原題 ; L'HERITIER(1973)
 監督 ; フィリップ・ラブロ
 脚本 ; フィリップ・ラブロ、ジャック・ランツマン
 音楽 ; ミシェル・コロンビエ
 出演 ; ジャン=ポール・ベルモンド、カルラ・グラヴィーナ、ジャン・ロシュフォール
フィルム・ノワールやアクション・コメディへの出演が多かったベルモンドが新境地を拓いたともいえるスタイリッシュなサスペンス映画。
フィリップ・ラブロは、この時期ジャン=ポール・ベルモンド、イブ・モンタン、ジャン・ルイ・トランティニアンと組んで佳作を連発したが、「危険を買う男」以降活動が停滞してしまった。
80年代に二本の未公開作を撮ったのみらしい。
当時のフランス映画界では特にシャープな映像の作品を撮っていた監督なので残念。
ミシェル・コロンビエの音楽も映画のシャープさをさらに引き立てている。
B級アクションを中心に数多くの作品を手がけているコロンビエだが、ラブロ監督とコンビの作品が特に優れている。
バート・コルデル(ジャン=ポール・ベルモンド)は新聞社と鉄鋼会社を経営する財界の大物の一人息子。右翼の大立者ガラジの娘ジョパネラとの結婚が両親に快く思われずアメリカにとばされていた。
両親が飛行機事故で急死したことにより、バートは相続人としてアメリカから急遽呼び戻される。
バートは機内で誘惑してきた女(モーリン・カーウィン)に仕掛けられ、パリの空港で麻薬不法所持の疑いをかけられてしまうが、重役のベルチエ(ジャン・ロシュフォーール)が大臣を動かして事なきを得る。
バートは新聞の発行部長リザ(カルラ・グラヴィーナ)に興味を持つ。
親友で部下のダビッド(シャルル・デネ)の捜査で飛行機の女がローレン・コレイという名のコールガールであることが分かり、バートはローレンからマイヤールという弁護士が仕組んだことを聞き出す。
父の飛行機の整備士が殺され、さらに飛行の目的地がアメリカだったことが判明する。
マイヤールは企業の買収を狙って接近してくるが、バートはこれをはねつける。
両親の埋葬の帰りにバートの車が暴走、衝突して炎上するが、バートは父が調査を依頼していたという記者デルマス(ピエール・グラセ)の車に同乗していたため助かる。
危険を感じたバートは、アメリカにいた妻ジョバネラと息子のユーゴをローマに避難させる。
バートはデルマスから、買収運動の黒幕が義父のガラジであることを知らされる。
ガラジの正体はネオ・ナチの台頭を画策するファシストのリーダーであり、組織によるヨーロッパの経済支配が目的だった。
デルマスのオフィスが殺し屋に襲撃されるが、バートはデルマスが従軍記念に置いていた手榴弾で反撃、危機を脱する。
デルマスが父に渡したという証拠を探すバートは、リザと結ばれた夜、父の薔薇園に隠されたマイクロフィルムを発見する。このシーンの枯れ果てた薔薇園で一輪だけ花をつけた造花の薔薇という映像は、なかなか印象的。
バートは全ての真相を告発した記事を準備して、妻ジョバネラにガラジの屋敷を出るよう連絡する。バートはジョバネラの告げたホテルの電話番号がニセだったことから、彼女も一味の共犯であることを知る。
バートは、ダビッド、デルマスとともにガラジ低に乗り込み息子ユーゴを救出。
バートはユーゴに、自分が父から受け継いだと同じコルデル家宗主の心得を伝える。
ユーゴの安全を確保したバートは、全てを暴露した告発記事の印刷開始をリザに指示。
印刷される雑誌、そのとき空港で暗殺者の集団がバートに襲いかかり銃撃する。ダビッドが駆け寄るが、バートはすでに息絶えていた。
空港の外には新たな相続人となったユーゴが立ちつくしていた。
暗殺シーンをスローモーションで繰り返すエンディングも印象的だった。
相続人