原題 ; SHEHERAZADE(1990) |
監督 ; フィリップ・ド・ブロカ |
脚本 ; フィリップ・ド・ブロカ |
音楽 ; ガブリエル・ヤーレ |
出演 ; キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ティエリー・レルミット、ジェラール・ジュニョ |
フィリップ・ド・ブロカ監督が、千夜一夜物語を新解釈で描いたファンタジー・コメディ。キャサリン・ゼタ・ジョーンズの映画デビュー作でもある。 昔バグダットで、ジミー・ジニー博士(ジェラール・ジュニョ)がアラーの神の存在を疑った。彼は神の罰を受けてランプに吸い込まれてしまう。 ランプの中は何故か現代のロンドン。誰かがランプを灯したときだけ、火を点けた者の下部(しもべ)としてバグダッドに戻ることが出来るのだ。 バグダッドでは二人の子供を連れた首切り役人が、シェーラザード(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)を処刑しようとしていた。 処刑を見物に来ていた首切り役人の子供たちが、シェーラザードが死刑になった理由を聞きたがって泣き出す。困った父親に頼まれ彼女は語りだした。 まずは高貴で偉大なるシャリヤール王(ティエリー・レルミット)の話。王は王妃のため美しい薔薇を育てていた。 王妃一筋のシャリヤール王は一夫一婦制を取っていたが、宰相はそれが不満だった。 ある日、王妃と宰相の浮気現場を見つけた王は、思わず暴れて王妃を死なせてしまう。 宰相は罪を王妃になすりつけ、王に一夫一婦制を続ける代わりに、王妃を一晩で殺してしまえば良いのだと提案する。 その案を受け容れた王が最初に選んだのは宰相の娘だった。 宰相は内心バカでノロマな娘を厄介払いできると喜んだのだが、それがバレたら自分が批判されると悩んだ。彼は娘を帰して奴隷市場でシェーラザードを買う。 シェーラザードを養女にして王と結婚させようというのだ。 婚礼初夜、ベッドに飛び込んだ王は頭を打って気絶。翌朝、シェーラザードは処刑されそうになるが、自分が真相をばらしたら娘が殺されると宰相を脅迫、奴隷市場に戻された。 シェーラザードは、気に入った男(ステファーヌ・フレス)に指輪を渡し、自分を買わせる。 男の名はアラディン。自称思索家だった。彼の住みかでランプを見つけたシェーラザードは売って金にしようと磨いてみる。 すると火が点き、英国紳士の服装でジニー博士が登場した。シェーラザードは願いが叶うと大喜びだが、ジニーはランプの中にある20世紀の物しか出せない。 紅茶と焼き菓子を頼まれたジニーは、雨のイギリスに戻って隣人宅で調達する。 ジニー本人と彼が持ち込んだ物は、ランプを灯した本人にしか見えない。アラディンは、透明のケーキを食べる。 朝になるとシェーラザードは王の兵隊に逮捕されてしまう。アラディンがランプを灯すと、髭剃り中のジニーがやって来た。 シェーラザードの危機を知ったジニーはおもちゃのバイクにまたがりバグダッドに。後部座席にアラディンを乗せて走るが、見えるのは宙に腰掛けて飛ぶアラディンのみ。 よく分からないがロンドンでおもちゃだったものがバグダッドでは本物になるという設定らしい。 とにかく衛兵の一行に追いつきシェーラザードを取り返した。 砂漠で人生の空しさを悟ったアラディンは革命家になると言って去っていった。 一方、王は欲求不満が募っていた。一夫一婦制なのでシェーラザードを処刑しないと次の王妃が迎えられないのだ。 砂漠で餓死寸前だったシェーラザードが捕まるが、王を手玉にとって逃げ出す。 王の騎馬隊に追われたシェーラザードはランプを灯す。今度は複葉機で彼女を救出するジニー。 王や衛兵にはシェーラザードが宙を舞っているように見えた。 シェーラザードは、ペルシャ湾の港町アバダンに着いた。飛行機の燃料が切れて彼女はパラシュートを抱えて飛び出す。落下中に服が脱げてヌードのサービス・シーン。 落ちたところには初老の酔いどれシンドバッド(ヴィットリオ・ガスマン)がいた。彼の指導で踊り子なるシェーラザード。 またも衛兵に見つかりシンドバッドとヨットで逃げ出す。 王は国中の魔術師を集めシェーラザードの行方を追っていた。