原題 ; LE SAUVAGE(1975)
 監督 ; ジャン・ポール・ラプノー
 脚本 ; ジャン・ポール・ラプノー、エリザベート・ラプノー
 音楽 ; ミシェル・ルグラン
 出演 ; イブ・モンタン、カトリーヌ・ドヌーブ、ルイジ・バヌッチ、トニー・ロバーツ
寡作な監督ラプノーのロマンティックな逸品。
野性的生活を送りながらも知的な雰囲気のイブ・モンタン、奔放な女性を演じるカトリーヌドヌーブ。主演の二人がとても良かった。
ミシェル・ルグランの音楽も優れている。一つのメロディを使って時には切なく時には晴れやかに謳いあげていく。
ネリー(カトリーヌ・ドヌーブ)は金持ちビットリオ(ルイジ・バヌッチ)との結婚直前に嫌気がさし、夜中に逃げ出してホテルに駆け込む。
ネリーは追いかけてきたビットリオともみ合ううちに気絶させてしまう。たまたま隣室に宿泊していたマルタン(イブ・モンタン)が彼を介抱する。
ネリーは元上司のアレックス(トニー・ロバーツ)から不払いの給料を取り立てようとする。断られたネリーは、彼のロートレックを盗み出した。
逃走資金のないネリーは、マルタンに絵を売り込もうとするが失敗。
手を組んで追いかけてきたビットリオとアレックスをまいたマルタンは、ネリーをパリ行きの飛行機に乗せる。
ビットリオはパリにいる甥にネリーの捕獲を依頼するが、その便にネリーは乗っていなかった。
マルタンが自分の島に戻ると、ネリーが先回りしていた。
ロートレックが税関を通らず、マルタンの友人である空港職員に島を聞き出したのだ。
マルタンは2年前から孤島を借り、野菜を作って暮していた。
マルタンはネリーを送り返そうとする。ネリーはヨットに穴を開け沈めてしまう。
ビットリオたちは空港でネリーの居場所を調べようとして騒動を起こす。それを見たマルタンの友人は、女に電話で報告する。
その女はホテルや港でもマルタンをつけていたおばさんだった。部屋の壁には隠し撮りしたマルタンの写真が貼ってある。
マルタンはトラクターのエンジンを利用して筏を組み始めた。
留守を見計らって小屋に入り込んだネリーは、壁にマルタンが香水コンクールで優勝した新聞記事が貼ってあるのを見つける。
家を追い出されたネリーは料理を盗み出すが、転んでしまい失敗。次にマルタンを地下に閉じ込めて食事にありつこうとする。
マルタンが別の通路から上がってきたたので逃げ出す。ネリーはマルタンの投げたリンゴが当たり気絶してしまう。慌てて介抱するマルタン。
これがきっかけとなって2人は結ばれた。
マルタンは世界最高の香水職人だったがビジネスの世界に嫌気がさし、孤島に隠れ住んでいるのだ。
翌朝、ネリーは二人で暮らしたいと言うが、マルタンは一人での隠遁生活にこだわっていた。ネリーは泣きながら銛の中に駆け込んでいく。
一方、マルタンの妻であり香水会社社長のジェシー(ダナ・ウィンター)は探偵を雇ってマルタンの行動を把握していた。例のおばさんミス・マークが探偵だったのである。
実はすでに香水会社は島を買収しており、野菜も会社が手を回して買い取っていたのだ。
マルタンが意気揚々と引っかけた女たちも、ミス・マークが金で雇っていた。ネリー以外は。
香水会社にとってマルタンの腕は、なんとしても手離すわけにいかないものだった。
マルタンはついに筏を完成する。別れが近づき、彼は急に寂しさを感じた。
最後の夜、マルタンはネリーをディナーに誘う。ニワトリをしめ、とっておきの料理を作る。
突然の嵐がやってきていた。ネリーは約束を無視する。言い争う二人。
嵐の中、ビットリオとアレックスがならず者をひきいて乗り込んできた。
ロートレックは塩水に使ってボロボロの状態。アレックスが文句を言うと、ビットリオは絵を森に投げる。捜しに走ったアレックスは誤って踏み抜いてしまう。
マルタンは怪我を負い家を焼かれてしまい、ネリーは連れ戻される。
倒れていたマルタンは妻に引き取られ、全ての真相を知らされた。彼は会社に戻ることを拒み契約違反で投獄された。
やがて釈放されたマルタンは、ネリーを捜し求める。
ネリーはビットリオと一旦は結婚したものの、すぐに彼と離婚し消息を絶っていた。
だがマルタンは、最初にネリと出会ったホテルでネリーのメッセージを受け取る。
ネリーは片田舎の小さな家でマルタンを待っていたのだった。
自由な世捨て人生活を送っていると思い込んでいた主人公が、実は企業の手の内で踊らされていたという、ちょっと皮肉な展開。
そしてついに本当の自由を手に入れ、愛の生活へと踏み込んでいく。このエンディングが素晴らしい。
青く澄みきった海や島に自然も美しく、DVDと言わずブルーレイでシフト化してほしい作品。
うず潮