原題 ; A FUNNY THING HAPPENED ON THE WAY TO THE FORUM(1966)
 監督 ; リチャード・レスター
 脚本 ; メルヴィン・フランク、マイケル・パートウィー
 音楽 ; スティーヴン・ソンドハイム
 出演 ; ゼロ・モステル、フィル・シルヴァース、ジャック・ギルフォード、バスター・キートン
ゼロ・モステルの当り役となった舞台のヒット・ミュージカル・コメディを本人の主演により映画化。
リチャード・レスターの才気に任せた演出で躍動感あふれる快作となった。
古代ローマ、舞台となるのは3軒の家。
1軒目のエロニアス(バスター・キートン)は海賊にさらわれた二人の子供を捜して放浪の旅に出ている。
2軒目のライカス(フィル・シルヴァース)は奴隷商人。
3軒目の貴族セネックスには恐妻ドミナと息子ヒーロー(マイケル・クロフォード)がいる。そして主人公であるスードレス(ゼロ・モステル)はセネックスの奴隷だった。
ヒーローは隣に開業したライカスの娼館にいるフィリア(アネット・アンドレ)に一目ぼれしていた。
何とか自由の身になりたいスードレスは主人の旅行中にチャンスを掴む。ヒーローがフィリアとの仲を取り持ってくれたら自由の身にするという約束を取りつけたのだ。
スードレスはヒーローを連れて娼館に行く。次々と娼婦が紹介されるが、フィリアは出てこない。
処女であるフィリアはローマ軍の隊長ミレーズに買われて花嫁となる予定だった。
スードレスはフィリアの出身地クレタ島が疫病で全滅したため、フィリアも隔離しなければならないとライカスをだます。
自分には免疫があるといってフィリアを連れ出したスードレスは、ヒーローに愛の告白をさせる。
セネックス家の奴隷長のヒステリアム(ジャック・ギルフォード)が嗅ぎつけたが、スードレスはエロ絵陶器のコレクションをばらすと脅迫。
愛し合う二人。だがフィリアはミレーズとの契約があるので行かなければならないと言う。
スードレスとヒーローはフィリスを眠り薬で眠らせ、死んだことにして駆け落ちしようと企む。
フィリスは戻ってきたセネックスをミレーズとカン違い。スードレスは、セネックスにフィリアを新しいメイドだといってごまかす。
スードレスは空き家となっているエロニアスの家にセネックスとフィリスを隠す。
そこに老いて目がかすむようになったエロニアスが帰ってきた。占い師のふりをして近づいたスードレスは7つの丘を7回まわれとお告げをして時間を稼ぐ。
ミレーズ隊長の使いが到着。1時間で隊長が来るという。
スードレスが見初めた娼婦ギムナジアも買い手が決まったという。
ライカスから自分が奴隷商人とは知らない親が会いに来るという相談を受けたスードレスは、女たちをセネックスの家に隠すようすすめる。
一方、セネックスの浮気を心配したドミノもローマを目指していた。
ついにミレーズ隊長が到着、スードレスがライカスのフリをして挨拶したため、フィリスにもしものことがあったらスードレスが殺されてしまうハメになった。
ライカスは、仲間からクレタ島に疫病など流行っていないことを知らされる。
大騒ぎの中、ドミナも帰り着いた。彼女は高名なミレーズ隊長が来ていると聞いて大喜び。さっそく挨拶してミレーズの父マグナス将軍の命日には200名を招いたと自慢話をする。あくまで娼館と思っているマイルズは、200人相手にしたと聞いて目を丸くする。
セネックスもフィリスに夜這いしようとうろつきまわり、スードレスはフィリアを隠して右往左往。
最初から契約を守る気でいたフィリスだが、相手がトラキアを強奪した男と気づき心変わりした。
スードレスは花嫁が死んだことにしようと、ヒステリアムを女装させて死んだふりさせる。
悲しんだミレーズ隊長は、不憫(ふびん)なフィリスの葬儀を済ますまで帰れないと言い出す。
葬儀が始まった。事情を知らないヒーローは本当にフィリスが死んだと思い込み、自分も死のうと家を飛び出す。闘技場に行ってライオンの餌になろうというのだ。
それを見たギムナジアがフィリスに伝える。フィリスは自分も後を追って死ぬと言い出す。
ミレーズ隊長が遺体に別れのキスをしようとしたので、スードレスはフィリスがペストだったと嘘をつく。
ミレーズ隊長はクレタ島にペストなどないことを知っていた。フィリスが自分に恋焦がれるあまり死んだと信じているミレーズは、花嫁の心臓を切り取って持ち帰ると言い出す。
これを聞いたヒストリアムは起き上がって逃げ出す。
ミレーズ隊長は大激怒、処女を連れてこないと全員の首をはねると暴れだした。
闘技場が休みでライオンがいないことを知ったヒーローは、剣闘士の練習台になる奴隷にまぎれる。彼は危ういところでスードレスからフィリスが生きていることを知らされた。
ヒーローは戦車(馬車)を買ってフィリスが待つ寺院へ向かう。ミレーズに見つかったスードレスも、ギムネジアとともに戦車を奪う。
寺院で生贄になりかけていたフィリスを、ヒーローは寺院から連れ出す。
ミレーズの戦車隊に追われるスードレスとヒーロー。走る戦車の間を、目の悪いエロニアスが悠然と横切っていく。「田舎はええのう」のんびり辺りを見回した途端エロニアスは木の枝に頭をぶつけた。
馬が外れて暴走する戦車を走って追ったり、バスター・キートンに敬意を表したかのような無声映画調アクションが展開。
舞台劇を動的なスプラスティック・コメディに変貌させてしまう、リチャード・レスター監督の面目躍如たる作劇だと思う。
ついに全員捕まってしまった。それでもまだミレーズは、ヒステリアムがフィリスと思って結婚を迫る。
そこにやって来たのが一人の老エロニアス。持っていた指輪からミレーズ隊長こそがエロニアスの息子であることが判明。再会を喜ぶ二人。
しかもフィリアも同じ指輪を持っていた。フィリアこそエロニアスの娘だったのだ。
兄妹であることが分かってミレーズ隊長の婚約は解消。ヒーローとフィリアは、ようやく結ばれることになった。
スードレスもライカスから持参金つきでギムネジアをもらい受け自由の身となることができた。
全てが丸く収まってフィナーレは皆でコーラス、「今夜はコメディ、悲劇は明日」、でも奥方の尻に敷かれたセネックスだけは小声で歌う「今夜も悲劇」。
基本的に艶笑コメディなのだが、カラリとした演出で痛快な感覚に仕上がっている。
多分、同年に亡くなったバスター・キートンの遺作と思う。「80日間世界一周」など1960年代何本かの映画にゲスト出演しているキートンだが、単に出ているだけと言うものがほとんどでバスター・キートンらしい身体を張ったギャグを仕掛けたのは本作だけと思う。
オリジナル舞台の楽曲を作詞作曲したのは「薔薇のスタビスキー」のスティーブン・ソンドハイム。なかなか楽しい曲を提供しているのだが、映画版のサントラは歌曲を7曲だけに絞り(オリジナル・ブロードウェイ・キャスト版には14曲の歌曲が収録されている)、残りは映画用に作曲されたケン・ソーンによる劇伴音楽を収録するという、ミュージカルのサントラとしては異色の構成になっている。
ローマで起った奇妙な出来事