原題 ; CYRANO DE BERGERAC(1990) |
監督 ; ジャン=ポール・ラプノー |
脚本 ; ジャン=クロード・カリエール、ジャン=ポール・ラプノー |
音楽 ; ジャン=クロード・プティ |
出演 ; ジェラール・ドパルデュ、アンヌ・ブロシェ、ヴァンサン・ペレーズ |
鼻の大きいフランスの名優ジェラール・ドパルデュが、付け鼻でさらに大きな鼻になってシラノ・ド・ベルジュラックを演じた作品。 1940年、ブルゴーニュ劇場は大勢の客で賑わっていた。客を狙ってスリも入り込んでいる。 無骨な美青年クリスチャン(ヴァンサン・ペレーズ)は美貌のロクサーヌ(アンヌ・ブロシェ)に恋心を抱いている。 ギシュ伯爵(ジャック・ウェベール)も妻子ある身でありながら、ロクサーヌを狙っていた。 クリスチャンはスリから、友人で詩人のリニエールが殺し屋に狙われているという情報を得てネール門に向かう。 演劇が始まり人気俳優モンフルリーが登場すると、彼は出演禁止だと野次る声が響く。 声の主はモンフルリーを恨むシラノ・ド・ベルジュラック(ジェラール・ドパルデュ)だった。彼は幕を斬って落してしまい、客には観劇代の弁償だと財布を投げて与える。 シラノは自分の巨大な鼻にコンプレックスを抱いていた。 ギシュ伯爵の手下ヴァルヴェール子爵がシラノにからむ。だが、詩人で口の立つシラノは機関銃のようにまくしたてて彼をやりこめてしまう。 シラノは即興でバラードを作りながらヴァルヴェールと決闘。彼を軽くあしらい、剣をはね飛ばす。 立ち去ろうとするシラノにヴァルヴェールは剣を拾って後ろから襲いかかる。再び剣を交えたシラノはヴァルヴェールの腹を刺してしまう。 シラノがモンフルリーを憎む理由はロクサーヌに色目を使ったからだった。恋をあきらめているシラノだが、ロクサーヌには心を奪われている。 友人は思い切って告白しろと勧めるが、シラノは笑い者になることを恐れていた。 そのときロクサーヌの侍女が面会の依頼を伝えにきた。急に元気になるシラノ。 翌日、面会場所に来たシラノは弱気になり、手紙を残して逃げようとする。書き終わらぬうちにロクサーヌが現われた。 ロクサーヌの用件は、自分が恋する相手クリスチャンがシラノの中隊の青年隊に入ったので、守ってほしいというものだった。彼女はクリスチャンが自分に想いを寄せていることも気づいていた。 頼みを断りきれなかったシラノは悩む。 青年隊に入ってきたクリスチャンに、シラノはロクサーヌが手紙をほしがっていることを伝える。 クリスチャンは自分の無教養さにコンプレックスを持っていた。 それを聞いたシラノは、自分の英知とクリスチャンの美貌を使って一つのロマンスを作り上げようと思いつく。 ロクサーヌはシラノがクリスチャンの名義で書いた手紙に胸をときめかし、時には失神する。 ギシュ伯爵はシラノへの恨みから中隊を戦争に送り込むとロクサーヌに伝える。 ロクサーヌはシラノは戦いが大好きなので置いて行ったほうが悔しがると伯爵をそそのかした。 伯爵は出陣と見せかけて僧院に隠れ、ロクサーヌと逢い引きしようと企む。 ロクサーヌはクリスチャンがシラノ以上の文才の持ち主と思い込んでいる。彼女はシラノに、直接クリスチャンから愛の言葉を聞きたいと伝えた。 早速シラノはクリスチャンに愛の言葉を覚えさせようとする。ところがクリスチャンは自分の言葉で伝えたいと言い出す。 クリスチャンと会ったロクサーヌは美しい歌を所望する。彼女はろくに口の利けないクリスチャンに、まるで別人のようだとあきれて帰ってしまう。 