年度 ; (2004)
 演出 ; 西谷弘
 脚本 ; 君塚良一
 音楽 ; 大島ミチル
 出演 ; 田村正和、ユースケ・サンタマリア、瀬戸朝香、財前直見、森田彩華、貫地谷しほり
2001年10月から放送された「さよなら、小津先生」のスペシャル版。
光陰高等学園で小津南兵(田村正和)は教壇に立っていた。
クラシック同好会の顧問になった小津は、クラシックにワインは欠かせない、と女子高生に講義して学年主任の佐野宗男(小日向文世)につるし上げを食うが動ぜずケムに巻く。
鹿松哲郎(谷啓)が亡くなり娘のまなび(西田尚美)が学園長を継いでいた。
バスケ部の顧問、加藤賢=カトケン(ユースケ・サンタマリア)と足利みゅー(瀬戸朝香)は女子部の2年生に問題があるともめている。
小津にもらったワインでできあがったまなびは、調子良く女子部の顧問を小津に押しつけてしまう。
女子部員の問題児は、ランニング中にもケータイでメールを打っているワカナ(邑野未亜)、ユニフォームをヘソ出しルックにしているアヤコ(大久保綾乃)、化粧しているサヤカ(上野樹里)、ブランド物好きなユリア(貫地谷しほり)。
みゅーによれば、2年生でまともなのはキャプテンのクミ(森田彩華)だけだという。
光陰に産休教師の代理として 郷田静子(財前直見)がやって来る。小津と同様、元銀行のエリートだった。
静子は授業を自習にして、銀行に出す履歴書を書いている。かっての小津と同様に彼女にとって教師はつなぎの仕事でしかない。
サヤカは雑誌モデルをしており、カメラ小僧が押しかけてくる。
ユリアはブランド物を買うため援助交際で稼いでいた。それに気づいた小津は練習に集中するよう説得するが、ユリアは耳を貸さない。
帰ろうとしていた小津はアヤコに「お父さんと呼んでもいいですか」と声をかけられる。
体育館ではクミが一人練習していた。
クミが帰宅しても、母親(木村多江)は彼女に食事を作っておらず、机には食事代の500円がポツンと置かれている。
小津が寝ていると、いつの間にかベッドにアヤコが潜り込んでいてビックリ。母子家庭の彼女は父親に甘えたことがなかったのだという。
仕方なく小津はカトケンのアパートに転がり込む。
翌日、アヤコが小津の部屋に泊まったとのメールが生徒たちのケータイに送られた。
事情聴取が行われ、カトケンの証言もあって教師たちは小津を信用するが、バスケ部員は皆辞めてしまう。
アヤコから真相を聞き出した2年の5人だけが戻って来る。
静子は面接がうまくいかず落ち込んでいた。小津はカトケンに静子を誘わせて飲みに連れ出す。他人と関わったってロクな事がないと静子は言う。
練習試合の日、渋谷を歩いていたユリアはチンピラに連れ去られてしまう。
小津のケータイにはユリアから風邪で休むというメールが入る。
仲間の4人は、バカで漢字を使わないユリアが風邪という漢字を使っていることからメールに疑問を持つ。
ユリアともう一人の少女がチンピラの事務所で援助交際で得た金の一部を納めろと脅されていた。
渋谷の街を探しまわる小津。彼は渋谷の店で働く元バスケット部員、長瀬(勝地涼)に出会う。
長瀬は援助交際の少女から上前をはねて稼ごうとしているグループの存在を突き止めた。
ユリアたちが輪姦されそうになったとき、小津がドアを叩いた。
長瀬が警察に走っている間に、残った小津は部屋に連れ込まれる。
小津はナイフで斬りつけられるが、その子は大事な選手だ、と譲らない。
その時、サイレンが聞こえ、男たちは書類と金庫を抱えて逃げていった。
ユリアは小津にもう絶対に援交しないと約束する。
一緒に監禁されていた女子高生の父親は静子の知り合いだった。
クミは小津を体育館に呼んで学校を辞めると伝える。小津が事情を聞こうとすると走り去ってしまった。
小津が4人に話を聞くと、ワカナはクミが両親と何年も口を聞いていないと話していたことを思い出す。
家庭訪問した小津は、クミの母親(木村多江)の態度に不審なものを感じる。
帰路、小津は中年男にブランド物を買ってもらっているユリアを見かけて顔を曇らせる。
すっかり落ち込んだ小津は、クミの話を聞いてほしいというサヤカの頼みを無視して学校を出た。
