原題 ; LE JARDIN DES PLANTES(1994)
 監督 ; フィリップ・ド・ブロカ
 脚本 ; フィリップ・ド・ブロカ
 音楽 ; シャルル・クール
 出演 ; クロード・リッシュ、サロメ・ステヴナン、カトリーヌ・ジャコブ、ローズ・ティエリ
フィリップ・ド・ブロカ監督晩年の作品。日本では劇場公開されたが、本来はテレビ用に撮られたものらしい。
第二次世界大戦末期のパリを舞台に、父を失った少女と祖父のドラマを、時にはファンタジックに時にはシニカルに描いたコメディ。
第二次大戦末期、ドイツ占領下のフランス。フェルナン・ベルナール(クロード・リッシュ)は生物学の教授だが、今はパリ郊外の動植物園で妻のジャンヌ(ローズ・ティエリ)と二人暮し。
ある日、息子アルマンが孫娘フィリッピーヌ(サローメ・ステヴナン)を連れてやって来た。アルマンは戦争に興味のない洒落者の歯科医。
自分にも勇気がないことを気にしているフェルナンは、ドイツ軍に取りいっているアルマンをなじる。
フェルナンと親子喧嘩をしたアルマンは、フィリッピーヌを置いて出て行く。彼は外出禁止令を破った罪でドイツ軍に捕まり、レジスタンスの破壊工作に対する報復として処刑されてしまう。
フェルナンが受け出しに駆けつけたのだが間に合わなかった。
フェルナンは、フィリッピーヌを女優の母親ミシェリーヌの元に連れて行くが、舞台稽古に忙しく、まともに話も聞かない。
結局、フィリッピーヌをそれまでいた寄宿舎に戻すフェルナンだが、寂しそうな姿に耐え切れず連れ戻した。
真実を伝えることができないフェルナンは、アルマンがレジスタンスのリーダーとして潜伏していると嘘をつく。
アルマンの死を知ったミシェリーヌがフィリッピーヌを連れにくるが、フェルナンは追い返す。
ジャンヌは元メイドで、フェルナンが給料削減のために結婚したなどと悪口を言うが、本当は仲が良い。
フィリッピーヌが父親の写真を欲しがった。しかし、フェルナンは動植物の写真に夢中で家族の写真がない。仕方なくアルマンの死に顔の写真を生きているように細工して渡す。
レジスタンスの手伝いがしたいというフィリッピーヌに、フェルナンはモンパルナスの地下墓地で待つという偽の通信文を見せる。
博物館から地下墓地へと潜り込むフェルナンとフィリッピーヌ。そこにはドイツ軍の監視塔を中立化しろという命令と妖精のドレスを置いておいた。
迷った二人はドイツ軍司令部に出てしまいそうになったりしながら、なんとか帰還した。
動植物園に設けられた監視塔には、のんびりした二人のドイツ兵が詰めている。フェルナンとフィリッピーヌはドイツ兵のポットに塩を入れたりベッドにかゆみ薬(そんなのあるのか)を入れたりしてレジスタンスごっこ。
フェルナンはレジスタンスの活動が報じられるたびにアルマンの手柄だと大騒ぎするが、あきれたジャンヌは冷たくあしらう。
その頃、見張りのドイツ兵は、フェルナンたちのいたずらに文句を言いながら身体を掻いていた。
ある夜、家を抜け出したフィリッピーヌは監視塔のサーチライトをパチンコで破壊、父親を探してさまよっていると本物のレジスタンスに遭遇。彼女を家に送ったレジスタンスのリーダー、ペリゴールは、アルマン大佐とは何者かフェルナンを問いつめる。
ペリゴールは深く追求せず、英国人やユダヤ人を匿うようフェルナンに頼む。
一方、フィリッピーヌは写真の細工に気づいてしまった。おじいちゃんは嘘をついた。ひどい人よ。怒るフィリッピーヌをジャンヌは慰める。
監視塔のドイツ兵も、おじいちゃんは嘘で息子を生き返らせたかったんだ、と説明する。
パリ解放の戦闘が始まる中、ペリゴールがユダヤ人一家と英国兵二人を置いていった。フィリッピーヌとフェルナンは監視塔にいる二人のドイツ兵も助けることにした。
ペリゴールは、フェルナンの家をレジスタンスの本部にする。捕虜を連れて列車で逃亡するドイツ軍を阻止するため線路を爆破しなければならないが、レジスタンスには余力がない。
パパに頼めばいいと、フィリッピーヌが突然提案する。ペリゴールはダイナマイトを置いていった。
なんとか駅を爆破しなければ、レジスタンスから敵とみなされてしまう。あせったフェルナンは爆弾をバッグに詰めて駅に向かった。
なんとか爆破に成功。偶然出会ったレジスタンスの連隊長を助け出して逃げ帰った。
爆破をアルマンの手柄にするフェルナン。戦闘は激化し、彼はドイツ軍本部爆破もアルマンならできるかもしれないと引き受ける。
かって通った地下道を行くフェルナン。ヘルメットをかぶったフィリッピーヌも追ってきた。彼女の指示で爆弾を仕掛けると燃え上がったのは寄宿舎。フィリッピーヌは戦争が終わっても、ここに戻りたくなかったのだ。
今度こそドイツ軍本部を爆破しに行こうとしたとき、解放の鐘が響き渡った。
ド・ゴール将軍からアルマンに勲章が贈られた。アルマンはいつの間にか各地で破壊工作を続け、フランス解放のために死んだ英雄ということになっていたのだ。
テレビ用の作品であるためか「まぼろしの市街戦」のような痛烈な風刺精神は感じさせないものの、フィリップ・ド・ブロカ作品らしい楽しさを持った作品に仕上がっている。
内心は憶病な祖父が嘘を重ねることで死んだ息子が勇敢だったという偽りの思い込みを保とうとするのに対し、孫娘は実行を持って父親を英雄に仕立て上げてしまう。
だましていたはずか、すっかり孫に振り回されてしまう老人の姿がおかしい。
イギリス人、ユダヤ人、ついでにドイツ兵も助けてしまえ、という大らかさもド・ブロカ作品らしい魅力となっている。
おじいさんとおばあさんの描写が独特で、二人の関係が把握しづらいのが難点か。
劇場用作品であれば祖父はフィリップ・ノワレの役どころだったかもしれない。
名演技を披露する子役のサロメ・ステヴナンは父ジャン=フランソワ、兄弟のサガモア、ロバンソン、ピエール皆俳優という役者一家の出身。3才で映画デビューしている。テレビが中心なので日本には紹介されていないが、本作後もコンスタントにキャリアを積んでいるようだ。
陽だまりの庭で