その夜更け、クリスチャンはロクサーヌを窓辺に呼び出し、口パクで実際にはシラノが喋って詩的な言葉で彼女を魅了する。 クリスチャンのふりをして、これまでの想いを全て語るシラノ。 ロクサーヌとクリスチャンは結ばれ、シラノは独り去っていく。帰り道でシラノはギシュの手紙をロクサーヌに届けに行く神父と出会う。 ロクサーヌは手紙に、ギシュが彼女とクリスチャンとの結婚を望むと書いてあると嘘をつき、神父に挙式を上げさせてしまう。 シラノは道化のふりをして逢い引きに向かうギシュを邪魔し時間を稼ぐ。ギシュが着いたときには式は終わっていた。 激怒したギシュ伯爵は青年隊を前線に送り込む。ロクサーヌはシラノにクリスチャンの無事を託す。 前線でシラノ率いる青年隊は包囲され窮地に陥っていた。飢えた兵たちはネズミを食べてしのいでいる有様。 シラノは牧童の笛で故郷の曲を奏でさせ、荒んだ兵士たちの気持ちをなぐさめる。 ギシュはシラノの中隊に敵の総攻撃から砦を守る任務を押し付ける。2時間持ちこたえられなければ援軍は来ない。 その夜、クリスチャンはシラノがクリスチャン名義で毎日2通手紙を書き、夜中に陣地を抜け出し敵地を通り抜けて運んでいたことを知る。 クリスチャンはシラノのロクサーヌに対する想いに気づく。彼は最後の手紙を自分で運ぶ。 途中で味方と出会ったクリスチャンは食糧の強奪作戦に加わる。なんと味方の兵士の一人は男装して彼に会いにきたロクサーヌだった。 ロクサーヌが食糧と料理人まで運んできたので中隊の士気は大いに上がる。 ついに敵の攻撃が始まった。ロクサーヌがいることを知ったギシュは、彼女を守って闘うと言い出し見直される。 ロクサーヌは手紙に魅せられて戦場までやって来たのだった。それを知ったクリスチャンに彼女の愛を受け容れることはできない。 クリスチャンはシラノに告白させようとする。シラノはどんな容貌でも魂を愛するというロクサーヌの言葉に希望を持つ。 そのときクリスチャンが敵の手にかかって重傷を負った。 「彼女が愛しているのは君だ」という言葉をシラノに残してクリスチャンは息絶える。 シラノは死地に臨む覚悟で戦線へと戻っていく。援軍が到着しシラノは生き残った。 それから14年、ロクサーヌはクリスチャンへの想いを抱いて修道院に身を寄せ独身を通している。彼女は元帥になったギシュを許していた。 シラノは論文を書いては偽学者や偽信者をやっつけ、敵を増やしている。ギシュはシラノを事故に見せかけて殺す企みがあるという噂を聞きつけていた。 ロクサーヌの元に向かう途中、シラノは頭上から材木を落されて重傷を負う。 それでもシラノはロクサーヌを訪れ、ふらつきながらも最近のニュースを伝える。彼は戦場で書いた最後の手紙をロクサーヌに見せてもらう。 手紙を朗読するシラノ。その読み方を聞いたロクサーヌは、シラノがクリスチャンの身代わりだったことに気づく。 シラノの負傷を知った古い馴染みのラグノーとルブレが駆けつけてきた。二人の言葉でシラノの怪我を知って驚いたロクサーヌは助けを呼ぼうとするが、シラノは最後のニュースとして自分の死を伝える。 月に照らされシラノは詩を詠み剣を抜き、ロクサーヌに看取られて息絶えるのだった。 「シラノ・ド・ベルジュラック」については大まかなストーリーしか知らなかったので、終盤の戦場のくだりは初めて知った。どこまでが映画のオリジナル・ストーリーなのかも、よく分からない。 高い知性と豪胆な性質を持ちながら、恋には弱いシラノをジェラール・ドパルデュが好演。男気を感じさせるエンディング部分も魅力的だった。 主人公のタイプはかなり違うのだが、見ていて「無法松の一生」を思い出したりもした。 |