原題 ; JULIA(1977) |
監督 ; フレッド・ジンネマン |
脚本 ; アルヴィン・サージェント |
音楽 ; ジョルジュ・ドゥルリュー |
出演 ; ジェーン・フォンダ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ジェースン・ロバーズ |
劇作家リリアン・ヘルマンの自伝小説を元に、地下組織に身を投じて反ナチ活動を進めるジュリアとの友情を軸に、サスペンス・タッチも交えて描いた秀作。 フレッド・ジンネマンの風格ある演出と、出演者たちの見事な演技、ジョルジュ・ドゥルリューの格調高い音楽が巧みにアンサンブルをなし、感銘深い作品に仕上がっている。 1934年、劇作家リリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)は、恋人のハードボイルド作家ダシェル・ハメット(ジェーソン・ロバーズ)とともに海辺の家で創作に取り組んでいた。 リリアンは古い友人ジュリア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を回想する。 まだティーンエージャーの二人。ジュリアは裕福な家の娘だが、一族に反感を抱いていた。 家族は海外を旅すれば飢えや病気に苦しむ者がいても目を向けるなと言い、一家の使用人は地下室で暮している。多感なジュリアには、そんな社会の矛盾が許せなかった。 月日がたち成人しても二人の付き合いは変わらなかった。 リリアンは出版社に勤めながら作家を目指し、ジュリアはオックスフォード大学に進み医者を目指す。 やがてジュリアはウィーン大学に留学するが、それはナチズムとファシズムが台頭する闇の時期でもあった。 スランプに悩むリリアンはパリで執筆を試みることにした。ジュリアに連絡を取るが少し様子がおかしい。 ある日、ジュリアが重傷を負ったとの知らせが入り、リリアンはウィーンへと向かう。 ジュリアは包帯を巻かれた痛々しい姿だったが、多くを語らない。街を歩いていると一人の少年からジュリアからのメモを渡される。自分も身を隠すのでリリアンもパリに帰るようにと書かれていた。 それからしばらくジュリアの消息はつかめなかったが、戯曲は完成した。 だが、ハメットは破棄して書き直すよう勧める。苦心して書き直した原稿はハメットに絶賛された。 一般にも受けて人気作家となるリリアン。 再びパリに渡ったリリアン。ジュリアはソ連にいるという噂もあったが連絡はつかない。 そんな時、怪しげな男ヨハン(マキシミリアン・シェル)が接近してきた。ジュリアはヨハンの話を聞くようにと手紙を書いていた。ヨハンは、モスクワ行きをベルリン経由に変更するようリリアンに依頼する。反ヒトラー組織の資金五万ドルを運んでほしいというのだ。 危険な任務であり、リリアンも即答はしかねた。だが、かってジュリアが丸太橋を渡るには決意が必要だと教えてくれたことを思い出したリリアンは、駅でヨハンに合言葉を言って任務を引き受ける。 ワルターと名乗る若者から荷物を受け取ったリリアン。客室で相席となった二人もジュリアの同士であるらしかった。 国境の検閲も無事に抜け、荷物検査もパス。ベルリンでジュリアとの再会を果たす。 ジュリアはウィーンでの負傷で義足となっていた。ジュリアは新しい義足を作りにアメリカへ行く予定があるので、その時リリーと名付けた自分の娘を預かってほしいとリリアンに頼む。 だが、ジュリアはフランクフルトのアパートでナチに殺害されてしまう。 リリアンはジュリアの娘リリーを捜して回るが、ついに見つけることは出来なかった。 ジュリアの実家に行っても、ジュリアの死すら認めない有様。 リリアンにとって、慰めはハメットだけだった。 やがてハメットも逝き、共同生活は30年で終わった。ハメットに頑強な女性と呼ばれていたリリアンは、その後の長い人生を一人で過ごした。 余談=リリアン・ヘルマンの代表作は、女性同士の友情を心ない周囲の人々にレスビアンと受け取られ悲劇的な結末を迎える「子供たちの時間」。この戯曲は「この三人」(1936)「噂の二人」(1961)と二回映画化されており監督は両作ともウィリアム・ワイラー。一回目の映画化では時代的に同性愛の問題を掘り下げることが出来なかったため、ワイラー監督に不満が残り、後に再映画化したらしい。「噂の二人」はオードリー・ヘプバーンとシャーリー・マクレーンの共演で有名だが、「この三人」に主演したミリアム・ホプキンスも脇を固めている。本作でもリリアンがジュリアとの関係を同性愛と揶揄(やゆ)される場面があり、そのような実体験から「子供たちの時間」が生み出されたことが分かる。リリアン・ヘルマンは数本の映画脚本も手がけており、こちらの代表作はウィリアム・ワイラー監督の「偽りの花園」とアーサー・ペン監督の「逃亡地帯」。リリアン・ヘルマンは1984年没。 |