと怒鳴っていたが、結局ソ連のオストロノフ将軍と会談させられる。
パットンはソ連兵が物資を横流ししただけで銃殺されていることに驚く。オストロノフは米軍は乱れていると言い、アメリカは泥棒だと金塊の件でののしる。
パットンは金塊を見つけて貴様のツラに叩きつけてやると大見得を切った。
デルーカ少佐(ジョン・カサベテス)はドーソン大佐(ブルース・デイヴィソン)に呼び出される。
戦時中にデルーカが指揮を取った特殊作戦が、今回の金塊強奪に酷似しているのだ。
ドーソンはデルーカの帰国を取り消し、事件調査の協力を要請する。
デルーカは、城を占拠して住みついているマッコーリー大佐(パトリック・マッグーハン)を訪ねる。ドーソンの指令を取り消させ、帰国できるようにしてもらうことを頼む。
デルーカが帰ろうとすると、マーラ(ソフィア・ローレン)が戻ってきた。彼女はデルーカのかっての恋人だった。
パットンは強奪事件の現場検証を行う。本人が捜査に乗り出したことで、首謀者のロジャース大佐(ロバート・ヴォーン)、スチュワート大佐(エド・ビショップ)らは慌てる。
デルーカは、パリ銀行で100万ドル分の金塊を処分した個人投資家がいたことをつきとめた。
ロジャースたちに計画を売ったのはマッコーリーだった。彼は早計に金塊の一部を処分したことでロジャースを叱責する。マッコーリーはデルーカを早く帰国させてしまおうと企む。
ロジャースは、最も邪魔なパットン将軍の暗殺を発案する。
マッコーリーは、ロジャースの名を使って殺し屋のシェリー(マックス・フォン・シドー)に接触する。シェリーは50万ドルで事故に見せかけた暗殺を請けた。
城に戻ったマッコーリーを風呂場に隠れていた暗殺者が殺害する。
マッココーリーの死を知ったデルーカは、葉巻しか吸わないマッコーリーが紙巻タバコを持っていたことに不審を抱く。
タバコの巻紙に暗号が書き込まれていた。解読の結果ニューヨークの刑務所に投獄されているマフィアのボス、ラッキー・ルチアーノを示していることがわかった。
デルーカはニューヨークでラッキー・ルチアーノと面会する。ルチアーノはマッコーリーがヨーロッパの殺し屋を探しに来たことを教える。
ルチアーノはナポリのジーノを紹介したが、ジーノは闇市でMPに射殺されていた。
ジーノの監督官はジーノが連絡員にすぎず、本当の殺し屋はスイスの腕利きであることをデルーカに告げる。だが、名前は分からなかった。
シェリーは特注の武器を手配していた。今まで火器に使われたことのない特殊な弾丸を使用するというのだ。
デルーカは、暗殺の対象がパットンであるとにらむ。ロジャースは、真の狙いは大統領かもしれないと反論する。
マーラは、一緒に暮らそうというデルーカの誘いを一旦断るが、戻ってきた。
シェリーが注文した弾丸は車のゴム製エンジン部品に偽装したものだった。皮膚を傷つけずに脊髄を折ることが出来るのだ。
シェリーはダミー人形で試し撃ちするフリをして、武器職人を撃つ。見事に首を骨が折れた。
デルーカは旧知である難民委員会のウェバーに面会する。だが、ウェバーこそ殺し屋シェリーだった。
そうとは知らないデルーカは、裏社会に詳しいウェバーに殺し屋捜しを依頼する。
デルーカに密告の電話があった。情報が聞きたければ翌日9時に教会でカステン神父に懺悔(ざんげ)しろというのだ。
これは罠だった。教会に赴いたデルーカは、神父に化けて暗殺者と対決する。
鐘楼に追いつめられた暗殺者は、背後からデルーカを絞め殺そうとするが突き落とされ転落死した。
ウェバーは、スチュワートと情婦を暗殺し、偽情報を残す。
米軍はシェリーの居所をつかんだ。だが、それはジャーナリストである本物のシェリーであり、殺し屋シェリーことウェバーにおびき寄せられたのだった。
情報をつかんだロジャースは仲間のギルクリスト大佐とともに乗り込み、身代わりのシェリーと警戒中のMPを撃ち殺す。
そこに駆けつけてきたデルーカとドーソン。撃ちあいになり、ロジャースとギルクリストも射殺された。
特別警戒態勢は解かれていなかったが、気のゆるんだパットンは猟に出て行く。
デルーカは事件が解決したとは思っていなかった。なぜロジャースが先にシェリーのいるホテルに到着したのか。死んだシェリーは銃を所持していなかった。殺し屋は他にいるに違いない。
そこにマーラが米軍の制服を着たウェバーを見たと言ってくる。彼女はウェバーがデルーカを殺しに来たのではないかと考えていた。
デルーカはウェバーの正体に気づく。づでにパットンの一行は猟に出発していた。
ウェバーはパットンの専用車の窓に細工して、ウィンドウを一度下ろしたら上がらないようにしていた。
銃を構えて待ち構えるウェバー。曲がり角にトラックが置かれていた。衝突する直前、ウェバーは見事にパットンの首を撃つ。ついにデルーカは間に合わなかった。
誰もが衝突のショックでパットンの首が折れたのだと判断する。
デルーカ以外は。彼はウェバーが犯人と見抜くが証拠がない。
雪山の駅に降り立つデルーカ。駅には鍵の入った封筒が届けられていた。
スキーに出るマーラとウェバー。その不在中に忍び込むデルーカ。ケースに収まった組み立て式のライフルと、ゴム部品に偽装した弾丸を発見する。
スキーから戻る二人。銃を持ったデルーカが姿を現す。逃げ出すウェバーの首をデルーカが撃つ。首の骨が折れ雪山を転落していくウェバー。
1945年12月21日パットン将軍は頚部骨折により死亡、ウェバーは12月28日にスキー事故で死亡と発表された。
ナチスの金塊は行方不明のまま終わった。
ジョン・ハフ監督は手際の良い演出を見せ、派手な見せ場はないものの、娯楽性の高いサスペンス映画に仕上がっている。
「ヘルハウス」「ピグルス・時空を超えた戦士」と並ぶジョン・ハフ監督の代表作と思う。凡作も多く、現在はほとんど活躍しなかったのが残念。最新作の「サイコパス」は見逃しているけど、評価が低いようだし。
顔ぶれもなかなか豪華。中でも「コンドル」に続いて腕利きの殺し屋を演じたマックス・フォン・シドーが光っている。
「プリズナーNo.6」のパトリック・マッグーハン、「謎の円盤UFO」のエド・ビショップというイギリスの個性派俳優が、小さい役ながら顔を見せていることも嬉しい。
ジョージ・ケネディはパットン将軍というには、やや貫禄不足という気がしたが、パットンがかなり軽い人物として描かれているため、これで良いのかもしれない。

ブラス・ターゲット