原題 ; THE MOUNTAIN(1955) |
監督 ; エドワード・ドミトリク |
脚本 ; ロナルド・マクドーガル |
音楽 ; ダニエル・アンフィシアトロフ |
出演 ; スペンサー・トレイシー、ロバート・ワグナー、クレア・トレヴァー、アンナ・カシュフィ |
「ケイン号の叛乱」「嘆きの天使」のエドワード・ドミトリク監督が、名優スペンサー・トレイシーを主演に兄弟の葛藤をテーマとして描いた山岳映画の名編。原作はアンリ・トロヤ。 アルプス山中にインドの旅客機が墜落。生存者はいないと推測された。 アルプスの麓に住む初老のザカリー(スタンリー・クレイマー)は羊飼いをしていた。 近所のマリー(クレア・トレヴァー)はザカリーに惚れているのだが、年の離れた弟クリス(ロバート・ワグナー)の世話で手一杯の彼は興味を示さない。 ザカリーは旅客機墜落と救助隊の結成を知る。重要書類などの捜索が目的だという。 クリスが救助隊に参加したいというので口利きをしようとするザカリー。 アルプス初登頂者であるザカリーに隊の先導が依頼された。だが、彼は断る。3度山から落ちて恐怖心に取り付かれ山から離れていたのだ。 ザカリーはつましい暮らしをしていたが、クリスは貧乏を嫌っている。 登山ガイドをしていた頃はザカリーも羽振りが良かった。だが、事故で重傷を負い客に死なれたとき山に見限られたと感じていた。 クリスは山小屋を売ってまとまった金を作ろうと企む。ザカリーは長年住みなれた家を売ることに反対する。 救助隊が遭難し先導の登山ガイド、サーヴォスが死んだとの報せが届く。ザカリーは古い友人の死を嘆く。 サーヴォスは二人でクレパスに落ち、2番手を助けるため自らザイルを断ったのだった。 クリスは旅客機が大金を積んでいたという情報を持ってくる。彼はザカリーに二人で登って金品を盗もうと提案した。 怒り反対するザカリー。死者から盗むくらいなら家を売れという。 しかし、クリスの執着は強く、一人で登山の準備を始める。 登山は素人のクリスに単独登頂は不可能だ。結局負けてザカリーは登山を決意する。 ザカリーが先行して登っていく。ザイルでつなぎクリスの安全を確保する。 岩壁のわずかな隙間に指を入れ身体を支える。切り立った岩壁に1ヶ所1ヶ所ハーネスを打ち込みザイルを通しては登っていく。 クリスが滑落したがザカリーが手を血まみれにしながらロープを止めた。宙吊りのクリスを必死に引き上げていく。 怖気(おじけ)づいたクリスは引き返すと言い出すが、すでに難所はすぎていた。ザカリーはむしろ登頂したほうが楽だと主張する。 ザカリーは兄弟が力をあわせた今日の登頂は一生の思い出になると喜ぶ。 ついに遭難機を見つけたクリスは散乱した荷物をあさり始める。 鉄材で十字架を作るザカリー。クリスは、来たことがばれてしまうとそれを捨てる。 機内に生存者がいた。若いインド人女性(アンナ・カシュフィ)だった。なんとか助けようと看護するザカリー。 クリスにとっては目撃者は死んだほうが都合よかった。 翌朝、ザカリーはソリを作って女性を下山させようとする。自分の犯罪がばれると反対するクリス。 血迷ったクリスは、ザカリーを突き飛ばし女の首を絞めようとする。ザカリーはクリスを殴って気絶させ、その隙にソリを引いて下山を始めた。 気づいたクリスはあわてて兄を追う。 クレパスにできた氷の橋。ザカリーは安全そうなものを選んで渡って行く。ソリの重さで橋は崩落したが、間一髪で渡りきることができた。 追いついたクリスが、どの橋が安全か尋ねる。残った橋はどれも危険なので、ザカリーは答えることができない。 クリスは、ザカリーの制止を聞かず橋を渡り始める。置き去りにするために嘘をついていると思い込んだのだ。 橋は崩れ、ザカリーの目の前でクリスはクレパスに中へと消えていった。 雪のない麓に着き、ザカリーは女性を抱えて下山する。弟の思い出を語りながら歩くザカリー。 愛犬の吠える声が聞こえてきた。 町ではザカリーが生存者を救出したことが話題になっていた。 口を閉ざしていたザカリーが話し始める。自分が事故機をあさろうと提案し、反対するクリスを無理矢理連れて行った。 女性を助けたのもクリスだったと説明する。 記者も居合わせた人々も誰ひとり信じない。それでもザカリーはクリスの手柄だと書かせる。記者はこっそりとメモを破り捨ててしまう。 マリーの馬車に乗り、ザカリーは山小屋へと帰って行くのだった。 かなり昔にテレビ放映を見て強い印象を受けた作品。 ようやく見直すことができた。 1時間半枠の放送で大幅にカットされていたはずなので、ノーカット版は初めて見た。 兄弟にしては年が離れ過ぎて見えるので、親子という設定だと記憶違いしていた。 アルプスで一大ロケーションを敢行したという触れ込みだが、実際にはかなりの場面がセット撮影だったらしい。真偽は分からないが、スペンサー・トレイシーの極度な高所恐怖症が、その理由という記事もあった。 そのため臨場感に欠けて興ざめという評を読んだこともあるが、エドワード・ドミトリクの的確な演出で展開自体は緊張感に満ちている。 スペンサー・トレイシーの演技もさすがに見事で、ダメな弟に対する深い愛情を切々と表現している。 クライマックスはなかなか感動的だった。 |