年度 ; (1973)
 監督 ; 中島貞夫
 脚本 ; 野上龍雄
 音楽 ; 荒木一郎、頭脳警察
 出演 ; 渡瀬恒彦、杉本美樹、森みつる、碧川ジュン、小池朝雄、松井康子、荒木一郎
東映で多くのアクション映画を撮っていた中島貞夫監督がATGで撮った作品。
チンピラ青年の不燃焼的青春を描いているが、娯楽アクションの要素が強く、芸術志向の作品が多いATG映画としては金田一耕助物の「本陣殺人事件」と並ぶ異色作という気もする。
タイトルは反語的なもので、状況に流され美学など感じさせずに生きて死ぬ若者の破滅が描かれる。
小林清(渡瀬恒彦)は、関西拠点の暴力団天佑会に所属する冴えないチンピラ。
このところ、情婦との仲もうまく行かず、仕事といえばウサギの販売。
会が九州進出に向けた鉄砲玉に選んだときも、ハジキ一丁と現金百万円が手にできると聞いて二つ返事。
おっかなびっくり九州に乗り込む清。
だが、地元組織は天佑会とコトを構えるのを避けるため、清の好き放題にさせる。
本来、鉄砲玉は命を落とす覚悟で敵地に乗り込み、わざと揉め事を起こして自分の組織が介入するきっかけを作ることが役目。
ところが清は自分が鉄砲玉であることも忘れて有頂天。酒は飲み放題、女は選り取り見取りの状態を満喫する。
そんなある日、清はちょっとしたイザコザに関わったことから、潤子(杉本美樹)という女と知り合う。潤子は、地元南九会幹部・杉町の情婦だった。
清は二人で最高の時を過ごす。彼は、神々が集うという雲仙に並々ならぬ興味を示す。
そのころ一向に動かない清に業を煮やした天佑会は、南九会との手打ちを決めていた。
邪魔者として切り捨てられた清は両組織から狙われるハメに。
状況の変化を察知して潤子も去っていった。
襲ってきた刺客と銃撃戦となり、清は逃走するが重傷を負っていた。彼は雲仙に向かうバスの中で息絶えるのだった。
深作欣二監督とのコンビ作も多かった渡瀬恒彦が不完全燃焼のチンピラ青年を好演、杉本美樹も存在感があった。
この作品で二人のファンになり、「暴走パニック大激突」で頂点に達した。残念ながら杉本美樹は、その後間もなく結婚引退してしまった。
公開当時には、いつも東映で撮っている作品と変わらないじゃないかという意見が多く寄せられたらしい。
個人的には、この手のチンピラ映画や任侠映画をまだ観ていない時期だったので新鮮に感じた記憶がある。
中島監督は、東映よりも遥かに予算の少ないATGで同等の作品を撮ることにより、肥大化して無駄が多い東映の製作システムを糾弾する意図もあったと語っていた。
主題歌を大好きだった頭脳警察が担当したのも魅力。というか、それに惹かれて観た作品。
鉄砲玉の美学