小津は静子を飲みに誘う。警察で会った男は静子の元上司だった。彼はプレゼンでも失敗を静子に押しつけ、彼女を退職に追い込んだのだった。
それ以来、静子は人と関わりを持つことが嫌になった。
翌日、4人がクミを連れてきた。彼女は学校を辞めて家を出るという。とにかく家を出たいというのだ。
小津が訪問したとき、家にクミのものは何も置いてなかった。彼はクミが両親から無視されて暮らしているのではないかと問いただす。
クミはバスケが好きではなかった。家に帰りたくないため、練習に打ち込んでいただけだった。
両親はクミの存在を認めないのだという。幼いころ、クミの母親は一日パチンコをし、彼女は駐車場の車に置き去りにされていた。
小津はクミの父親を呼ぶが、ウチは子供の自由を認めているとわけの分からないことを言って去っていく。
静子は児童虐待ではないかと言う。
クミがお早うと言っても母親は無視するだけ、クミは目にしたナイフで発作的に自殺を図ってしまう。
小津とみゅーが病院に駆けつけると、母親は包丁を使っていて怪我しただけだと大ウソをつく。父親は警察に通報したら訴えると医者を脅す。
学園長室に教師が集合した。みゅーはとにかく警察に通報すべきだと主張する。
まなびは生徒一人一人の生活に介入できないと児童相談所に任せることを決定した。
静子が校舎を出ると体育館に明かりが灯っている。クミがバスケットボールを磨いていた。
親に悪いことをしたと思いつめるクミには、もう帰る場所もない。
学園にクミの両親が呼び出された。相変わらず冷たい母親の態度に激昂するみゅー。
父親は一人で先に帰ろうとする。カトケンはなんとか三人で帰るよう説得する。
静子は帰りたくないところに帰る必要はないと言い。これまでしてきたことを説明しろと両親に迫る。
その時、小津が立ちあがった。
「人を傷つけるのはひどいことだ。だが、もっとひどいことは人との関わりを絶つことだ。学校を辞めても応援してる」そう言ってクミを励ます。
ついに母親が話し始めた。夫には愛人とクミと同い年の子供がいた。それを知っていてどうしようもなかった母親は、嫌なことを全部クミにぶつけたのだ。
誰かに苦痛を分けなければ自分が死んでた。母親は泣き崩れる。
ようやくクミは母親の心情を理解し、温かい眼差しを向けることができた。
その成長ぶりにカトケンとみゅーは感心する。
静子は銀行から声がかかったが学校に残りたいと言う。
小津は銀行に行くべきだと勧める。裏切られて辞めたままでは恨みを残すことになる。君が学んだことを忘れなければ良い銀行ウーマンになれる。
そう言って小津は静子を送り出す。彼女は去っていく小津の後ろ姿に声をかける。「さよなら、小津先生」
バスケの試合の日が来た。小津がサヤカに作戦を伝える。
そこにみゅーがクミを連れてきた。クミは母親と二人で暮らすことになり、学園に戻って来たのだ。
小津はクミの選手登録を抹消してなかった。
試合が始まり5人がコートを駆ける。クミがロングシュートを打つ場面でドラマは終わる。
前回教師陣の中から京野ことみが抜け、谷啓は遺影のみの出演となった。
生徒だけでなく、教師も問題のある人間が集まった高校で展開する、このシリーズは「踊る大捜査線」と並ぶ君塚良一の代表作と思う。
前回は森山未來、忍成修吾、瑛太、水川あさみといった、その後人気を集める若手俳優が出演したことでも話題を呼んだ。
今回のスペシャルも上野樹里と貫地谷しほりが顔を見せている。
2時間ドラマでゲスト・キャラクターの郷田静子と5人の女子生徒を描こうとしたため、ドラマの掘り下げがやや浅くなってしまった。特に上野樹里の出番が少ないのは残念。
さすがの小津先生もヘコんでしまう懲りない援交少女を演じた貫地谷しほりも悪くはないが、後半のクミと家族の問題に時間を割(さ)いて、もう少し描き込む構成のほうが良かった気がする。
それでも小津先生とカトケンのユーモラスなやりとりは健在だし、小津先生の居候(いそうろうとか、前回なかった佐野主任の授業シーンがあるとか、ファンサービスもきちんとされていて十分に楽しめる出来ばえと思う。

さよなら、小津先生