原題 ; HARPER(1966)
 監督 ; ジャック・スマイト
 脚本 ; ウィリアム・ゴールドマン
 音楽 ; ジョニー・マンデル
 出演 ; ポール・ニューマン、ローレン・バコール、ジュリー・ハリス、ジャネット・リー
この作品はミステリー映画ですが結末まで記載してあるので御注意ください。
「THE MOVING TARGET」の別タイトルもある。ロス・マクドナルド原作によるハードボイルド・サスペンスで、ジャック・スマイト監督の代表作。
朝、コーヒーを切らした探偵ルー・ハーパー(ポール・ニューマン)が、ゴミ箱から出がらしのコーヒーを拾っていれるオープニングが印象的。
ハーパーは弁護士アルバート(アーサー・ヒル)の紹介でサンプソン夫人(ローレン・バコール)から行方不明となった夫の捜索を依頼される。
まず訪ねたのが夫人にとっては義理の娘ミランダ(パメラ・ティフィン)とサンプソン自家用機のパイロット、アラン・タガート(ロバート・ワグナー)。
サンプソンが、ミランダにアルバートとの縁談を持ち込んでから父娘の仲は、あまり良くなかったとらしい。ミランダはアランに気があるのだが、恋人のいるアランは相手にしていない。
アルバートによれば、サンプソンはアル中の大富豪、パイロットだった息子を亡くしてから、おかしくなっているという。彼はミランダにぞっこんの様子だ。
ハーパーは、元人気女優のフェイ(シェリー・ウィンターズ)と会う。今は落ち目で、すっかり太っている彼女は、大ファンのふりをするハーパーに大喜び。彼女もサンプソンは最近いかれていたという。
そこにミランダとアランが現れ、サンプソンの筆跡で50万ドルを用意するように要請した手紙が届いたという。ハーパーは金を用意し、生きている証拠が出るまで待つように指示する。
酔ったフェイを送ったついでに家捜し。ハーパーはタンスに札束が隠してあるのを見つける。
そこにベティと名乗る女(ジュリー・ハリス)から電話が掛かってきた。さらに銃を持った男が現れる。フェイの夫トロイ(ロバート・ウェバー)だった。
追い出されたハーパーはベティがいると言ったバーに向かう。
彼女はバーの歌手だった。ハーパーは店の用心棒に殴られる。そこに現れて彼を救ったのはアランだった。トラックにも轢かれそうになる。
次にハーパーはミランダとともに、サンプソンが土地を提供した新興宗教「雲の寺」の教祖クロードを訪問。。そこには昨夜のトラックと同じタイヤの跡があった。
身代金受け渡しの手紙が届く。身代金は奪われて、最初に金を受け取った男は殺されていた。
男の持っていたマッチから「コーナー」というバーを突き止め聞き込むハーパー。男の名はエディで3日前ラスベガスに電話していたことを突き止める。
駐車場には例のトラックがいた。尾行するハーパー。やはり行き先は「雲の寺」だった。
ハーパーは、数十人のメキシコ人に囲まれ取り押さえられてしまう。寺院は不法入国就労者斡旋のアジトで黒幕はトロイ。だが、誘拐事件は知らなかった。
かろうじて脱出したハーパーは、別れた妻スーザン(ジャネット・リー)の元に転がり込む。
エディはベティの弟だった。
犯人がアラン、ベティ、エディの3人とふんだハーパーは、ベティの悪口を言ってアランを挑発する。銃を抜くアラン。そのアランを射殺したのはアルバートだった。
身代金を横取りしようとトロイがベティを拷問していた。駆けつけたハーパーはトロイを射殺して彼女を救出。サンプソンの居場所を聞き出した。
アルバートに連絡し、自分も現場へと向かう。恋人アランの死を悲しむベティに、ハーパーは名前を呼びながら死んでいったと嘘をついてやる。
現場に着いたハーパーは背後から殴られ気絶してしまう。意識を取り戻した彼は、アルバートとともにサンプソンの死体を発見する。
逃亡したベティは車ごと崖から墜落してしまった。
身代金を回収したハーパー。彼はサンプソン殺しが誘拐犯とは関係なく、犯人がアルバートであることを見抜いていた。
彼は、サンプソンに実現させる気のないミランダとの縁談で弄ばれたことを恨んでいたのだ。
サンプソン邸に着いたハーパーは、アルバートに殺す気なら戸口に着く前に撃てと言って車を降りる。銃を構えるアルバートだが、引き金を引くことはできなかった。
ハードボイルド・ミステリーの場合、殺人トリックの謎ときというのは主流でなく、複雑に絡み合った人間関係を解きほぐして真相に迫っていくというものが多い気がする。
主人公も、単純なヒーローではなく、どこかしがない人生を背負った人物像だったりする。
今回のルー・ハーパーも、別かれた奥さんとヨリを戻そうと苦心したあげく、終盤なんとかなりそうになるが、結局捜査に戻ってしまう。
このあたりの描写が作品に厚みを与えていると思う。
余談=原作の探偵名はルー・アーチャー。ポール・ニューマンは、それまでHがイニシャルで始まる名前の当り役が多かったことから、ゲンを担ぎ、ハーパー変えさせたのだという。
それが成功したのか本作は評価され、1975年には「魔のプール」を映画化した続編「ハーパー探偵シリーズ新・動く標的」が製作された。
動く標的