原題 ; THE SEVEN-PER-CENT SOLUTION(1976) |
監督 ; ハーバート・ロス |
脚本 ; ニコラス・メイヤー |
音楽 ; ジョン・アディソン |
出演 ; アラン・アーキン、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ロバート・デュヴァル |
この作品はミステリー映画ですが結末まで記載してあるので御注意ください。 原題「7パーセントの溶液」はシャーロック・ホームズの使っていたコカインのこと。 ニコラス・メイヤーが自らのベスト・セラーを脚色、「シーラ号の謎」のハーバート・ロスがメガホンをとった。 「シャーロック・ホームズの冒険」ほどの味わいはないものの、職人的ともいえる手堅い演出できっちりした娯楽作の仕上がっている。 ホームズ映画には珍しくホームズ役のニコル・ウィリアムソン(「ロビンとマリアン」)がクレジット4番目になっているが、個性的な俳優をそろえたキャスティングも魅力的な作品。 1891年、失踪していたシャーロック・ホームズ(ニコル・ウィリアムソン)が4ヶ月ぶりに姿を現した。 ワトソン博士(ロバート・デュヴァル)が訪問すると、ホームズは重度のコカイン中毒に陥っており、悪の天才モリアーティー教授に狙われているという妄想に取り付かれていた。 失意のワトソンの元を小心そうな老人(ローレンス・オリヴィエ)が尋ねてきた。老人はモリアーティと名乗る。彼は、かってホームズ家の家庭教師だったが、現在はホームズにいわれなき迫害を受けているので助けて欲しいというのだ。 ホームズは、モリアーティをつけ回し脅迫状を送りつけていた。モリアーティは、ワトソンが過去の事情を聞いていないと知ると慌てて帰っていく。 ワトソンは、ホームズを治せるのはコカイン中毒患者の治療に関する論文を発表したシグムント・フロイト(アラン・アーキン)以外にいないのではないかと考える。 フロイトの診察を受けさせるためには、ホームズをウィーンまで連れ出す必要があった。 そこでワトソンは、マイクロフト・ホームズの力を借りモリアーティ追跡劇を仕組む。モリアーティに旅行を強制して、ホームズをフロイトのいるウィーンに向かわせるのだ。 ホームズは警察犬トビーを使ってモリアーティの後を追う。リンツ駅ではトルコの総理大臣アミン・パシャを見かけた。 ウィーンに着き、さらに痕跡を追うと、辿り着いたのはフロイトの診療所。ホームズは診療所とと書斎の様子から見事にフロイトの状況を推理してみせる。 だまされたことに怒るホームズも、フロイトに説得されて治療を受けることを承諾した。 フロイトは催眠術を用いた療法を試みる。彼とワトソンは、ホームズのカバンを調べて二重底からコカインを見つけた。 幻覚に襲われながらも禁断症状と戦うホームズ。数日後、ホームズは禁断症状は脱したものの極端な無気力状態に陥っていた。 ホームズが小康状態なのでフロイトとワトソンがクラブに行くと、ユダヤ人のフロイトにラインンスドルフ男爵(ジェレミー・ケンプ)が難くせをつけてきた。 フロイトはテニスでラインスドルフと勝負することになる。序盤はやられたものの、フロイトはラインスドルフがバックハンドに弱いことを見抜き勝利した。 フロイトのもとに、かってのコカイン中毒患者で高名なオペラ歌手のローラ・デヴロー(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)が、麻薬で自殺未遂を犯したとの知らせが入る。 病院に同行したホームズは、ローラが何者かに監禁され無理やり麻薬を注射されたことを見破る。そのため中毒を再発したローラは悲観して自殺を図ったのだ。 ローラは、ラインスドルフ男爵をかたったニセ手紙でモンテカルロに誘い出され誘拐されたのだという。 ホームズは自分たちを尾行する者に気づく。その男は、ローラが話した誘拐犯の容貌と同じだった。 逆に男を尾行する三人。ホームズは黒幕が、ローラがかって麻薬中毒だったことを知る親しい者の一人だと推理する。 屋内の馬場に誘い込まれた三人は、人を襲うように調教された白馬の群に襲撃される。結局、三人は男を見失ってしまった。 その頃、ラインスドルフ男爵がローラを連れ去ろうとしていた。 ラインスドルフはローラが倉庫に監禁されたことを知っていた。そのことからラインスドルフが犯人と気づいたローラは、百合の花を使って行き先を知らせようとする。 撒かれた百合を追うホームズとワトソン。辿り着いた先は賑やかな娼婦宿。そこにはフロイトも来ていた。 だが、ローラはおらず、看護婦が殺されていた。ホームズは、ローラが抵抗せずに連れ出されていたことから、犯人が愛人のラインスドルフ男爵であることを見破る。 落ちていたタバコはオスマン王室専用の物で、トルコ絨毯の糸も見つかった。 ホームズはアミン・パシャがローラを見初めたと推理する。 カジノで多額の借金を負ったラインスドルフが、借金のかたとしてローラをパシャに差し出そうとしているのだ。 三人は、誘拐犯の男を捕らえ、ラインスドルフたちがオリエント急行でイスタンブールに向かうことを聞き出す。 ホームズたちは別の汽車を奪って追跡。最初は反抗した機関手も、高名なホームズと知って協力する。 石炭が尽きてしまうが、ホームズは汽車の木材をばらして燃やし追い続ける。ここらへんはヴェルヌの「80日間世界一周」がヒントか。 国境を破って、さらに追跡。ついに追いついたホームズは、ラインスドルフの汽車に飛び移った。 ラインスドルフと剣での勝負となる。 フロイトも続いて乗り込む。パシャに銃を突きつけ、ローラ救出に成功した。 車両の屋根で闘いを繰り広げるホームズは、バックハンドが弱点だというワトソンのアドヴァイスでラインスドルフを倒すことができた。 事件は解決。フロイトは最後の治療としてホームズに催眠療法を試みる。 かってホームズ家の家庭教師だったモリアーティは、ホームズの母と不倫関係を結んでいた。それを知ったホームズの父が、母親を射殺したのだ。 その現場を目撃した記憶が、ホームズのモリアーティに対する異常な憎しみの原因だった。 フロイトは、この真相を隠し、ホームズに全快を告げる。 ホームズは、ロンドンに帰るワトソンと別れ船旅に出る。その船にはローラも乗り合わせていた。ロマンチックな旅の始まりを予感させて映画は終わる。 ニコラス・メイヤーは、自作を映画向けに思い切って単純化、気楽に楽しめるストーリーにしている。ニコラス・メイヤーは当時B級映画の脚本を書いていたが、スタジオのストライキで暇が出来たため、この小説を書いてベスト・セラーを生み出したとか。 原作は2部作で、2作目「ウェスト・エンドの恐怖」でもホームズと実在の作家たちが活躍するらしい。こちらは未読。 ホームズ最大の敵モリアーティ教授の正体については賛否の分かれるところかもしれない。更に原作ではモリアーティの登場する「最後の事件」と「空家の冒険」は捏造(ねつぞう)だった、としているので真剣なシャーロッキアンには抵抗が大きいのではないかと思う。 |