原題 ; I WANT TO LIVE!(1958)
 監督 ; ロバート・ワイズ
 脚本 ; ネルソン・ギディング、ドン・マンキウィッツ
 音楽 ; ジョニー・マンデル
 出演 ; スーザン・ヘイワード、サイモン・オークランド、ヴァージニア・ヴィンセント
バーバラ・グレアムの手記による実話を映画化した社会派サスペンス。
バーバラ・グレアム(スーザン・ヘイワード)はジャズと酒と男の無軌道な生活を楽しんでいた。
ある夜、バーバラががホテルに男としけこんでいると、FBIが売春容疑で乗り込んできた。彼女は妻子のいる男をかばって罪をかぶる。
出所したバーバラは知り合いに頼まれて泥棒のアリバイを偽証した。今度は一年の懲役をくらってしまう。
5年間の保護観察付きで出所したバーバラは、風紀課の刑事にあやうく引っかかりそうになったり、相変わらずの生活ぶり。
バーバラは泥棒の手先をしたりして暮らすが、足を洗ってヘンリーと結婚することにした。
息子のボビーも生まれたが、ヘンリーはギャンブル狂いのろくでなし。金を渡さないと暴力をふるう。
そんなある日、モナハンという夫人の殺人事件が発生した。
バーバラが切った小切手が不渡りになり、ビクスルという男が乗り込んでくる。仕方なく彼女は昔の仲間エメット・パーキンスと連絡をとった。
エメットは警察に追われており、仲間のジョン・サントと姿をくらますという。バーバラは犯罪者たちと同行することにした。
だが、すでに警察が尾行を始めていた。そうとは知らないバーバラは、一味の隠れ家に向かう。
ラジオでは一味の一人ブルース・キングがモナハン夫人殺人容疑で逮捕され、警察に情報を渡したという報道が流れる。
隠れ家はロス警察に包囲された。電気が切られエメットがまず投降。
バーバラに裏切られたと思い込んだジョンは彼女を殴りつけたあとに投降した。
意識が朦朧(もうろう)となったバーバラは、集まった記者たちに虎のぬいぐるみを振りかざすという奇態を演じ、トラの女の異名を付けられてしまう。
罪状も知らないまま逮捕されたバーバラは、モナハン夫人殺害の罪までなすりつけられてしまった。
自白すれば無罪放免などと言われるが、バーバラは不遜な態度を取り続ける。前科の多い彼女は、いつの間にか主犯格に祀り上げられてしまっった。
留置場で初めて自分が殺人容疑をかけられていることを知ったバーバラは、無実を主張する。
今は結婚して二人の子供もいる友人ペグが面会に来た。彼女はバーバラと似た者同士だが、きちんと足を洗って幸せに暮らしている。
検事もバーバラを主犯に仕立てようとしていた。事件の時、彼女は自宅にいたのだが、ヘンリーが行方不明で証明できない。
バーバラは留置場で殺人囚のリタからベンという男を紹介される。金さえ払えばアリバイを偽証してくれるというのだ。
ベンに言いくるめられたバーバラは、成り行きで犯行の時間にエメットやジョンとともにいたと嘘をついてしまう。
裁判が始まり、キングは4人で強盗に入り老夫人を殺したのはバーバラだと証言する。キングは証言すれば不起訴になる司法取引をしていた。
記者のエド・モンゴメリーはバーバラの取材を始める。
ベンは覆面捜査の刑事だった。バーバラが彼にアリバイの偽証を持ちかけたうえ、犯行を自供したことにされてしまう。留置場での会話はテープに録音されていた。
リタは司法取引で執行猶予となった。
ヘンリーが法廷に現れるが、アリバイの証明には役にたたない。
バーバラたち3人は2審まで有罪判決を受け、キングは無罪放免となった。
再審請求は却下され、バーバラに死刑が宣告される。
バーバラはコロナ女性刑務所に移送された。大学のイメージで設計された刑務所なのだという。
心理学と犯罪学の専門家カール・パームバーグがバーバラをテストする。彼はバーバラが無実で、エメットとジョンが自分たちの刑を軽くしようと偽証したことを見抜く。
カールは控訴を主張し、エドに世論をバーバラ支持に変えるような記事を書くように要求する。
刑務所の中でもバーバラのジャズ好きは変わらない。
だが、控訴は棄却されてしまった。死刑は12月3日と決まる。
カールは延期の申請を主張するが、バーバラは限界に達していた。減刑の望みがないなら、もう終わりにしてと泣き出す。
バーバラは夜、寝ていても悪夢にうなされる。
死刑の4日前、バーバラはボビーと面会した。
そこに最高裁が死刑を延期したとの知らせが入る。バーバラは神に感謝した。
だが、唯一の頼みだったカールが病気で急逝してしまう。
エドは協力を続けていたが、死刑執行は6月3日に決まった。
死刑前日、報道は過熱しバーバラを移送する車には野次馬が群がる。
バーバラは身体検査を拒否。所長には、ふてぶてしい態度を見せる。付き添いの看護婦もバーバラという名前だった。
神父にバーバラは、あの世で自分の無実を知っているモナハン夫人に会うのが楽しみだと言う。
ラジオでボビーを養子にしようという夫婦が4組現れたというニュースが流れる。
バーバラはマシューズ弁護士に、ボビーを祖母の家に預けるよう約束させた。彼は知事と面会して処刑延期を申し入れるという。
バーバラは看護婦にヘンリーは子煩悩な良い夫で、彼が銀行の副頭取に昇進するため自分が身を引いたのだとホラ話をする。
早朝、所長は知事からの電話を優先するため職員に電話を使わないよう通達を出す。
エドはジョンに面会して証言を得ようとするが、拒否されてしまう。
刑務所ではガス室での処刑準備が進められていた。電話が鳴り知事が弁護士と判事が審問する間、処刑の延期を認めたとの知らせが入る。
バーバラは中止の決定に望みをかける。刻々と時間は過ぎていく。
結局訴えは却下され処刑執行が決まった。
バーバラは着飾りイヤリングをはめて支度する。虎のぬいぐるみは看護婦の子供にとプレゼントした。
ガス室へは靴を脱ぐ決まりだが、バーバラは拒否する。時間が来て彼女はガス室へと向かう。
その時、再び電話のベルが鳴り響いた。再度の延期に、まるで拷問だわと嘆くバーバラ。
最高裁に修正書類が提出されたのだ。
バーバラたちは黙りこくってじっと待ち続ける。電話が鳴り、死刑執行命令が下った。
「見物人を見たくない」バーバラはアイマスクをつけてガス室に行くことにした。彼女は最後に神父の耳元で私は殺してないとつぶやく。
ガス室が閉じられ、薬剤が注入される。化学反応で毒ガスが湧き出してきた。見つめ続ける見物人たち。身悶えするバーバラ。
こうして処刑は終わった。
うなだれるエドにマシューズがバーバラの遺書を渡す。それには彼女からエドへの感謝がつづられていた。
ロバート・ワイズ監督の演出力が光る緊迫感に満ちた秀作。冤罪というものの恐ろしさが、ひしひしと伝わってきた。
特に終盤、死刑の延期が繰り返される場面は、見ている者まで息苦しくなってくる。
スーザン・ヘイワードもアカデミー主演女優賞受賞が納得できる熱演。モラルには欠けるが実はお人好し、損な役回りばかりでついには破滅させられてしまうヒロインを見事に演じきっている。

私は死にたくない