年度 ; (1975)
 監督 ; 神代辰巳
 脚本 ; 神代辰巳
 音楽 ; 
 出演 ; 谷ナオミ、岸田森、東てる美、芹明香、山谷初男、庄司三郎、高橋明
数多くの作品で名演・怪演を見せた岸田森としては小沼勝監督の「ロストラブ-あぶら地獄」につづく2本目の日活ロマンポルノ出演作。前年に「傷だらけの天使」の1エピソードを神代監督が担当した縁かもしれない。
日活SM路線の女王的存在だった谷ナオミが主演したため、特異なタイトルが付けられたが、原作は藤本義一の「浪花色事師=ブルータス・ぶるーす」。ブルーフィルム(今で言えば裏DVD)の製作者たちを描いた艶笑コメディー。
十三(岸田森)はブルーフィルムの監督。和歌山の旅館で撮影していたが、女優のメイ子(芹明香)が男優一(はじめ)の子供を妊娠したため、胎教に悪いから出産まで引退すると言い出す。
十万の赤字を出して撮影は中断、スタッフの安さん(高橋明)、石やん(庄司三郎)らとともに大阪に引き上げる。
16ミリ・カメラを使い、大島渚や今村昌平を尊敬する十三は「そこらのヤクザの資金稼ぎとはモノが違う」とプライドを持っていた。彼は、その心情をもってメイ子を説得しようとするが、彼女にすれば「アンタ、おかしいんとちゃう」ということになる。
十三はエロテープ製作の副業もしていた。歯の治療で痛がる女(東てる美)の声に、猫がミルクをなめる音や動物の鳴き声をダビングして処女喪失テープをでっち上げるのだ。女優に演じさせて録音したほうが早いように思えるが、これもプロのこだわりということなのだろう。
十三が歯医者で隠し録りしたテープに、待合室で見かける女性・幾代(谷ナオミ)が歯医者(山谷初男)と密会している声が録音されていた。
十三は探偵社の人間と偽って幾代と接触し、彼女が金持ちの老人・大垣の二号だと知る。彼は幾代にテープを聞かせ、3万でテープを渡すと言う。
十三はチャタレー夫人を連想させる幾代の風情にコロッといかれてしまった。なんとしても彼女でブルーフィルムを撮る、と燃える十三。
幾代は庭木で首吊り自殺を図るが、どうやら、つけまわしていたらしい十三が助ける。
幾代は十三に3万を渡す。脅迫にしては安すぎるといぶかる幾代に、十三は妻が子宮ガンで手術代が3万だけ足りなかったと、同情を引く話をする。もちろんウソ。。
彼は渡す写真があると幾代を自室に連れ込む。そこでフィルムを間違えたと言ってブルーフィルムを見せる。
老人相手で欲求不満の幾代は次第に興奮していく。すかさず抱きつく十三。
絡み合う二人が佳境に入るとカメラを持った安さん入ってきた。十三は、驚いて抵抗する幾代を押さえつけて続ける。やがて幾代も再びその気になった。ワイらは今芸術を作ってまんのや。欲情した幾代には十三の言葉も聞こえていない。
撮影を終わり二人きりになったところで十三は達し、幾代は失神する。
再び旅館へと撮影に向かう十三チーム。本当に他の男としてもいいのかと困惑する幾代に、十三は、俺たちはプロだと言い切る。撮影が始まり、一との絡みに悶える幾代。
その光景に腹ボテのメイ子は嫉妬して「「イッたらあかんで」と騒ぎ出す。メイ子を押さえながら撮影を続ける十三だったが、自分も「いかんといてや」と言い出す。二人が達した瞬間、十三は嫉妬に駆られて二人を引き離してしまう。
せっかく撮影したフィルムが使いものにならないと、おかんむりの安さん。
「修行が足りんのや」茫然自失の十三、他の男でイッてごめんと謝る幾代。その姿にウェディングマーチがかぶさってエンドマークとなる。
あれこれ理屈をこねてブルーフィルムの芸術性を説きながら、結局嫉妬心に負けてしまう男を岸田森が快(怪)演している。
「傷だらけの天使」における鳴海を代表として、クールな知性派を装いながらも、その実私情に流されやすい小心者を演じると岸田森は見事な存在感を見せた。
黒薔薇昇天
ストーリーは基本的にラストまで
紹介してあります。
この作品はDVDが発売されているので
鑑賞が可能です。御注意ください。