原題 ; LE VEUX FUSIL(1975)
 監督 ; ロベール・アンリコ
 脚本 ; パスカル・ジャルダン、クロード・ベイルー
 音楽 ; フランソワ・ド・ルーベ
 出演 ; フィリップ・ノワレ、ロミー・シュナイダー、ジャン・バイス、マドレーヌ・オゼリー
ロベール・アンリコは、日本に紹介された作品は多くないが「冒険者たち」をはじめ多彩なジャンルに優れた作品を残している。
本作はナチスに妻子を虐殺された男の復讐を描いたリリシズムにみちたアクション映画。
温厚な役柄が得意なフィリップ・ノワレが、キャラクター通りの良き父親から復讐鬼と化していく男を名演した。
1944年、外科医ジュリアン(フィリップ・ノワレ)は妻クララ(ロミー・シュナイダー)、娘フロランス(カトリーヌ・デラポルテ)、そして母とともにドイツ占領下のフランス小都市モントーバンで幸せに暮らしていた。
戦局は悪化し医薬品も不足しがち、停電などいつものことだ。
医者としてのモラルから秘密警察と対立したジュリアンは、家族のことを脅迫され不安を感じたため、妻子をバルブリという方田舎の村の自分が所有する城へ疎開させる。
五日後、様子を見にジュリアンはバルブリ村を訪れるが人影がない。
不審に思ったジュリアンが教会に入ると、そこでは村人全員が射殺されていた。
あわてて城に向かうジュリアン。城にはドイツ軍の姿が。
裏手から城に近づいたジュリアンが見たものはフロランスの射殺死体と火炎放射器で焼かれたクララの無残な姿だった。
ジュリアンの脳裏に、ナチスにもてあそばれ殺される二人の姿が浮かぶ。
怒りのあまり教会のキリスト像を破壊するジュリアン。
在りし日の美しいクララたちの思い出が蘇る。
ジュリアンは隠したあった古い銃(原題)を取り復讐を開始する。
熟知した隠し通路から城に侵入するジュリアン。城ではドイツ兵が酒を飲んで騒ぎ、村はゲリラ兵の巣窟だったと報告しとけば終戦までにうやむやになるなどと話し合っていた。
ドイツ兵は見つけた家族の8ミリ・フィルムを映しはじめる。再び追憶にふけるジュリアン。
夜が明けて水を汲みに来た兵士を井戸の側溝から射殺。ジープで城を出ようとした兵は橋ごと落下する。
本格的な戦闘が開始され、ドイツ兵は火炎放射器で攻撃しながら追撃する。一旦城の外に出るジュリアン。だが、一人のドイツ兵が尾行していた。ドイツ兵はジュリアンを捕虜にしようとするが、ジュリアンは隙をついて組みつき洗面台で頭を砕いて殺す。
そこにパルチザンの一隊が到着するが、ジュリアンはドイツ軍のことを話さない。
ドイツ兵はザイルを使い岸壁を下ろうとするが、ジュリアンには格好の狙撃の的だった。
砲撃を受けたジュリアンは腕を負傷。傷はたいしたことなかったが、メガネが割れてしまう。
再び城に潜り込んだジュリアンは古いメガネを取り出す。そこでドイツ兵に見つかってしまうが鏡裏の隠し部屋に逃げ込み難を逃れる。
地下に追ってきた二人の兵士は水路に落ちたところを水門を開き溺死させる。
最後に残った隊長を火炎放射器で焼き殺して復讐を完了するジュリアン。
炎上する城。村は解放され医師仲間が迎えに来た。
クララが生きているように話すジュリアン。やがて我に戻りクララとフロランスの死を実感する。ジュリアンに残されたのは過去の思い出だけだった。
オープニングとラストに幸せそうに自転車を漕ぐジュリアン一家の姿が映り、フランソワ・ド・ルーベの美しいメロディーがかぶさる。オープニングでは単なる家族の光景でしかなかったものが、最後には失われた幸福の切実な追想へと変わる。見事な構成だった。
余談=音楽を担当したフランソワ・ド・ルーベはフランスを代表する映画音楽作曲家の一人。何でも最初はプロではなかったのが、予算が足りない映画に関わって曲を作ったことが始まりだったとか。ロベール・アンリコとのコンビに優れた作品が多いが、マーチ調の「さらば友よ」も好き。1975年、趣味のダイビング中の事故により36才の若さで亡くなってしまった。ものすごく残念。
追想