かぶりつき人生

　年度　；　（1968）

　監督　；　神代辰巳

　脚本　；　神代辰巳

　音楽　；　真鍋理一郎

　出演　；　殿岡ハツ江、丹羽志津、玉村駿太郎、中台祥浩

田中小実昌の小説を原作とした風俗映画。神代辰巳の監督デビュー作。日活ロマンポルノ以前における唯一の監督作品でもある。
名古屋で働いていた洋子（丹羽志津）は母親の笑子（殿岡ハツ江）が結婚するというので大阪にやって来た。
笑子が、いい歳をしてストリッパーを続けていることを知り洋子は呆れる。
笑子は海辺の射的小屋を洋子に任せてストリップの巡業に旅立っていった。
巡業先で笑子はわいせつ罪の現行犯で逮捕されてしまう。
罰金の払えない笑子のダンナ勝チン（玉村駿太郎）が洋子に泣きついてくる。
勝チンは辺りのテキヤの親分だった。罰金のため洋子は、彼の紹介で喫茶店で前借りして１ヶ月働くことになる。
そこに勝チンの前の女が戻ってくる。勝チンと笑子が住んでいる家も女の物だった。
だまされたことに気づいた笑子は落ち込む。洋子はどうせ同じことを繰り返すと相手にしない。
勝チンは女とヨリを戻し、洋子は出て行く。
ストリップは取り締まりが厳しくなり、客に刑事が追い出されたリすることもある。
洋子は大劇場のステージで踊るヌードダンサーになった、マネージャーの恭やんは彼女にプロポーズするが、ふられてしまう。
演出家の倉さんにほめられた洋子は、ダンサーを続けていくことにする。
倉さんが好きになった洋子は、彼と寝る。洋子は処女だった。
笑子は寂れた温泉街巡業を続けていた。さすがに年でお座敷への出演は断られることが多い。
若い女と組んでレズショーをする話も出たが、笑子はストリップのチケットを賞品に高額な射的で儲けようなどとと考える。
一方、洋子は単独でステージをこなすようになっていた。
そこに笑子の手伝いをしていた少女が、洋子に憧れて会いにきた。洋子に冷たくされ警察まで呼ばれそうになった少女は、洋子を突き飛ばす。
はずみで洋子は車に接触して怪我をした。軽症だったが、この事故をネタに売り出そうと計画する。
洋子は名古屋時代に初恋の相手だったヤクザと、堅気になったら結婚する約束をしていた。彼女は記者の坂本に、そのことも書いてもらう。
坂本は洋子をピンク映画に売り込むという。
そのころ、笑子はサングラスをかけてステージに立つようになっていた。それは男に絶望した孤独の表現のようでもあった。
洋子は美容院を始めるという笑子の話を、嘘と感じながらも無理に信じ込もうとする。
洋子は坂本と結婚した。二人が食事していると、例の少女がやって来た。
坂本は少女も売り込もうとしていたのだ。洋子は自分だけ特別扱いされていたのではないことを知る。
ピンク映画に出演する洋子。彼女は、どこまで自分でどこまで演技か分からないという。
洋子と少女との共演が決まった。前の事件を利用して話題づくりをしようというのだ。洋子は拒否するが、坂本は勝手に企画を進めていく。
金まわりの良くなった洋子だが、坂本との仲は冷えていく。彼女には坂本がヒモのように思えてきたのだ。
洋子は、アイデア商法の巡回フトン乾燥屋、伊藤と出会う。彼は洋子のファンだった。
伊藤と仲良くなった洋子は、坂本殺害を考え始める。彼にマンションの鍵を渡し坂本の寝込みを襲って殺すように頼むが、結局これは話だけに終わった。
レーサーを本業にしている伊藤は洋子をレーシングカーに乗せる。
記事を読んだ初恋の相手という男が洋子を訪ねてきた。約束どおり堅気になったというが、洋子は記事になった初恋の相手は別の男だと言い張る。
ヤケになった男に洋子は刺されてしまう。救急車で運ばれる洋子は、自分が死んだらレーサーの伊藤に５０万円の貯金を渡すようにいうが、今度も軽症だった。
逃亡する男は子供を人質にとるが、撃たれて警察に捕まった。なぜか男は洋子と同じ救急車に運び込まれる。
洋子は男に出所したら一緒にバーでも始めようかと誘うのだった。
ノースターの地味な小品だが、ストリッパーを主人公とした、いかにも神代監督らしい題材。
ヌードシーンは少なく、むしろロマンポルノの時代に入っていれば、もっと自由な表現ができたのではないかと思う。
ヒロインは、人気が出たといっても、せいぜいピンク映画女優。自分を刺した相手に飲み屋でもやろうかと声をかけたりする。
内容的に独特な非上昇志向が感じられて面白い。例えば増村保造＋渥美マリのコンビによる男を渡り歩いてのし上がっていくヒロインを描いた作品と比較すると興味深い。
ストリッパーとして盛りを過ぎてしまい、周囲を拒絶するかのよいにサングラスをかけてステージに立つ母親が印象的だった。