原題 ; THE HEART IS A LONELY HUNTER(1968) |
監督 ; ロバート・エリス・ミラー |
脚本 ; トーマス・C・ライアン |
音楽 ; デイヴ・グルーシン |
出演 ; アラン・アーキン、ソンドラ・ロック、ローリンダ・バレット、ステーシー・キーチ |
コメディから悪役まで幅広いキャラクターを演じるアラン・アーキン。そのアラン・アーキンがシリアス・ドラマにおける本領を発揮した作品。 聾唖者の彫金師シンガー(アラン・アーキン)は、同じく聾唖で知恵遅れの親友アントノポロズ(チャック・マッカン)とともに暮していた。 だが、アントノポロズは親戚により精神病院に入れられてしまい、シンガーは病院の近くに越して新たな下宿を探すことにした。 シンガーはケリー家に下宿することになった。父親が腰を痛めて働けなくなったため、娘の部屋を貸すことにしたのだ。 ケリー家の高校に通う娘ミック(ソンドラ・ロック)は、部屋を取られたこともあってシンガーに冷たくする。 シンガーは食堂で酔っ払いの失業者ジェイク(ステーシー・キーチ)に気に入られてしまう。聞こえていないだけなのだが、真剣に聞いてくれてると勘違いされたのだ。 そのジェイクが壁に体当たりして怪我したため、シンガーは通りすがりの黒人医師コープランドに診せ、自分の部屋に泊める。 コープランドは、結婚をめぐって娘ポーシャと仲違いしていた。 翌日、シンガーは治療費を払いにコープランドを訪れる。コープランドは自分は黒人専門医で昨日は仕方なく白人を診たのだと金を受け取らないが、聾唖の患者の通訳をしてほしいとシンガーに頼む。 たまたまコンサート・ホールの外で漏れてくる音楽に耳を傾けているミックを見たシンガーは、その曲のレコードを買う。作曲家を夢見るミックはこれをきっかけに心を開くようになる。 音楽を聞かせたいと、曲を説明しながらリズムをとるミック。それにあわせて手を振るシンガーだが、曲が終わっても手を振り続けてしまう。普段は健常者と変わらないようにも見えるシンガーの真実を、ミックが思い知らされる印象的なエピソードとなっている。 シンガーとミックは遊園地に遊びに行く。ジェイクが就職していたのだ。その遊園地で白人のチンピラにからまれたポーシャの夫ウィリーがチンピラに怪我を負わせてしまう。ポーシャは父に偽証してアリバイを作ってほしいと頼むが、コープランドは応じない。 現場に居合わせたジェイクは、先に手を出したのは白人だと証言するが聞き入れられず、失望して街を去った。 コープランドはガンにかかっているという秘密をシンガーに明かす。 ミックは自宅でパーティを開くが、弟たちのいたずらがきっかけで花火大会になってしまう。怒ったミックは皆を追い返してしまう。 やがてミックはパーティに来た友人の兄ハリーとつき合い始める。 ウィリーは脱獄未遂で独房に入れられ、かけられた鎖のため壊疽(えそ)を起こして片足を失ってしまう。ポーシャは、父を一生恨み続けると言い出す。 一方、アントノポロズにテスト退院が認められ、シンガーとともに外出する。甘い物のことになると見境のなくなるアントノポロズをレストランから連れ出すのに、好物のチョコでつったシンガーは、みじめな気分を味わう。 ミックは、父の腰が治らないと分かり学校をやめなければならなくなってしまう。 シンガーは、ポーシャにコープランドの病気を明かす。そのコープランドは刑務所でのことを抗議に裁判所におもむくが、黒人なため相手にされない。だが、娘とは和解することができた。 ミックはハリーと肉体関係を持つ。お互い初めてだったのだが、終わったとたんにメソメソ後悔するハリーにミックは失望感を味あわされる。 シンガーはミックに聞かせようと新しいレコードを買ってきたのだが、気の立っていたミックはシンガーをはねつけてしまう。 ある日、シンガーが見舞いに行くとアントノポロズは急死していた。 夜、ポーチに佇んでいたミックが、突然の銃声に驚きシンガーの部屋に駆け込むと、シンガーは拳銃自殺を遂げていたのだった。 墓参りに来たミックはコープランドに出会う。コープランドは言う「誰もが彼に悩みをぶつけて、誰も彼の悩みに気づかなかった」。一人残ったミック「あなたを愛していた」と墓に語りかけるのだった。 それぞれ悩みを抱えた登場人物たちは、物言わぬシンガーをかっこうの聞き役として、結果的に意志を一方通行させていく。 悩みを聞かされる側にばかり立たされる主人公が次第に孤独を募らせていく様が、切実なタッチで描かれている。 アメリカの田舎町の閉塞的な雰囲気も、リアルに表現されていると思う。 アラン・アーキンとソンドラ・ロックは、本作でアカデミー主演男優賞と助演女優賞にそれぞれノミネートされた。 後にクリント・イーストウッドの恋人となり共演を繰り返すようになるソンドラ・ロックだが、ジル・アイアランドとは一味違うと思ってしまうのは本作があるからかもしれない。 余談その一=ソンドラ・ロックは「ブロンコ・ビリー」と「ラットボーイ」でラジー賞ワースト女優賞にノミネートされた。「ブロンコ・ビリー」はイーストウッド作品でも特に好きな作品の一つで、ソンドラ・ロックも悪くないと思うのだが。(「ダーティハリー4」でのノミネートなら分かるけど)。 余談その二=ロバート・エリス・ミラー監督はテレビ出身で、監督作もテレフューチャーが多いためか、日本に紹介された作品は少ない。ジェームズ・コバーン主演の「新ハスラー」なんて佳作もあるけど、ブルック・シールズ主演で「ブレンダ・スター」なんて気の抜けたアメコミ活劇の駄作も撮ってたりする。 |