原題 ; THE DAY OF THE DOLPHIN(1973)
 監督 ; マイク・ニコルズ
 脚本 ; バック・ヘンリー
 音楽 ; ジョルジュ・ドゥルリュー
 出演 ; ジョージ・C・スコット、トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー、ポール・ソルヴィーノ
学者と知能の発達したイルカとの交流を軸に、そのイルカをテロに利用しようと企む陰謀を絡めて描くSFサスペンスの佳作。
今見ると少々テンポの遅さを感じるが、出演者のきっちりした演技と丁寧な演出で見ごたえのある作品となっている。
ジョルジュ・ドゥルリューは、美しくてミステリアスな雰囲気のテーマを書き上げ、作品の質を向上させることに貢献した。
ジェイク・テリル博士(ジョージ・C・スコット)はイルカ研究の第一人者。
とある島の研究所で年の離れた妻マギー(トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー)を含む数名のスタッフとともに研究をしている。イルカの中には人間の言葉を解するアルファーもいた。
その研究所に記者マホーニー(ポール・ソルヴィーノ)が脅迫まがいの手段で取材を申し込んできた。
一方、研究を後援する財団が援助金打ち切りを言い出したため、ジェイクは財団の幹部たちにアルファーが言葉を話せるようになってきたことを打ち明ける。
ジェイクは、アルファーに伴侶としてベータと名付けたメスをプールに放つ。
やって来たマホーニーはアルファーの情報を持っていた。ジェイクたちはマホーニーに違うイルカを見せて帰らせる。
ジェイクが、アルファーとベータを別の水槽に入れたところ、アルファーは水槽の扉に体当たりを続け、夜になると「ビー(ベータ)を返して」と話し始めたのだった。
どのような手段を使ったのかマホーニーがアルファーについての事実を全て入手し、記事に書いているという情報が入った。
ジェイクはアルファーが見世物扱いされることを恐れる。マギーはアルファーとベータを逃がすことを勧めるが、ジェイクは野性に戻すことは難しいという、
ジェイクはアルファーたちを財団の理事たちに見せるが、その光景を海から潜入したマホーニーと仲間が見張っていた。
ジェイク夫妻は財団の理事長に呼び出されるが、これは罠。不在の間にアルファーとベータが連れ去られてしまった。
そこに現れたのはマホーニー。彼は研究所に仕掛けられた盗聴器を見つけ出す。犯人は財団が送り込んだスパイだった。
マホーニーは財団が企んでいる陰謀の調査をしていた。財団とマホーニーは、どちらも政府の下部組織員。だが、利害の異なる組織に属し対抗しあっているのだ。
誘拐犯たちはアルファーとベータの背中に機雷を取り付け、示された旗の付いた船に機雷を取り付けるよう調教していた。標的は大統領のクルーザー。
その状況の中、アルファーだけが脱走に成功する。
ジェイクたちは研究所を閉鎖し残ったイルカを海に帰していた。
ジェイクの元に戻ってきたアルファー。陰謀を知ったジェイクたちは、アルファーの先導でボートを出すが、途中で燃料が切れてしまう。
ジェイクはアルファーにベータを止めるよう指示する。
旗を見つけて大統領のクルーザーへと泳ぐベータ。アルファーは間一髪で追いついた。
アルファーの話を聞いたベータは、犯人一味のクルーザーに機雷を取り付けた。
吹き飛ぶクルーザー。陰謀の失敗を知った財団は証拠隠滅を始めた。
ジェイクたちもすぐに逃げなければ危ない。ジェイクはアルファーに、海に逃げて二度と人間の言葉を話さないように指示した。
離れたがらないアルファー。ジェイクは、アルファーと一緒にいると自分が悪人にいじめられるのだと言ってアルファーを何とか説得、つらい別れを迎えるのだった。
余談その一=「吸血鬼」のパンフレットにはロマン・ポランスキーの次回作として「イルカの日」が挙げられている。マンソン事件で流れてしまったのだろうが、ポランスキーが監督すれば、本作とはまた違った魅力のある作品が作られたことと思う。
余談その二=ジョージ・C・スコットは「パットン大戦車軍団」で数々の賞を受賞したが1980年代以降はイマイチ作品に恵まれず1999年に亡くなった。俳優を競争させる制度は堕落、としてアカデミー主演男優賞を受賞拒否するなど反骨精神の持ち主でもあったようだ。トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー(「黄金の指」)は実の奥さん。1971年の「ラスト・ラン」で知り合って、翌年結婚したらしい。
余談その三=公開当時のパンフレットには、ベトナム戦争当時、現実に武装したイルカが配備されたが、情報がリークして問題となったため1972年3月に計画を中止してイルカを引き揚げた、という記事が載っている。そういえば実写とアニメを合成した佳作「秘密兵器リンペット」(1963)のラストも、主人公(魚)が米軍のイルカ語研究に協力し始めるという場面だった。

イルカの日