しかし、魔術師の水晶にはジニーのテレビ映像が写ったりして要領を得ない。 帆を扱えないシンドバッドがヨットに穴を開けたため沈没。二人は筏(いかだ)で漂流する。 シンドバッドは13歳で船酔いして以来、船の乗ったことがない。彼の話は全てホラだったのだ。 シェーラザードはランプを灯し、シンドバッドをジニーの部屋に連れて行く。外は雨なのでテレビを見ることにした三人は月面着陸の録画ビデオを見る。 筏が嵐に遭(あ)い、ランプが消えないうちにと慌てて二人を戻すジニー。 嵐の中でシンドバッドは行方不明になった。遭難中の船に拾われたシェーラザードはウェールズの海賊に成りすまし、ジニーからコンパスと操縦法を伝授してもらって船の指揮官となる。 魔術師と恐れられ海賊船の船長となったシェーラザードは、アフリカに渡って首の長いラクダや長い鼻を垂らした巨大ブタと出会う。 秋になってアバダンに戻った彼女は、すっかり大物の語り部となったシンドバッドを見かけるが、そっと去っていく。 浜辺で果物泥棒をして捕まったシェーラザードは王と出会う。彼女と気づかない王は、1年間この浜で妻を待ち続けた想いを語る。 王が彼女と子供を作り軽業師として旅したがっていることを知ったシェーラザードは、翌朝ヒトデのブラと貝のパンティーという武田久美子風ファッションで波間から現われ、あらためて王と再会する。 二人は旅の軽業師となった。二人で火を灯したのか、ジニーを交えて三人で食事したりする。 見えないジニーが手伝って奇術の練習。それを見ていた宰相が魔法のランプに気づく。 見えないトランポリンで王が飛び跳ねて、途中でランプへ姿を消しショーは大成功。 この場面今ならワイヤ・アクションを使うところなのだが、まだ欧米には普及していなかったのか足元を映さずにごまかしている。 ショーの最中に王の入っているランプを盗んだ宰相は、観客に軽業師が王であることをばらす。シェーラザードが魔女で、王を連れ去ったのだと訴える。 衛兵に捕まるシェーラザード。宰相は新しいランプの主人として中にいる王の殺害を命じようとするが、馬が暴れたためランプを海中に落としてしまう。 とにかく宰相は国を乗っ取り、シェーラザードの処刑を決める。 ランプを飲み込んだナマズが釣られ、ナマズをさばいた女はランプを放り捨てた。それをカササギが拾って巣に運んだ。 一方、ジニーが壊れたテレビを修理している間に外に出た王は、ロンドンの警官に捕まってしまう。 巣で灯がともりカササギが新しい主人となるが、カササギは命令しないのでジニーはシェーラザードの元に向かう。 ジニーはシェーラザードに王を連れ戻す間、物語をして時間を稼ぐように伝える。 ロンドンに戻ったジニーは警察に王の捜索願を出そうとするが、当然ちぐはぐな会話になる。 こうしてシェーラザードの話は終わり宰相の前で処刑が執行されようとする。 近衛隊長は彼女に逃げてほしいと願うが、シェーラザードは逃げ回ることに疲れ果てていた。 首斬り人も近衛隊長も斧を振るうことが出来ず宰相自ら処刑することに。 留置場にいた王は釈放されることになったが手続きが遅々として進まない。頭にきたジニーは警察署の銃を奪い係官に突きつけて王の釈放とヘリコプターを要求する。 ヘリでバグダッドに乗り込む二人。座席に絨毯を敷いて王が空飛ぶ絨毯で舞い降りたように見せかけた。 どう見てもヘリが着陸するスペースのない群衆の中に王は着地。 不人気な宰相は、あっさり国民に追われる。 アラーの神を預言者として信じると言ったジニーは、呪いが解けて見えるようになり新宰相となった。 その光景をテレビで見ていた隣人夫婦。「この役者、お隣さんにそっくりね」楽屋落ち気味に映画は終わる。 ティム・バートンがダークなホラ話の名手だとすれば、フィリップ・ド・ブロカはライトなホラ話の名手だったと思う。 全体にド・ブロカらしいトボケた味わいに満ちているし、多くのエピソードを手際良くさばいてテンポの良い娯楽作に仕上がっている。 まだ初々しいキャサリン・ゼタ・ジョーンズも魅力たっぷり。 冴えない中年男のランプの精を演じたジェラール・ジュニョは、監督・主演した秀作「バティニョールおじさん」によって日本でも知られている。この映画を撮った時点では、まだ40歳前のはずだが、すでに禿げ上がっていた。 |