年度 ; (1967)
 監督 ; 松林宗恵
 脚本 ; 笠原良三、沢田隆治
 音楽 ; 萩原哲晶
 出演 ; 藤田まこと、白木みのる、野川由美子、久保菜穂子、ハナ肇、谷啓
テレビの人気番組「てなもんや三度笠」」の映画版。
モノクロ・スタンダードの画面で始まり、やっぱり古い映画だなと思っていると、あんかけの時次郎(藤田まこと)が「今はカラーの時代でっせ」と画面に色を付けさせ、次に「やっぱり画面はワイドでっせ」と画面の外に出て引っ張りワイド画面にする。
そんな遊び心に溢れた、プログラム・ピクチャーの楽しさを味あわさせてくれる作品。
加賀百万石の城下にやって来た時次郎と珍念(白木みのる)。
さっそく修念(ハナ肇)が住職を務める寺に宿を求める。
そのころ城では城主・加賀見正家(谷啓)が息を引き取っていた。
家老筆頭の大杉源蔵(遠藤辰雄)は、この機にお家を乗っ取ろうと腹心の黒岩兵部(藤木悠)とともに画策していた。
殿の遺体は時次郎の泊まった寺に運び込まれるが、お化け嫌いの時次郎は夜中に便所に行こうとして正家が棺から起き上がるのを目撃、すっかり怯えて翌朝早々に出立する。
城では唯一の正統な跡取りであり、養女に出されて行方不明のまゆみ姫を捜すため、大奥の雪枝(野川由美子)が出発していた。
急な旅立ちで家老にも秘密の行動だったため通行手形のない雪枝は、時次郎と珍念に助けを求める。
関所の役人はドリフターズの面々。おなじみのコントを披露する。
いかりや長介は安宅の関で義経一行を見逃した役人の子孫という役どころ。
ここでも勧進帳を真似た、時次郎を殴る蹴るの暴力沙汰に見かねて通してしまい、加藤茶扮する部下に「血は争えない」と突っ込まれる。
関所を越えた雪枝は、先行していた父上に追いつくが、そこに大杉の放った追っ手が現れる。駆け落ち者の処罰と勘違いした時次郎が手をこまねいているうちに、父は斬られ雪枝は崖から落ちてしまう。
その夜、宿に雪枝の幽霊が現れ時次郎は仰天するが、雪枝は九死に一生を得て助かったのだった。
再び雪枝と旅ができると喜ぶ時次郎。だが、雪枝は駆けつけた若い侍・近藤(田村亮)と出発してしまう。
時次郎たちは、地回りのヤクザにからまれていた旅の一座を助ける。
座長は小蝶(久保菜穂子)、若手の花形は小春といった。
ミュージカル版「番町皿屋敷」の上演中、客の財布がすられて大騒ぎになった。
くされ縁のネズミ小僧(南利明)が犯人と知った時次郎が追いかけると、ネズミ小僧はあっさりと財布を返す。
だが、役人・三鬼(財津一郎)の財布だけが戻らなかった。
ネズミ小僧は幕府目付け役・森山の指示でニセ金作りを追っており、三鬼の持っていたのがニセ金だったのだ。
このニセ金作りの黒幕も大杉だった。
時次郎たちは一座と別れるが、その直後、一座の男が殺され女たちが誘拐される事件が発生した。
中田権現に連れ込まれたとの情報を得た時次郎たちが乗り込むと、そこには妖怪や怪獣が。妖怪は付近から人を追い払おうとしたニセ金作り一味の変装で、怪獣の正体は森山とネズミ小僧だった。
女たちをさらったのも一味の仕業と知った時次郎は森山たちと乗り込み大捕物となる。
そこに雪枝たちも駆けつけてきた。
その場にいた黒岩はドンデン返しから脱出するが、顔を見られたことから大杉に斬り殺されてしまう。
最初の寺に戻った一行は、修念を交えて大杉に尻尾を出させる作戦を練る。
まゆみ姫との対面と称して大杉を呼び出し、僧正に扮した珍念が殿の霊を呼ぶといって儀式を始めた。
現れた殿の幽霊に乱心して斬りかかる大杉。
実は殿は生きていた。
大杉が毒をもらせていた医者が、実は殿の味方で精力剤を飲ませていたのだ。
って、それじゃこんなに苦労しなくても証拠は挙がってるんじゃないかと思う間もなく大杉は取り押さえられて一件落着。
まゆみ姫や殿ら一同に見送られて時次郎と珍念は旅立っていくのだった。
新旧のコメディアンが顔を揃え、当時のアイドル歌手(多分)が姫に扮して一曲披露したりと、お決まりのパターンで楽しませてくれる。
このシリーズの映画版は5作あるようなのだが、残念ながら見ているのはこの作品だけ。
舞台の臨場感はないが、当時のコメディを知るうえでも貴重な作品と思う。
テレビ放映版はほとんど残っておらず、DVDも個人所有のビデオからおこして発売されたらしい。
映画版を廉価版のBOXセットにして発売してくれると嬉しいのだが。
余談=音楽を担当した萩原哲晶は「エイトマン」の主題歌が代表作。クレイジー・キャッツの映画も数多く手がけている。
てなもんや幽霊道中