原題 ; THE INCREDIBLE MR. LIMPET(1963)
 監督 ; アーサ・ルービン
 脚本 ; ジェームソン・ブリュ−ワー、ジョン・C・ローズ
 音楽 ; サミー・フェイン、ハロルド・アダムソン
 出演 ; ドン・ノッツ、キャロル・クック、ジャック・ウェストン、アンドリュー・ダガン
実写とアニメを合成したコメディー。歌も入ってミュージカル仕立てになっている。
隠れた人気作で、キネマ旬報に手塚治虫も気に入っていたという記事が載っていたと思う(記憶違いだったらごめんなさい)。
昔テレビ放映で観たときは単純に冒険コメディーとして楽しんだのだが、今見ると、ちょっと好戦的な印象を受ける。さすがヴェトナム戦争以前のアニメというところか。
国防総省と米海軍への、軍事機密映画化許可に対しての謝辞というお遊びで映画は始まる。
二人の軍人ジョージとハーロックが、1945年以来封印され続けた機密書類を取り出す。
それは秘密兵器リンペットの資料だった。二人はリンペットを現役復帰させるという使命を帯びていた。
1941年9月、ヘンリー・リンペット(ドン・ノッツ)は船積み代理店の、うだつのあがらない事務屋だった。
小柄で貧相な彼は、視力などの問題で心ならずも兵役免除となっていた。また、魚は人間より幸せと信じて憧れ、気の強い妻のビシー(キャロル・クック)より金魚を可愛がる変人でもあった。
ビシーと友人のジョージ(ジャック・ウェストン)とともにコニーアイランド観光に行くリンペット。
軍人のジョージは、アメリカ近海にはナチスのUボートがうようよしていると言う。
港で魚に見とれていたリンペットは海に落ちてしまう。ジョージはカナヅチのリンペットを救おうとするが見つからない。
その頃リンペットは願いがかなって魚(アニメ)となっていた。
魚になってもうだつのあがらないリンペット。仲間外れにされたりサメに追われたりする。
だが、彼には口から強力な音波を発する能力が備わっていた。なぜ、魚が超音波を発し人間の言葉を発音できるのかは一切不明。
この力でヤドカリのクラスティを大ダコから救って仲間になる。
釣られそうになっていたレディフィッシュも助けて惚れられる。
レディフィッシュがリンペットを産卵場所に誘って、クラスティが海水をドロドロに濁らせるだけさと毒づく大人のギャグも登場。
結婚していると言っても、レディフィッシュには理解できない。
去っていくレディフィッシュを、おっかないビシーの幻覚を打ち破って追うリンペット。
レディフィッシュとはぐれてしまったリンペット。彼は第二次大戦の開戦を知って愛国心に燃える。
Uボートを発見したリンペットは米軍艦に声を掛けるが、声の主が見えないので攻撃されてしまう。潜ってソナーに語りかけることにした。
彼の指示によりUボートを撃沈する米軍艦。だが、声の主は不明のまま。
リンペットはジョージとの会見を要求。
訳も分からず連れて来られたジョージは、死んだはずのリンペットの声に失神。
海上でジョージと対面するリンペット。申し出を受けた海軍は、彼を駆逐艦配備とする。
作戦はめざましい成果を挙げ、次々とUボートを撃沈していく。謎の新兵器リンペットはドイツ軍の脅威となった。
ナチスの想定したリンペットは、海鳴り装置付き新型機雷。さっそく海鳴り追尾レーダー付き魚雷が開発された。
リンペットは、ビシーへの報酬支払いと大尉への昇進を要求、承認される。
リンペットの生存を知ったビシーは面会を求める。
その頃、リンペットはノルマンディー上陸の船団を導いていた。鼻はないけど鼻高々のリンペット。ラシュモアに魚の彫刻ができる幻想を見る。
ところが調子に乗っているうちにメガネを落とし船団とはぐれてしまう。
よれよれで難破船に戻ったリンペットは、案内役としてクラスティを背中に乗せて再出発。自分の位置を米艦隊に知らせるため音波を発信する。
この音波を捉えてナチスのUボート船団も集結してきた。リンペットの音波を追尾する魚雷。魚雷の機能を知ったリンペットは、逆に誘導してUボートを次々と撃沈していく。
海底はUボートの墓場と化す。この海戦によりアメリカは第二次大戦に勝利した。
レディーフィッシュとともにコニーアイランドに向かったリンペットは、魚の姿でビシーと再会した。魚の世界で生きる決心をした彼は、ビシーに別れを告げた。
別れ際にビシーはリンペットに新しいメガネをプレゼントする。
こうしてリンペットは歴史から姿を消した。
そして現在、ジョージと上司のハーロックは、軍の密命によってリンペットの協力を再び得ようとしていた。代将に任命されたリンペットは、アメリカ海軍のためイルカの研究に協力を始めるのだった。
このラストも、今見ると「イルカの日」を連想させて、ちょっと後味悪く感じてしまう。
余談その一=以前、ジム・キャリー主演によるリメイクの企画があった。大半は吹替えで済み、多忙なジム・キャリーの拘束時間が少ないことから実現が有望視されたが、今のところ宙に浮いたまま。「ファインディング・ニモ」と「シャーク・テイル」が大ヒットして三番煎じとなってしまうため、もう実現は難しいかもしれない。
余談その二=ドン・ノッツは、あまり知らない俳優なのだが、人気のあったボードビリアンなのではないかと思う。もう80歳になるのだが、現役で活躍している。

秘密兵器リンペット