原題 ; THE KISS(2003)
 監督 ; ゴーマン・ビチャード
 脚本 ; ゴーマン・ビチャード、スティーヴン・マンツィ
 音楽 ; ルイ・フォルグエラ
 出演 ; フランソワーズ・シュレル、テレンス・スタンプ、エリザ・ドゥシュク、、ビリー・ゼイン
ヒロインの恋と過去に書かれた小説が重なっていく、多重構造を持つロマンチックなビデオ発売用作品。
タイトルはWOWOW放映時のもので、スターチャンネルでは「永遠のキス」だったらしい。
キャラ(フランソワーズ・シュレル)は同居人メーガン(エリザ・ドゥシュク)があげるセックスの声が気になって眠れない。
同居人の条件は静かなことだった。思い余ったキャラは静かにするよう頼む。
結局眼が冴えて眠れない。キャラは仕方なく原稿を読みだす。
翌朝、キャラはメーガンにボーイフレンドの新人バーテン、ジギーを紹介される。
キャラは昇進初日で神経が高ぶっていた。彼女は平社員だが、編集長に抜擢されたのだ。と言っても部下はジュリー一人。
死んだ前任のギルバートは伝説の名編集長だった。
キャラは写真展で知り合った彼氏とデート。彼は電子辞書を自慢するが、キャラはページをめくるインクの香りが好きだった。
結局デートは失敗。なかなか理想的な相手は見つからない。
キャラはメーガンに学生時代の恋人アラン・ロバーツ(ビリー・ゼイン)が実は理想の相手だったのかもしれないと話す。
卒業の日、アランはキャラにプロポーズしたのだが、彼女は決心がつかず、彼は去って行った。
キャラは「キス」というタイトルの原稿を見つけて読み始める。
クレア(フランソワーズ・シュレル二役)という女性の恋物語。彼女にはフィリップ・ノーデ(ビリー・ゼイン二役)という恋人がいた。
フィリップは理想の恋人だったが、クレアには愛が重荷と感じられ彼のもとを去ってしまう。
傑作と思えたが、原稿は途中までしかなかった。
オフィスに行くと、古い原稿は捨てたという。
キャラは作者のコンウェイ・ホールを探し始める。電話番号案内でもネットでも見つからない。
ボスのジョイス(イレーナ・ダグラス)にも評価されたが、担当者にはスティーヴが指名された。
失意のキャラに、メーガンは休みを利用して作家の私書箱を探すよう勧める。
郵便局は改築されており、以前の私書箱の情報はなかった。私書箱があったのは20年前である。
キャラはコンウェイ・ホールが、今は使われていない建物の名称であることを突きとめた。
ジョイスに頼みこんで、キャラは作者を探すために1週間の時間をもらう。
試しに小説を読み始めたメーガンも夢中になる。彼女も仕事を休んで作者捜しに協力することにした。
二人は地元の新聞社で古い資料を調べる。
キャラはヒロイン、クレアと同じ名前を持つ女性の死亡記事を見つけた。彼女の夫はフィリップ。これも小説の主人公と同じ名だ。
フィリップは元高校の教師だった。
2人はフィリップの元同僚ケラーマンを訪ねる。彼は金を貸したままになっているので、フィリップの居場所は自分も知りたいという。
次に二人は化学教師エフェン・マンフォードを探し出す。彼は原稿を読ませることを条件にフィリップの居場所を教えてくれた。
これ以上休めないのでメーガンは帰っていく。一人で車を飛ばすキャラ。
キャラは地元のガソリンスタンドで初老の店員にフィリップについて聞くが知らないと言われる。
しかし、キャラは飾ってあった写真から、この店員こそフィリップだと気づく。翌日、詳しい話を聞くことになった。
フィリップは、出版を許可するかどうかは彼女の人柄を見て決めることにする。
キャラは小説の内容が現実にあったことか尋ねる。ほとんどは事実だという。
若き日のフィリップとクレアのイメージがよみがえる。
フィリップに聞かれ、キャラはアランとの恋について話す。フィリップはキャラにアランと会うように勧める。
フィリップは小説のラストを書きあげていなかった。執筆に疲れた彼は、何か反応が欲しくなって書きかけの原稿を出版社に送ったのだ。
しかし、20年の月日がたち、フィリップは気力を失っていた。完成すれば全てが終わってしまう。彼はそれに耐えられなくなっていた。
フィリップは死別した妻が忘れられないのだ。
あきらめざるを得ずキャラはフィリップの元を去る。失意のキャラをメーガンが励ます。
出版の可能性は消えたかに見えた。ジョイスはキャラに仕事に戻るよう命令する。
ある日、エフェンからフィリップが至急会いたがっているという連絡が入った。
キャラが仕事を早退して駆けつけると、フィリップは病床にいた。
フィリップは死ぬ前に恐怖と向き合いたいと言う。彼は静かな気持ちになっていた。
キャラに愛犬と分厚い封筒を託し、フィリップは眠るように旅立っていく。
エフィンは、フィリップからケラーマンに借金35ドルを返し、残りはすべてキャラに託すよう頼まれていた。
もし原稿が白紙だったらと不安がるキャラに、メーガンは酒で度胸をつけさせ、封筒を開けさせる。
原稿は最後まで書きあげられていた。
小説の中でフィリップが書いた「キス」は順調に売れ、彼は書店を営むクレアと再会する。
クレアは怖気づいて逃げだしたことを謝る。フィリップはクレアの指に指輪をはめる。店の前でキスする二人。
時を超えたキスが永遠の世界へと続いていた。それが結びのフレーズだった。
出版会議でもベストセラー間違いなしと言われる出来である。
新聞にアラン・ロバーツ個展の広告が載っていた。迷うキャラをたきつけるメーガン。犬の世話をジギーに頼んで二人で出掛けていく。
会場に着いた二人は目を見張った。展示されている絵はほとんどがキャラをモデルに描かれていた。
アランはキャラへの腹いせにリアリズムに転向、そうしたら絵がバカ売れしたのだという。
キャラ、アラン、メーガン、ジギーの4人は週末をフィリップが残した家で過ごしていた。
キャラは海岸に出てフィリップの遺骨を撒く。二人はきっと天国で再会してるだろう。
キャラは二度と逃げないとアランに約束する。二人は海岸で熱いキスを交わすのだった。
ヒロインを演じたフランソワーズ・シュレルは地味な印象の女優だが、文学好きな女性らしい雰囲気を良く出している。脇の配役になかなか厚みがあり、ビデオ用の小品としては意外に見応えがあった。
かって脱力系ホラー・コメディー「殺人マニアック/サイコリアン」を撮ったゴーマン・ビチャード監督が、ビデオ用とはいえ、このようにロマンチックな佳作をモノにするとは思わなかった。

くちづけを探して