原題 ; DAS INDISCHE GRABMAL(1958) |
監督 ; フリッツ・ラング |
脚本 ; ウェルナー・イェリク・リュデッケ |
音楽 ; ゲルハルト・ベッカー |
出演 ; パウル・フーブシュミット、デブラ・パジェット、ワルター・レヤー、クラウス・ホルム |
「王城の掟」に続く「大いなる神秘」の後編。日本では同時上映されたのだが、海外では別々に上映されたのか、冒頭で「王城の掟」のストーリーが紹介されている。 砂漠に倒れたハラルド(パウル・フーブシュミット)とシータ(デブラ・パジェット)は、翌日通りかかったキャラバンに救出された。 チャンドラ王(ワルター・レヤー)は二人を手配する。賞金目当てに張り切る若者もいた。 ハラルドの義兄ワルター(クラウス・ホルム)は墓を作る命令に腹を立てていた。姉イレーネ(ザビーネ・ベートマン)は、未だにハラルドが虎狩りに出たという話が納得できずにいた。 キャラバンの隊長は村の老人に二人を介抱するよう頼む。 イレーネは王にハラルドのことを聞いてもはっきりしないことから、恨みを買ったのが弟ではないかと考え始める。 ハラルドは村人から密告者が出たことを知らされ、山へと逃れた。通報を受けた王国兵が二人を追跡する。 二人は守護と破壊の女神シヴァが祀られた洞窟に逃げ込む。祈りを捧げるシータ。兵たちが山を登ってきた。二人が潜り込んだ亀裂に偶然蜘蛛が巣を張ったことから、捜索を逃れることが出来た。シータはあらためて女神を拝むのだった。 シータは供え物に手をつけようとするハラルドを止め、水を汲みにいく。彼女は兵たちに見つかってしまった。 叫び声を聞きつけて飛び出すハラルド。彼は兵士と揉み合ううちに崖から落ちてしまう。 チャンドラ王は義兄夫妻に、ハラルドが虎の殺されたと報告して、血まみれのシャツを渡す。 ワルターは、インクの染みからシャツが王城で見たものであり、ハラルドが狩りに着ていった物ではないことに気づく。 王の地位を狙う兄のラミガニは、チャンドラとシータを結婚させようとする。迷ったチャンドラは、世捨て人の賢者に助言を仰ぐ。賢者は自らの卑小さを知ることが答えだと言うが、国王は自分は卑小になどなれないと言い返す。 もう神を信じないと言い出したシータに、僧侶が女神の審判を要求する。コブラとともに踊らせて無事でいられれば無罪だというのだ。 女神像の前でシータはエロチックな衣装をまとって踊り始める。それを見つめる一匹の巨大なコブラ。恐怖に耐え切れず倒れたシータにコブラが襲いかかろうとする。一瞬早くチャンドラ王がコブラを殺した。 チャンドラ王は僧侶のクレームをはねのけ、シータとの結婚を決意。国民にお触れが出された。 王は改めてシータに求愛するが、シータは愛するハラルドを死に追いやったチャンドラを憎んでいると言う。 怒った王は、シータを一日だけ妃にしてから新しく作った墓所に生き埋めにすると言い出す。シータは王のそばで生きるよりも、そのほうがマシだと言い放つ。 ラミガニは、ハラルドは生きておりシータが妃になることを承知しなければ、一日一本ずつ彼の指を切り落とすとシータを脅す。 一方、ハラルドの残した地図からシータの居場所に見当をつけたイレーネは、彼女のもとに忍んで行く。 ハラルドは地下の穴倉に繋がれていた。ラミガニはシータにその姿を見せる。 部屋に戻ったシータにイレーネが声をかけた。事実を聞かされたイレーネは夫のワルターとともにハラルドを救出することを誓う。 ワルターは地図からハラルドが監禁されている場所を絞っていく。彼はハラルドを救出した後にダイナマイトで洞窟を爆破して時間を稼ぐ作戦をたてた。 シータが結婚を承知したので、ラミガニは部下にハラルドを始末して死体をワニに食べさせてしまうよう命令する。 ハラルドは、殺しに来た男を逆に鎖で絞め殺した。 ラミガニは、異国の踊り子と結婚する王は正気ではないと扇動し、反乱の準備を進めていた。彼は唯一人公正な立場で動こうとするダグ将軍を刺してしまう。 イレーネは地下道にマークを付けながら探っていく。穴倉を脱出したハラルドも剣を手にさまよっていた。 イレーネは病人の洞窟に落ちてしまう。ワラワラと迫ってくる病人たち。間一髪でアサガーラが門を開けイレーネを逃がしたが、病人が殺到したため閉めることは出来なかった。 アサガーラは病人たちとともに洞窟の崩落に巻き込まれていく。 イレーネを追ってワルターがやって来た。ハラルドとも再会を果たす。その傍らをパドゥの反乱兵が通り過ぎていった。 チャンドラ王とシータの婚礼が行われていた。僧侶が異議を唱え、反乱軍が攻め込んでくる。 ラミガニは正体を現し、王は捕らえられてしまった。シータも監禁される。チャンドラはムチ打たれ虎の餌食にされそうになった。 その時、刺されても生きていたダグ将軍が親衛隊を率いて行動を起こす。パドゥを射殺して反乱軍を制圧、王は救出された。 ラミガニは一人地下道へと逃げ込む。脱出口を開けようとワルターの仕掛けたダイナマイトを爆発させるが、地下水とともに流れ込んできたワニの餌食となってしまう。 シータを守るハラルドにチャンドラ王が迫ってきた。力尽きたハラルドは意識を失ってしまうが、王は剣を捨てて去っていく。 自らの卑小さを悟ったチャンドラは賢者のもとに向かったのだ。 やがてエシュナプールを出発した隊列の中には、ハラルドと彼を介護するシータの姿があった。 これまで見たハリウッド時代のフリッツ・ラング作品は、どれも水準以上に仕上がっているし、犯罪ドラマ「暗黒街の弾痕」や日曜画家の皮肉な運命を描いた「スカーレット・レター」なんか傑作だと思う。だが、扱いとしてはB級プログラム・ピクチャーばかりで、フリッツ・ラング本来の作家性を生かす企画は、あまりないように感じられる。 本作は西ドイツ作品(フランス、イタリアの資本も入っているらしい)で、久々にフリッツ・ラングらしい風格の異郷ロマンとなっている。 権力者の狂気と和解というテーマは、「メトロポリス」を想起させて興味深い。原作がフリッツ・ラングの元妻で脚本家のテア・フォン・ハルボウ(1932年離婚、1954年死亡)であるので共通項があるのかもしれない。この原作は1938年にも映画化されているようなのだが、詳細は不明。 「折れた矢」や「十戒」などエキゾチックな役を得意としたデブラ・パジェットも魅力を発揮している。彼女は、その後ロジャー・コーマン監督によるエドガー・アラン・ポー物にの3本出演したが、中国人の富豪と結婚して引退したらしい。 |